事例 > 労働力調査における調査区地図の自動作成に向けた取り組み

事例

労働力調査における調査区地図の自動作成に向けた取り組み

総務省統計局

 

手書き地図と自動作成したプレプリントの併用へ
業務効率化と知識継承コスト削減の実現に向けて

■概要

総務省統計局では、国勢調査をはじめとする国勢の基本に関する様々な統計の作成・提供を行っている。労働力調査は、国民の経済活動への参加状況及びその月々の変化を明らかにするため、全国の 2,912 調査区、約 4 万世帯、10 万人を対象に毎月実施している標本調査である。

標本が全国の正しい縮図となるよう、かつ効率的な観点から、標本は 2 段階で抽出している。第 1 次抽出単位は国勢調査の調査区、第 2 次抽出単位は標本調査区内の住戸である。抽出された調査区は 4 か月連続して調査し、1 年後の同じ時期にも調査を行う。また、毎月 1/4 ずつ新しい調査区に交代している。
第 2 次抽出に使用する調査区の地図については、今回、ModelBuilder 及び ArcGIS の連続出力機能を採用することで、統計局においてプレプリント(調査区地図の様式に建物や道路の下書きをあらかじめプリントすること)を実現した。
これまで調査員は枠のみ用意された白紙に地図を手書きしていたが、これにより、プレプリントを元に地図を作成できるようになり、業務の効率化だけでなく、調査の精度向上にも繋がった。

■課題

白紙に地図を手書きした場合、建物の形状や距離等が調査員の歩いた実感等に影響され、客観的にわかりにくい地図が作成されることがある。このような場合、地図が現在の状況と一致するか、審査を行う都道府県や統計局職員の負担も大きいことから、プレプリントの実現を求める声が多くあった。
ただし、労働力調査は国勢調査のような大規模な調査ではないため、専用ツールを外部に委託して開発することは困難であった。また、スマートフォン等で手軽に地図を参照できるようになった現代において、一から地図を手書きするという作業に、調査員の心理的な負担も大きくなっていた。

■ArcGIS 採用の理由

もともと統計局には ArcGIS のライセンスが導入されていたが、2018 年(平成 30 年)6 月に ESRI ジャパンからプレプリント自動作成の提案を受け、検討を行った結果、同年 9 月に ModelBuilder 及び ArcGIS の連続出力機能を採用することとした。
プレプリントに用いる GIS データを加工するプログラムについてはModelBuilder と Python を言語とする ArcPy が検討の候補となったが、ModelBuilder であれば、職員にとってハードルが高いプログラミング知識を必要としないこと、エラーメッセージ及びヘルプ等も英語ではなく日本語であることから、人事異動のリスク軽減及び知識継承のコスト削減が期待できると考え、ModelBuilder を採用した。

調査区地図
プレプリントのサンプル

■課題解決手法

プレプリントの作成手順

プレプリントの作成手順は大きく 3 つに分かれる。まず調査対象となる調査区の情報を保存した CSV ファイルを作成し、次に ModelBuilder で GIS データと CSV ファイルを連結・加工する。最後に ArcGIS の連続出力機能を用いて 1 調査区が 1 枚の PDF ファイルに収まるように出力範囲を設定し、出力する。

GIS データの加工及び PDF の出力は職員が通常の業務で使用している PC で行っているが、夜間や週末に処理を回すことができるという自動作成のメリットにより、少人数体制でも他の業務に支障はでていない。

出力した PDF ファイルは、都道府県ごとに Zip ファイルにまとめられ、年 1 回都道府県に受け渡されている。これにより、次年度の調査区について、事前に都道府県が地図情報を把握できるため、より円滑な調査の実施が期待できると考えている。

連続出力のイメージ
連続出力のイメージ

プレプリントの仕様

プレプリントには、調査区境界、建物および道路のレイヤーが表示されている。なお、調査区の周辺部分は、マスクレイヤーを重ねることにより、一段薄い色で出力されている。
また、第 1 次抽出単位である国勢調査の調査区は、約 50 世帯で 1 調査区となるように設定されているため、住戸が少ない地域の調査区は 1 調査区の範囲が広大になる。こうした調査区を 1 枚の PDF に収めると家屋は非常に小さく識別が困難となるが、そのような場合でも調査区を複数の PDF に分割して出力する等の特別な処理は行わず、プレプリントと手書き地図を併用することにしている。これは、自動作成を高度化した場合の効果とリスクとを勘案し、併用することが現実的で、かつ十分な効果が見込まれると判断したためである。

連続出力のイメージ
調査区地図、抽出単位名簿サンプル。調査員が住戸を確認して枠囲み・採番し、名簿を作成する。

地図作成の知識継承

GIS 研修や操作マニュアルの作成を通してプレプリント作成業務のノウハウ共有にも努めている。統計局ではこれまで、主に GIS 初心者を対象にして、年 1 回 ESRI ジャパンによるオンサイトトレーニングを実施してきたが、2019 年(平成 31 年)度は経験者を対象に ModelBuilder も研修内容に盛り込んだ。

■効果

まだ試行導入 1 年目という段階であるが、実際に地図の審査業務を担当している小田氏は「調査員、都道府県のいずれの方からもご好評いただいています」と述べる。既製の地図と比較し易くなったので、漏れの発見等が容易になり、審査の効率化が実感できているという。

また、小田氏は「統計局内からも、他の調査業務に応用できないか、担当者ベースで打診がきています。こうしたニーズに応え、統計局内において GIS データの利活用も推進していく必要があります」と明かす。ただし、GIS に関する知識を持たない職員がカスタマイズ等を行うことは困難であり、横内氏も「トレーニングを受けても、それを実際に応用できるようになるには、もう 1 つステップアップが必要」と言うように、ニーズを掘り起こす効果があったと同時に課題も出てきている。

■今後の展望

統計局では、この業務体制を継続的に安定して維持する重要性を改めて認識している。

「組織柄、人事異動による知識継承のリスクが常に伴い、2018 年以降も担当者の入れ替えが起きています。しかし、地理情報室が労働力人口統計室をサポートする体制により、組織として引き継いでこられました。
現時点ではうまく稼働していますが、今後はもっとスムーズにできるようにしていかなければなりません」と小田氏は語る。

そのためにも、連携の向上が重要であり、ESRI ジャパンのサポートの活用や、地理情報室と労働力人口統計室間の連携を今後も継続していくとともに、トレーニングも含め、より実践に即したフォローアップができるように体制を強化し、さらなる GIS の活用に向けて取り組んでいく必要がある。

プロフィール


地理情報室
      室長 浅川 智雄 氏(左)
      係長 横内 宏至 氏(中央左)
労働力人口統計室
      室長 中村 英昭 氏(右)
      係長 小田 大輔 氏(中央右)



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2020年1月7日

Copyright© 2002-2020 Esri Japan Corporation. All rights reserved.
トップへ戻る