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事例

ドローン空撮測量と連携した新しい数値風況診断技術の開発

九州大学 応用力学研究所

 

ドローン空撮画像から作成した詳細 3D 地形を用いて高精度な風況シミュレーションを実施

概要

風車の周囲では、地形により目に見えない「乱流」が発生し、それらが風車に力学的な疲労を与え故障につながっている。九州大学 応用力学研究所の内田孝紀准教授は、西日本技術開発株式会社および株式会社環境GIS研究所の協力の下、「数値風況診断技術 RIAM-COMPACT (リアムコンパクト)」と「ドローン空撮測量」を連携した新しい数値風況診断技術を確立した。 技術開発に向け、東海地方にある実際のウィンドファームを対象に検証が行われた。当該施設の風車では東南東の風が発生した際、その影響により風車の主要部品の故障が多発している。その主な原因は、地形起因の大気乱流の発生によると示唆されている。そこで、その原因を詳細に調査するため、ドローンを使った空撮測量を行い、現地の地形起伏や地表を覆う樹木の高さ、空間分布を空間解像度 1m で忠実にコンピューター内に再現した。その結果、風車周辺に発生している地形起因の大気乱流の存在が視覚的に明らかになるとともに、実測データの解析結果との定量的な一致が得られた。 この知見から今後は風車の「重大事故」を未然に防ぐための風車制御方法の確立が目指されるとともに、風力発電事業の収益性を高めることが期待されている。

課題

図 1 風車の形状
図 1 風車の形状

本研究の対象である商用大型風車には、風向・風速センサーが設置されており、風車の運転制御等に活用されている(図 1 )。特に故障の多い風車のセンサー情報を分析すると、この地域の卓越風向である北北西においては、風車の故障等に関係する乱流強度の値はそれほど大きくないものの、東南東の風の場合には非常に大きな値を示していることが明らかになった。そこで、東南東の風が発生した際の、風車周辺の気流性状をコンピューターシミュレーションにより忠実に再現し、詳細な調査をすることとした。 風況シミュレーションで地形乱流を可視化するには、周辺の地形・樹木等の微細な 3D 形状の取得が極めて重要となる。既存の地形図からは、近年の地形改変や、樹木の場所、樹高などを捉えることができないという課題が指摘された。

課題解決手法

図 2 ドローンで作成した標高
図 2 ドローンで作成した標高

詳細な周辺地形は、無人航空機( UAV: Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)で風車サイトを撮影し、それらを画像解析することで取得した。撮影は、対象範囲を格子状にくまなく自動的に飛行・撮影するための自動飛行プログラムを用いて、地上高約 75 m上空から連続的な真下撮影の手法で行った。使用したドローンは DJI 社製の Phantom4 である。 次に、ドローンで撮影した約 570 枚の画像群を 3 次元画像解析ソフト Drone2Map for ArcGIS で処理し、(1) 地形標高データと (2) 樹木や地上構造物の高さデータの 2 種類に分離し、メッシュデータ(水平空間解像度 1m )として出力した。 作成した 3 次元詳細地形データを入力データとし、数値風況診断技術「 RIAM-COMPACT 」を用いて、東南東の風の流れをスーパーコンピューター( NEC 製の SX-ACE )で計算することで、局地的・局所的な風の流れの時間的・空間的な変動を可視化した。図 3 は、風車を通る鉛直断面内の主流方向 (x) の風速分布を示す。風車は、そのすぐ上流に位置する標高 125m の小地形からの剥離流(地形性乱流)の影響を強く受けている様子が確認できる。特に、風車ハブ中心(地上高 78m )から地面において風速は時間とともに激しく変動していることが明らかになった。風車立地点における風速の鉛直分布は流入風速分布から著しく逸脱した上、さらに大きく歪んでおり、結果として極端な速度シアが多数発生していることが示された。

図 3 風況シミュレーション結果の一例
図 3 風況シミュレーション結果の一例

ArcGIS 活用の経緯

今回ドローンで撮影した連続写真の解析には、Drone2Map for ArcGIS を、その後のデータ加工や可視化において ArcGIS Pro を使用した。Drone2Map for ArcGIS は合計 3GB 程度におよぶ膨大な写真データ群を汎用パソコンで安定して解析できた。解析地形データから樹木等の高さ情報の抽出や 3 次元的な地形の可視化には ArcGIS Pro が活用された。

効果

一般的に、風車の発電量は、鉛直上方に向けて徐々に風速が増加していく「ベキ法則」に沿った風が風車ブレードに流入することを前提に設計されている。よって、ベキ法則から大きく逸脱した今回のシミュレーション結果からは、発電電力量の大幅な低下が予想され、同時に極端に大きな速度シアはヨーモータやヨーギアなどの故障にも直結しているとされる。実際の風車においても、東南東の風が発生した場合、ヨー制御の多頻度動作によるヨーモータのブレーキパッド損耗および遊星ギヤーの破断(金属疲労と推定)と、ピッチ制御の多頻度動作による油圧操作系の故障が多数確認されている。 ドローンおよび Drone2Map for ArcGIS を用いた 3 次元地形データは、地形図からは取得できない実際の形状を取得するため、非常に信頼性の高いシミュレーションが実現した。加えて、Drone2Map for ArcGIS で出力される 3D 成果物は、ArcGIS Pro を用いて 3 次元的にプレゼンテーションが可能である。ドローンによる風車視点の映像などと合わせて見ることで、地形形状と乱流発生のメカニズムを専門家以外の方と共有できる有用なコミュニケーション手段として活用できることが分かった。

図 4 風車サイトの3次元可視化
図 4 風車サイトの3次元可視化

今後の展望

本結果から、今後は風向・風速条件によって風車を自動的に停止させるためのアルゴリズムの開発を進め、風車の故障を未然に防ぐ風車制御手法を確立する予定である。また、近年導入が進んでいる小型風力発電は、周囲の樹木や建物の影響をより強く受けるため、ドローンを活用した地形データ構築手法を用いて最適な導入を促進していきたい。

プロフィール


九州大学 応用力学研究所 准教授 内田 孝紀 氏



関連業種

関連製品

導入協力企業

組織名西日本技術開発株式会社 火力本部 火力技術部 技術調査グループ
住所福岡県福岡市中央区渡辺通2-1-82
電話番号092-713-0470
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組織名株式会社環境GIS研究所
住所福岡県福岡市早良区百道浜2-1-22
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資料

掲載日

  • 2018年2月13日