課題
導入効果
長岡市は新潟県の中南部、中越地方の中心都市で、人口は約 27 万人と新潟県下第 2 位の人口を擁する市である。元来は内陸の都市であったが、平成の市町村大合併を経て、日本海に面する市となった。
毎年 8 月 2 日、3 日に行われる長岡まつり大花火大会は、観客数が 100 万人を超える日本屈指の花火大会であり、またそこには戦災と新潟県中越地震からの復興への祈りと願いが込められている。
より多くの職員に使われることを目標に、2018 年度(平成 30 年度)に統合型 GIS を導入した。ポータルとアプリという概念が利用のハードルを下げ、職員自らの手による主題図の作成やアプリの作成が広まった。将来的な政策立案での利用を目指し、部署横断型ワークショップを開催するなど新たな試みも始まっている。
長岡市庁舎(シティホールプラザ アオーレ長岡)
長岡市では、以前より、職員全体の 8 割にあたる GIS ライトユーザー向けに電子住宅地図共有システムを導入しており、住宅地図が簡単に閲覧できることにより多くの作業の効率化が図 られていた。また、土木関係部署の担当職員は GIS ヘビーユーザーとしてデスクトップ GIS を 使っていた。しかしその他のライトユーザーは、独自でデータを作成したり、それを可視化し分析を行うといったことはほとんどなかった。職員向け GIS 研修も行われていたが、自席に戻ると業務優先になり地図を使うことが二の次になることが多かった。また部署異動により、せっかく導入した ArcGIS Desktop が使われなくなってしまうこともあった。
地図閲覧に留まらず、より多くの職員が一歩進んだ、GIS を政策立案へとつなぐ使われ方(EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)を目指すには、もっと敷居を低くして、簡単に GIS を使える仕組みが必要だった。
ArcGIS は以前から使われていたが、新たなシステムの導入に関しては、より多くの職員に使ってもらうため、GIS を使うハードルを下げることが必要だった。その観点から、ArcGIS に限らずさまざまな GIS が比較検討された。
その中で、ArcGIS の Portal 機能に可能性を感じたと言う。まずポータルのトップ画面が、デスクトップ GIS と異なりキャッチーで、また「アプリ」を利用するという概念が若い職員に非常に合っていた。また、もちろん、今まで使用していた ArcGIS Enterprise のデータ移行がしやすいというのも情報システム管理の観点からは重要だった。
ヘビーユーザーとライトユーザーの両方の GIS 構成を満たすことができるのが、ソリューションライセンスの利点である。
デスクトップ GIS と、ブラウザ(Portal for ArcGIS)の併用を考え、朝日航洋の統合型 GIS ソリューションである「スマートアイマップポータル」の採用が決まり、 2018 年の秋から開発が始まった。2019 年 2 月には試験運用が開始された。
朝日航洋による操作研修も行われ、今までに、基本操作に関しては 100 人以上、コンテンツやアプリ作成に関する研修には 50 名以上が参加した。また操作マニュアルも掲示し、誰でも自由に見られるようにした。
「職員の地図を作ることへの抵抗がかなり薄れたと思います。」と鈴木氏は語る。
実際、庁内の共有レイヤーに触れ、編集をするユーザー数が、以前の 30 から 70 に増えたという。それまで閲覧しか行っていなかったユーザーがポータル導入により更新ユーザーになったのだ。従来の統合型 GIS では機能制限があり、自由に使うにはデスクトップ GIS が必要だったが、ポータル導入により簡単に利用・地図作成までができるようになった。
情報システム管理課には多くのアドレスマッチングの要望が寄せられるようになったという。各種業務の主題図の作成の意識が高まってきたのだ。
「職員の地図というものに対する概念が変わったかもしれません。Web アプリというコンセプトが非常に良いです。必要な機能だけをくみ上げた業務ごとのアプリを作成できるので、職員たちが自分でアプリを作成するようになりました。」目的の地図を表示するためには、以前は多数のレイヤーから探して表示する必要があったが、ポータルにより目的の地図・アプリにすぐ到達でき、機能も必要なものだけ選択することができるようになった。
職員が作成した主題図の中には、高齢者の通いの場のマップや図書館利用者、利用率のマップ、農地地番で所有者管理を行うマップなど、各部門が業務に必要なものに特化したさまざまなマップがある。
地図の閲覧からポータルを利用した自らの手によるマップの作成へと GIS の利用が大幅に進んでおり、個人で地図を作れる自由度が利用促進につながっているが、一方で地図の把握・管理のリスクも増えつつあるという。職員の異動に伴う、新たなマップの所有者や共有範囲決めなどが必要になってきているそうだ。
また、長岡市にとって GIS 利用の最終的な目標は、GIS が EBPM で活用されること、施策形成支援・政策立案へと使われることである。市長やマネージャークラスのアウトプットに GIS が活用されることが期待されている。また利用促進に伴い、業務利用以外でも GIS の活用例や業務課題の抽出が期待されている。
ワークショップの様子
長岡市は、その未来へ向けての新しい一歩として、2019 年(令和元年)秋に初めての部署横断型ワークショップを開催した。住民ポイントをアドレスマッチングを行い可視化し、各部門が持つ主題図との重ね合わせを行う。主題図同士の重ね合わせも初めて行われた。
「地図を使って何かを考えることが一番重要です。ポータルを使っているアカウント数は約 2,900 あります。そこから何か宝物が出てくるのではないか、それを期待しています。」と鈴木氏は語った。
GIS の本質を見据えた高い志を持ち未来を目指す長岡市。ESRIジャパンも今後を期待し、応援していきたい。
長岡市総務部情報システム管理課
主査 鈴木 公一 氏
組織名 | : | 朝日航洋株式会社 |
---|---|---|
住所 | : | 〒350-1165 川越市南台3-14-4 |
電話番号 | : | 049-244-6061 |
Webを見る |