課題
導入効果
吹田市は、大阪府北部に位置する中核市である。人口は約 37 万人で、世帯数は約 17 万世帯を擁する。吹田市水道部はこの 17 万世帯、そして市内の工場、病院などに水道水を供給している。日本の多くの自治体では高度成長期に大量に水道施設を整備し、現在その老朽化が問題になっているが、吹田市も同様の問題を抱えている。
吹田市水道部では 2003 年度(平成 15 年度)に CAD ベースのマッピングシステムの構築を行い、水道台帳(施設図、管路図)の電子化を完了している。しかし、弁栓台帳についてはこれまで電子化できておらず、弁栓の位置図のみ電子化されていた。吹田市全域の弁栓は約 18,000 基あり、これまで紙ベースで調査を行ってきたが、今回、現地調査をスマートフォンで行うことによって調査スピードを大幅に向上することができた。
現地調査の様子
弁栓台帳が電子化されていなかったため、下記の問題が起こっていた。
また、現地調査が進んでいないことで以下の問題の見落としが起こっていた。
吹田市水道部では、それまで CAD ベースで管理されていた水道台帳の管理・共有・閲覧を効率化するため、2016 年(平成 28 年)にアジア航測株式会社製の業務特化型 GIS パッケージシステム「ALANDIS NEO」を採用した。その際に、パッケージの一部として ArcGIS 自治体ソリューションライセンスを導入した。ArcGIS を用いて庁内に GIS サーバーを構築し、職員用 PC や窓口端末で水道台帳を確認できるようにした。
ALANDIS NEO を活用したことにより、業務の大幅な効率化が実現したが、現地調査は紙ベースで行っていた。現地調査業務もスマートデバイスを用いて効率化できないか検討を進める中、GIS コミュニティフォーラム in 関西の自治体向けセッションに参加し、現地調査アプリを体験したことで、ArcGIS が業務に活用できそうだと感じた。
ArcGIS 自治体ソリューションライセンスはクラウド GIS の ArcGIS Online や、現地調査アプリ ArcGIS Collector が付属しているため、ライセンスの追加費用やアプリのプログラミング開発費用を必要とせずに、弁栓調査用のアプリを構築することができた。
費用面だけでなく導入スピードも、台帳の項目さえ決めれば設定のみでスムーズに構築を進めることができることも魅力である。
弁栓調査用のアプリは下記の手順で構築を行った。
その後、現地調査用のタブレット端末に ArcGIS Collector をインストールし、現地調査を行った。
弁栓調査用アプリ
弁栓台帳のデジタル化で業務の効率化が一気に進んだ。調査スピードは紙ベースの調査に比べて大幅に向上している。これはプルダウンでの選択が寄与している。また、約 18,000 基分の膨大なデータを搭載しているが、スマートフォンでの操作性も問題ない。
さらに、吹田市全域のマップが外出先からいつでも閲覧・編集できるようになったことで、別の目的で外出した際にも、その足で近辺の弁栓を調査できる環境が整った。
調査のフローが確立し、誰でも調査できるようになったため、煩雑な引き継ぎ作業がなくなったほか、調査の一部を外部業者に委託することも検討している。
今後は水道台帳システムへの現地調査結果の反映を開始し、月 1 回程度の頻度で行う予定である。弁栓の調査を早期に完了した後には、集積したデータを元にアセットマネジメントや管路更新計画などに反映したいと考えている。
吹田市水道部 中林 磨言 氏
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