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事例

ArcGIS 導入でデータの相互運用性が劇的に向上 2 年間でユーザー数ゼロから 6 万人へ急拡大

アメリカ国家地理空間情報局

 

地理空間情報を政府機関に提供する NGA では ArcGIS プラットフォームを活用したクラウド環境を整備。
データの相互運用で大きな効果。

ArcGIS プラットフォームの特徴

  • クラウド環境でのデータ運用のためユーザー数の急激な増加に対応可能
  • 複数機関でリアルタイムに情報を共有

概要

アメリカ国家地理空間情報局(National Geospatial- Intelligence Agency: NGA)は、米国の国家情報機関の一つで、国防総省傘下に置かれている。米国政府の各部局に対し地理空間情報の提供を行うとともに、地理情報システムの標準化に対する取り組みを行っている。 NGA では、ユーザー機関への地理空間情報の迅速な提供と活用の促進が課題となっていた。 この課題を解決するため、NGA では、政府機関で広く使用されている ArcGIS プラットフォームを活用したクラウド環境へ、コンピューティング資源の移行を決定した。その結果、構築から 2 年間でユーザー数がゼロから全世界約 60,000 ユーザーにまで急増した。

課題

NGA は、米国の政策立案者、軍、情報機関、現場対応する警察官や消防士など、幅広いユーザーに地理空間情報サービスを提供している。そのため、データの相互運用性を高めることは非常に重要である。しかし、多くの組織と同様、データとアプリケーションにすぐにアクセスできる設計にはなっておらず、NGA ではコンピューティング資源をクラウドネイティブ環境に移行し、局全体で即座に利用できる環境の構築を開始した。

2016 年のハリケーンマシュー発生時、ArcGIS Online を使用し、新しいデータが提供されるたびに即座に新しいビューを作成した。
2016 年のハリケーンマシュー発生時、ArcGIS Online を使用し、
新しいデータが提供されるたびに即座に新しいビューを作成した。

ArcGIS 採用の理由

「クラウド環境にアクセスしてデータを簡単に利用できるようにすることは重要です。データを保護し、アプリケーションにとらわれず、迅速に検索できるようにする必要がありました。ArcGIS プラットフォームのクラウドはそれに最適だったのです。それ以来、開発はすべてクラウドで行っています」と NGA のスーザン・ゴードン副局長は語る。ゴードン氏は NGA のイノベーション提唱者として知られ、「運用に即応する地理空間情報購入に関する商業イニシアチブ」など、NGA とベンダーの関係を深めるための新しいプログラムを導入している。 ゴードン氏は、クラウドへの移行には 3 つの大きな利点があると考えている。 1 つ目は、相互運用性の向上と共有データの増加を見込んでのことである。これは、情報機関と軍後方支援団体の間で組織データの幅広い利用を促進するものであり、すべての開発をクラウドで行うことでそれが可能となる。 2 つ目は、既存のデータをクラウドに置き、そのデータを使用するアプリケーションを再設計することで、クラウド環境でシームレスな操作が可能になることである。 3 つ目は、情報機関で取り扱う「極秘事項」データだけでなく、軍後方支援団体やユーザーが関係する「機密」および「未分類」レベルのデータも利用できるようにすることである。 NGA では、人道的救援やその他の民間活動にも、その使用を拡大しようとしているのである。

課題解決手法

情報機関のユーザーが NGA のデータを GEOINT (GEOspatial INTelligence)サービスで使用する場合、GIS がサービスの基礎となる。GIS は、共通のフレームワークによってカスタマイズされた方法でデータを使用できるようにするツールキットの役割を果たす。歴史的にアプリケーションとそのデータには密接なつながりがあり、データは特定のアプリケーション内でしか使えなかったが、GEOINT サービスでは両者が分離されており、どのアプリケーションでもデータを使用することができる。 GEOINT サービスに対する NGA のコミットメントとして興味深い点は、サービスプロバイダーはどうあるべきか、どうすればユーザーが NGA のデータやアプリケーションから最大の利益を得られるかについて、より深く学んでいることであるとゴードン氏は考えている。重要なポイントの 1 つは、ArcGIS を地理空間情報プラットフォームとして使用していることである。ArcGIS は業界で広く使用されているため、ユーザーがデータやアプリケーションにすばやくアクセスできるからだ。

導入効果

NGA の最初の GEOINT サービスで、NGA データへのアクセスを提供する IC GIS(Intelligence Community GIS)ポータルは、作られてから約 2 年になる。この間、ユーザー数はゼロから全世界約 60,000 ユーザーにまで増えた。 IC GIS ポータルは ArcGIS ベースで動作し、情報コミュニティ全体で使用される分析、協働、データ共有のためのプラットフォームだ。例えば、ある場所に配属されている人が、複数のソースから提供されたデータを使用して状況図を作成する場合、IC GIS ポータルを使用すると、複数のタイプのデータを扱い、必要な可視化や分析を行うことができる。 IC GIS ポータルは現在、機密保護されたネットワーク上にあるが、ネットワーク移行が計画されているため、今後、格段に利用が拡大すると予測されている。 ゴードン氏らは、コンテンツの質や管理能力を大幅に向上させるために、GEOINT の基盤の近代化を進めている。あらゆる種類の地理空間情報の取り込み、格納、操作、分析、管理、提示を行うエンタープライズ GIS プラットフォームがその柱となっている。複数のソースからデータを収集し、ほぼリアルタイムで更新する集中データベースを実装している。ここでも、インテリジェンスコミュニティ内の最大数のユーザーが最も効率的な方法でデータを気軽に利用できるようにする方法を決めることに重点を置いている。 また、NGA は、様々なソースから、多様な形式で大量のビッグデータを収集しており、GIS はこれらデータを統合する上で非常に重要である。すべてを共通の形式で管理し、共通のフレームワーク内に表示する必要があるからだ。一見手間が掛かるように見えるが、広く利用されている形式に変換すれば、そのデータを共に処理することができる。

ハリケーン発生時には ArcGIS Online を使用し、緊急時の対応や復旧作業に関わる人々に新しい情報を幅広く配布することができる。
ハリケーン発生時には ArcGIS Online を使用し、緊急時の対応や
復旧作業に関わる人々に新しい情報を幅広く配布することができる。

まとめ

NGA のような大規模な政府機関が革新的なソリューションを実装することは簡単なことではない。政府は計画的であるべきで、その行動は一貫したものである必要がある。また、明朗で公正でなければならず、物事を新しい方法で行う場合、その選択の妥当性を示す必要がある。 ゴードン氏は、GEOINT 促進を考えるには、画期的な考え方や起業家精神を持ち、Esri社など古くからのパートナー企業を信頼する必要があるという。国家安全保障から人道的救援に至るまで、多くの分野で GIS がもたらす共通のビジョンをパートナー企業と共有しているからである。

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掲載日

  • 2018年1月18日