課題
導入効果
中国電力は、中国地方 5 県を中心に安定的な電力供給を行うために発電から配電に必要なさまざまな施設や設備の管理、メンテナンスを行っている。中国電力では、組織内で ArcGIS 製品を制限なく使用することができる包括契約(EA:Enterprise Agreement)を導入し、社内で GIS を活用できる環境を整えてきた。その中で、変電所から住宅やビル、施設に電力を供給する配電設備管理の基幹である配電地図情報システムの再構築において、システム基盤として ArcGIS が採用され、2018 年(平成 30 年)から稼働が開始された。
電柱や電線・ケーブル、変圧器などの配電設備を管理する配電地図情報システムは、デスクトップで使用する業務アプリと、それらから更新されるデータを一元的に管理するサーバーから構成される基幹システムである。配電地図情報システムは、地域内 30 拠点の営業所を中心に、工事や保守業務を行う関連会社を含む 2,000 人以上分のユーザー ID を管理し、設備の新設・移設工事や巡視点検を始め、配電に関わるあらゆる業務で使用される。中国電力が所有する約 170 万本の電柱に加えて、配電設備を施設している他社が所有する 30 万本の電柱の位置情報と設備情報は、配電地図情報システムで管理されている。
2012 年(平成 24 年)に開始された配電地図情報システムの再構築企画では、多くの利用者の利便性を尊重するために、設備を示すシンボルの種類や業務メニューといった慣れ親しんだ操作性を維持しつつ、地図の拡大縮小・移動といった地図を扱う操作には、一般的な地図アプリのようなスムーズさを求めることとした。また、今後の拡張性を考慮し、地図上で各種設備の情報を集約でき、かつ情報を確実に統制することができるシステム環境に対応することも求められた。
中国電力の関連会社で配電地図情報システムの設計・開発を担当するエネルギア・コミュニケーションズは、ArcGIS 製品の販売代理店でもあり、ArcGIS の技術的な知見・人材も豊富であることから、システムの基盤として ArcGIS を採用した。また、ArcGIS がさまざまな形式の GIS データを読み込むことができることや世界の電力会社でも実績があること、そして国内外でコミュニティが活発であり事例や活用法を入手できることも要件以外の点で評価された。
ArcGIS での構築にあたっては、配電地図情報システムの利用者が増加しても定額で ArcGIS のライセンスを組織内で自由に使用することができる EA を契約した。
配電地図情報システムは、各担当者が利用する業務アプリと、各データを管理するサーバーで構成されている。業務アプリは ArcGIS Engine で開発され、ArcGIS の地図表現や操作性、データ管理機能が実装された。アプリからのデータ参照や更新を一元管理するサーバーは、ArcGIS Enterprise で開発された。
業務アプリには、地図上に電柱や電線の主要な設備が表示されている。地図上の電柱を選択すると、電柱に施設している電線やケーブル、変圧器、開閉器などといった設備の種類や型番を始めとする詳細情報に加え、設備の写真を参照することができる。また、設備の情報には塩害・雷害・雪害・風害を記録する項目があり、設備対策に反映している。
配電地図情報システムは、メインの配電設備の管理だけでなく、2 年周期に行われる設備の定期巡視業務や、電柱の新設・移設などの工事に関する設計や工事後の検査といったさまざまな業務で利用されており、ArcGIS Enterprise 上で管理する項目数は 6,000 を超えている。これらの膨大な項目とデータ量を管理するのと同時に、利用者がスムーズにアプリを使用して業務ができるよう、地図に情報を表示するパフォーマンスを含め、操作性には細心の注意が払われた。
ArcGIS Enterprise 上に登録されている配電設備情報を用い、設備に関連するさまざまな業務アプリの開発も行われた。
電線に接近した樹木を伐採する計画・工程を管理する伐採業務支援システムでは、過去の地権者との交渉履歴や伐採工事履歴を記録しており、樹木の成長時期を基に、周期的に伐採するエリアを地図上で分割し指定することができる。伐採業者はその情報を Web アプリで参照し、実際に伐採を行い、作業が完了したらその情報を伐採業務支援システムに記録することで、中国電力の担当者は伐採が完了したことを確認できる。
その他にも配電設備に対して道路法や景観法など占用・許可申請の対象要否を確認するための法令マップシステム等、ArcGIS を利用して、さまざまな業務システムが開発されている。
新しい配電地図情報システムは、将来的な地図基盤上での配電設備管理に向けたプラットフォームとして構築することができた。リリース 1 ヶ月前の 2018 年 8 月には、各営業所の担当者を集め、新しいアプリの操作について勉強会を開催した。再構築で重視していた、旧システムで慣れ親しんだシンボルの形状・配色や業務メニューが引き継がれたこともあり、新しい配電地図情報システムでも利用者は違和感なく利用できた。
また、配電地図情報システム以外でも地図上で業務情報を可視化したいという相談が情報通信部門の担当者からあった際、以前はライセンスの購入手続きなどを含め 2-3 週間かかることもあった。しかし、EA 契約にしたことで、組織内で ArcGIS ライセンスを自由に付与できるので、相談されてからライセンスを提供するまでの時間を大幅に短縮することもできた。
配電関係設備を地図基盤上に集約した統合的な設備設計・管理を実現するため、対象とする設備を拡充し、より実態に則したシンボル表示の実現を検討している。また、ArcGIS を利用した「情報公開系社内システム」の構築や「配電設備の経年劣化分析に資するデータ分析」の実施、「インターネット公開システム」などへの展開についても検討している。さらに、EA 契約により柔軟に対応できる製品群が充実しているため、さまざまな業務シーンへの積極的な活用を目指している。
中国電力、エネルギア・コミュニケーションズ
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