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火災情報の分析と公開で「火災ゼロ」を目指す

郡山地方広域消防組合 予防課 火災調査係

 

火災情報を ArcGIS Online で可視化し、防災意識の向上と火災
予防施策立案に貢献

ArcGIS プラットフォームの特徴

  • 分析した火災情報を一般向けに公開

概要

郡山地方広域消防組合(以下、消防組合)は、福島県郡山市および田村市、三春町、小野町の安心と安全を守るための活動を行っており、火災や救急などが発生した際にはすぐに駆けつけられるよう 18 か所の消防署と基幹分署を設置している。予防課火災調査係(以下、火災調査係)は、火災調査を行うエキスパート集団であり、類似火災から住民を守るため、あらゆる火災原因の究明を行っている。また、火災予防施策の立案助言を行い「火災ゼロ」へ向けた事業に取り組んでいる。
火災調査係では、地域内の火災調査データを地図上で確認できる「火事ログ」を消防組合内のホームページ上で公開し、毎週、最新の情報に更新している。また、火災情報分析用ダッシュボードを作成することで、迅速に分析を行い、火災予防施策の検討に役立てている。

火事ログ・マップギャラリー
火事ログ マップギャラリー 郡山地方広域消防組合

課題

火災調査係は、郡山地域の防災意識向上と火災件数減少を目的として、住民向けの広報誌発行や、民間企業など計 1,100 団体が参画している郡山地方消防防災協会の会員向けに講習会を実施し、火災情報の発信を行っている。しかし、広報誌の購読者や講習会の参加者以外にも、より多くの地域住民に火災情報を発信するための施策を検討していた。
また消防組合では、報道機関や国、自治体から火災情報のデータ請求があった際に、エクセル上で過去 10 年間分の火災データ分析作業に膨大な時間を費やしていたことが大きな課題であった。

ArcGIS 採用の理由

火災情報の発信や分析作業の効率化を消防組合内で検討していたところ、係員が福島県警察本部の「交通事故情報公開システム」の事例を目にした。内容を詳しく調べてみたところ、地図上でデータ分析が可能であり、その上、地域住民に見てもらえるので、新たな火災予防に一石を投じることができるのではと考えた。これまで他の消防本部では地図上に火災情報を公開している事例はほとんどないので、福島県警察本部の事例と同じように地図上で火災情報を公開し、地域住民に見てもらいたいという声が消防組合内からあがった。
火災情報を公開する際には火災の具体的な発生場所が特定されないような仕組みが必要であった。これらの要望事項を実現するシステムとして、次の理由から ArcGIS を採用することとした。
・簡単な操作で、職員がスピーディかつタイムリーにデータ更新を行うことができる。
・豊富な表現方法を有している。
・発生地点ごとに火災情報の公開・非公開を自由に選択できる。
・機能の追加や変更を柔軟に行うことができる。

「火事ログ」
「火事ログ」では火災の種類や時期でフィルタリングできる

スマートフォン用 QR コード
「火事ログ」の
QR コード

課題解決手法

データ整備

火災情報の公開および分析に向けて、まず、消防組合内の消防情報管理システムから過去 10 年間分の火災データを出力し、ArcGIS Desktop 上で街区レベル住所データを使用して火災発生場所を緯度経度に変換した。大半のデータは地図上にポイントデータとして表示することができたが、一部のデータは地名が古かったので、最新の住所に修正する作業を行った。
その後、ArcGIS Desktop 上で作成したデータを「火事ログ」内のアプリと火災情報分析用ダッシュボードで利用するため、ArcGIS Online へアップロードした。

火事ログ

地域住民や組織に火災情報を発信し、火災に対する注意喚起を促す目的として、火災調査係は「火事ログ」を消防組合内のホームページ上で公開した。Web アプリをカスタマイズできる Web AppBuilder for ArcGIS を用いることで、火災調査係の職員のみで「火災種別」や「火災が発生したエリア」、「時期」を抽出できるフィルター配置することができた。
また、火災の発生場所や被害者が特定されないようにするため、火事ログのアイコンは中心点があえてわからないように作成した。

火災情報分析用ダッシュボード

火災情報分析用ダッシュボードはクリック操作のみでカスタマイズが可能である Operations Dashboard for ArcGIS を利用して作成した。火災調査係の職員が必要な機能を検討し、手軽に数値やグラフをダッシュボード上に加えることができた。また、分析の操作も同じくクリックのみで操作が可能なので、手軽に火災予防のための分析を行うこともできるようになった。

効果

火事ログ

「火事ログ」のアプリを公開したことにより消防組合外からかなりの反響があった。地元新聞で取り上げられ、「福島県内で初の試みで、全国でも珍しい取り組み」と評価された。2019 年に郡山市内で山火事が発生した際に、火災情報をアプリ上で公開した結果、研究者から問い合わせがあり、取り組みに関してお褒めの言葉をいただいた。
また、「火事ログ」は、地域内の防災意識を向上させるためのツールとして、町内会や企業向けの防災講習会でも積極的に利用されている。

火災情報分析用ダッシュボード

火災情報分析用ダッシュボードを作成したことにより、分析の作業に費やす時間を大幅に削減することができた。
また、これまで数値でしか分析結果を示すことができなかったが、ダッシュボードを利用するようになってからは地図やグラフ形式でも可視化できるようになったので、より広い視野で火災予防施策を検討することが可能になった。

火災情報分析用ダッシュボード
火災情報分析用ダッシュボード

今後の展望

消防組合では、地域住民の防災意識や生活習慣を見直し、「火災ゼロ」を目指すために、引き続き「火事ログ」や火災情報分析用ダッシュボードを活用していく予定である。
「火事ログ」に関しては、公開できる範囲でグラフなどを追加し、地域住民の要望に沿ったマップの作成を検討している。火災情報分析用ダッシュボードに関しては、火災予防施策にさらに活用できるようにダッシュボード機能を改善していく予定である。

プロフィール


郡山広域消防組合消防本部


郡山地方広域消防組合イメージキャラクター
「火まもり君」


関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2019年11月12日