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開催レポート

基調講演

第7回GISコミュニティフォーラム基調講演は、6月2日の午前と、6月3日の午後に行われました。
6月2日の基調講演では、冒頭に弊社社長正木及びESRIジャパンユーザ会会長の福井 弘道 教授のご挨拶が行われ、続いて、C.W.ニコル氏、Nate Johnson 氏が講演されました。

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基調講演会場

財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団 理事長
C.W.ニコル 氏
『多様性は未来の可能性』

北極探検15回やエチオピアで国立公園設立に関わるなど、現代のGIS/GPSテクノロジが無い時代に苦労した経験を交え自己紹介されました。それから、日本に来られた経緯や、日本中を旅して感じた事を本に著そうと決めた時の、文化や自然の豊かさに対する感動を語り、日本の生物多様性がいかに豊かであり、また、今日いかに大事にされていないかということを訴えました。「日本は環境自殺しているんじゃないの?」、水源地に産業廃棄物が不法投棄されている現実を本当に悲しいと語りました。「下手な日本語で政府の悪口を言うとテレビに出させてくれて言いたい事を言える」とジョークを飛ばし会場を沸かせる場面もありました。最後に、近年、森が与える生物学的な豊かさのみならず、人間の精神に与える豊かさ、特に子供の精神に与える豊かさや浄化能力に着目し、財団が保有する「アファンの森」をセラピーに活用するなどの活動も紹介されました。

Esri社 リージョナルマネージャー(カリフォルニア州・ハワイ州・ネバダ州 担当)兼ナショナル パブリック セーフティ セールス マネジャー
Nate Johnson 氏
『GIS for Communities』

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冒頭で米国Esri社社長、ジャック・デンジャモンドよりビデオレターによる挨拶がありました。この度の災害へのお見舞いを述べ、災害対応の現場においては、GISのプロフェッショナルがサービスやアプリケーションをホスティングし、一般の方々が広く利用するような形態が浸透しつつある状況を解説しました。ArcGIS10.1では更にこの方向性を確固にしていくと述べました。
続いて、米国Esri社ネイト・ジョンソンが、GISの起こりを紐解きながら、最新のテクノロジがいかにGIS活用において一般市民を巻き込み、情報を共有しているのか、また、どのようにコミュニティを支援しているのかを実例を交えながら解説しました。市民がスマートフォンから落書きのある場所を市役所に通知する仕組みや、警察が発表する犯罪の発生状況マップを市民が受け取る仕組みなどデモを交えて具体的に解説しました。

文部科学省 副大臣
鈴木 寛 氏
『初等中等教育におけるGIS活用と期待される成果』

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教育GISフォーラム発起人の一人であり、通産省で情報教育の担当としてGISは教育現場におけるキラーコンテンツのひとつであると15年前から痛感していたと自己紹介されました。その後、副大臣就任まで慶應義塾大学で情報教育の教鞭を取り、GISもカリキュラムに取り入れられ、「インフラや関連技術の進歩によりGISをもっと広く教育現場に迎える環境はできている。この度の震災を機に、特に東北三県では空間的な認知構造を備えた人材の育成をパイロット的に行いたい。」と述べられました。文科省が推奨する“学びのイノベーション”において、GISは中核的な役割を持つキラーコンテンツであることを解説されました。現代の子供たちには、物事を表層的に、刹那的にとらえる傾向がある。GISを教育に取り入れる事は、単に地理学習が進歩するだけではなく、3次元、そして時間を含めた4次元で物事を把握する能力を備えた子供たちを育成する事になる。このような時空を超えて立体的に物事を理解する子供を育てられれば劇的に社会が変わっていくと考えており、GISは新しい認知構造を獲得した児童、生徒、学生を育成するための中核的なツールであると解説されました。また、GISのみならず、学校教育の情報化に関し、デジタル教材の開発が望まれると述べられました。現状の教科書のようなリニアな教材でなく、ゲームのように、環境が時空間環境としてできあがっている教材を整えるべきではないかと述べられました。最後に、教員の情熱、コンテンツ、そして環境を整える事により空間情報編集力を備えた国民・人材を育成したいと述べられました。

東京大学大学院 情報学環 教授
坂村 健 氏
『ユビキタスとGIS2.0』

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ご自身が東京大学とユビキタス研究所で行っておられるGISと関連する研究を解説され、そこからGISの方向性について語られました。冒頭では、アクティブタグと呼ばれるタグを道路などに埋め込み視覚障害者を支援するシステムを紹介されました。そのような仕組みを構築する上で、複雑で膨大なICTシステムをどのように扱うべきか解説されました。クラウド等を活用して多くの人と協力して行う事が重要であり、そのためにはインフラの整備が必要になる。アメリカで生まれたgov2.0などは、国民に対しては情報とプラットフォームを提供し、後はみんなでやりましょうという概念であると解説されました。マサチューセッツ州交通局を例に上げ、交通局が提供するのは、市民が活用可能なフォーマットで提供されるデータだけであり、アプリケーションは市民が作っている。適切な形態のデータを公開すれば、後は民間が使いやすいようにアプリケーションを開発するという枠組みが重要であると解説されました。また、それに関連し情報公開のガバナンスも整備していく必要があると解説されました。最後に、様々なGISシステムや、様々な精度の地図を緩くつなぐ為のインフラとして、uIDアーキテクチャを提唱されました。

懇親会

東京工業大学 斎藤元也先生からご挨拶と乾杯をいただき、懇親会が始まりました。東京ミッドタウン周辺の天気は、あいにくの雨でしたが、参加者は200人を超え、各展示コーナーでは人の輪ができました。和んだ雰囲気の中、GIS利活用の在り方など白熱した議論もあちらこちらで交わされ、GISコミュニティの着実な広がりを感じた瞬間でした。恒例のマップギャラリーでは上位5位までの発表と表彰式も行われ、大きな拍手とともに受賞者の喜びの声もお聞きすることができました。

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懇親会会場 マップギャラリー表彰
(株)環境GIS研究所
マップギャラリー表彰
地域自然情報
ネットワーク
マップギャラリー表彰
京都大学 防災研究所
巨大災害研究センター
マップギャラリー表彰
防災科学技術研究所

スポンサー展示

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全25社による様々なGISソリューション及び周辺機器の紹介が行われました。参加者はそれぞれ興味あるブースでの情報収集を行っておられました。





学校・研究機関・NPO展示

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全9団体による、ESRIジャパン製品を利用した研究成果や活動内容の紹介が行われ、各ブースで終日、参加者との活発な意見交換が行われました。





アファンの森特別展示

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長野県飯綱山の山麓でC.W.ニコル氏が行う森の再生活動を財団スタッフが紹介し、関連書籍等の販売も行われました。





EMTマップ展示

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東北地方太平洋沖地震 緊急地図作成チーム(Emergency Mapping Team)が作成した、多様なマップの一部を通路に展示しました。会場の通路全面にマップが展示され、来場者の注目を集めていました。




ESRIジャパンソリューション展示

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農業、防衛、防災、エリアマーケティング、建設コンサルタントなどの業種・分野に特化したソリューション、そしてモバイル、クラウドといった最新テクノロジを紹介する展示が行われました。各ブースとも参加者が熱心に説明を聞いたり、活発な質疑応答が終日行われました。




ESRIジャパン製品展示

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製品展示ブースでは、各製品担当者が対応を行い、多くのお客様がご質問に来られました。足を運んできださるお客様は、テクニカルワークショップで紹介した機能や昨年リリースされたArcGIS10の新機能、現在利用している製品についてご質問されるなど、関心の高さを感じることができました。




デモンストレーションエリア

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大型モニタを使ったデモンストレーションエリアでは、お役立ち情報から最新の情報まで様々な製品の10 のデモンストレーションを 1 テーマ 15 分で実施し、ブースを取り囲むように多くの方が集まり説明に耳を傾けていました。

ソリューション ワークショップ

防災GISワークショップ「東日本大震災対応経過報告」

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東日本大震災の発災から約3か月が経ち、GISは復興・復旧のさまざまな局面で利用されています。本ワークショップでは、大学や研究機関・中央政府や地方自治体・民間企業などで、どのようにGISが活用されてきたのか報告がされました。 第一部ではEMT(Emergency Mapping Team)の活動を、提供側の視点とユーザ側の視点から報告がされ、第二部・三部では多様な立場の発表者から、GISの多方面での活用事例が報告されました。 約5時間と長丁場のワークショップにも関わらず、会場は常時満員で、参加者が防災に対して高い関心を抱いていることが感じられました。

環境・生物多様性ワークショップ 「生物多様性とデータ」
日本の生物多様性はどうなっているか -データが示す現状と課題-

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(参加者からのコメント)
基調講演は、豊富なトピックスの要点を紹介してくださり大変参考になりました。講演時点では理解できなかったことも、帰宅後に調べるきっかけとなりました。防風・防潮を目的としたクロマツ林は、人工的なものではあるが生物多様性の観点からも意味のあるものではないかという見解も興味深かったです。その後の2点の発表については、事業を進めるにあたって直面している問題点なども率直に述べられているのが印象的でした。一部、ワークショップの場でそこまで細かく説明する必要は無いのではと思われた部分もありましたが、普段知りえない情報をお聞きすることができ、参考になりました。最後のパネルディスカッションは、時間が無かったのがとにかく残念でした。環境省の植生調査データ以外のデータについても話題が広がる時間があればよかったのにと思います。全体的には生物多様性に関する情報を得ることができ、意義のあるひとときでした。

森林GISワークショップ 「森林経営におけるGIS」
~森林・林業を再生するGISとは~

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今年は国際森林年でもあり、はじめての試みとして、森林GISワークショップを開催しました。「森林経営におけるGIS」をテーマとして、5名の方々によるご講演とパネルディスカッションの2部構成で進行しました。パネルディスカッションでは、来場者の皆様にご記入いただいた質問票を使って、森林林業再生や森林経営の取り組みなどについて、熱い議論が交わされました。

農業GISワークショップ 「日本の農業GIS最前線」

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農業ソリューションワークショップは、今回初めての開催にもかかわらず大盛況となりました。通常、関係者以外が見ることはできないクラウド版「水土里情報システム」に実際にログインしたデモンストレーションや農業分野での空間統計ツールの活用、農業GISの歴史から最近の研究までと興味深い発表がされました。その後のパネルディスカッションにおいても、予定時間を超えるほどの活発な意見交換が行われました。

クラウドコンピューティングで広がるGISの世界

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本ワークショップでは、現在のIT業界において大きな盛り上がりを見せている「クラウドコンピューティング」についての最新情報をお伝えしました。まずは第1部として、クラウドベンダーである富士通株式会社様とアマゾンデータサービスジャパン株式会社様のご講演により、クラウド活用の真のメリットや、クラウドサービスの今後の展開についてご説明いただきました。次に第2部として、ESRIジャパン株式会社より現状のEsriによるクラウドGISの最新状況や、Esri Business Analyst OnlineやArcGIS Online等のクラウド型サービスのご紹介、そして各クラウドベンダーから提供される「パブリッククラウド」上でArcGIS Serverを運用する方法についてご説明しました。

自治体ワークショップ 「行政課題とGIS」

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東日本大震災で多くの方々が被災されました。被災地における自治体職員の果敢で賢明な対応は報道の通りだと思いますが、自治体では平時でも様々な課題に向き合っています。それらの多くは広域で事象を捉え対応することが必要となり、地理情報を用いた解決策が有効となります。今回は、新潟市、三重県、福島県から3名の方々が日々の業務の中で経験した様々な課題や対応事例をご紹介し、GISの利用価値と、平時・有事においてどのような地理空間情報の整備が必要かを共有しました。

第8回防衛プレナリ―セッション

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米国Esri社から防衛・インテリジェンス グローバルディレクターのEric Patten氏、テクニカルアドバイザーとしてEsri社Asia Pacific Defense TeamのCraig Pitman氏を招き、パキスタンで発生した洪水災害時の救済活動を例に、世界各国の紛争や災害時での人道支援や救済活動におけるGISの活用法をご紹介いたしました。

戦略決断のためのビジネスGIS

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GISは限られた業界でいつもの使い方をする、という概念を覆し、民間分野の多様なお客様へにご利用いただけるものという、新たな用途がエリアマーケティングです。ご参加頂いた方の大半が民間企業様というGISとしては異例のセミナーとなりました。
30,000人以上のユーザにご愛用いただいている、Esri Business Analystが、ついに日本上陸ということで、多くのお客様、またGISにおける新たなビジネスをご検討いただいている皆様にご注目いただきました。実際のエリアマーケティングのフローやBusiness Analystのご紹介、各種データとの連携をEsriジャパンから発表し、ライフスタイルクラスタデータChomonicx2.0について株式会社JPS様よりご紹介いただきました。

新エネルギー分野におけるGISの利活用

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3.11以降、特に話題となっている、太陽光発電、風力発電、地熱発電などに関して本ワークショップは、外部からの識者を招いてご発表頂きました。脱原発に向けてGISがどのように活躍できるか、様々な視点を持つことが出来たワークショップだったのではないかと思います。会場も立錐の余地がなく参加者の聞く姿も真剣そのもので、新エネルギー分野に対する関心の高さが感じられました。

事例発表

今年も様々な分野から事例発表が行われました。二日間に分けて発表された事例は身近な社会問題から環境・防災・教育・ビジネス分野までどれも興味深い発表でした。終了後は、質疑応答が活発に行われ、ユーザ同士の交流と情報交換も図れました。

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事例発表会場

テクニカルワークショップ

テクニカル ワークショップでは、導入をご検討の方から上級ユーザの方までを対象に、GIS 全般、Esri 各製品、イメージ製品の多岐に渡るテクノロジを紹介した計 44 のセッションを開催しました。100 名を超えるセッションが多数あり、予稿集が足りなくなるなど例年以上に盛況したものとなり、関心の高さ、ご熱意が発表者まで伝わってきました。

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テクニカルワークショップ会場

体験コーナー

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ArcView10での編集と図郭印刷機能を参加者に体験していただく内容で、どの回も満席以上の盛況ぶりでした。「GISのイメージが湧いた」「業務で早速活用したい」などのご意見をいただき、初心者、経験者を問わず満足していただけたようです。





マップギャラリー入賞結果

第1位
株式会社環境GIS研究所
荒屋 亮 氏
 『都市部における大規模風況解析による風の道マップ』
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第2位
地域自然情報ネットワーク
梶並 純一郎 氏
 『市区町村の木と花 ~自治体のシンボルから見える地域色~』
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第3位
京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター
林 春男 氏
 『東日本大震災緊急地図作成チーム(EMT)の活動』
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第4位
独立行政法人 防災科学技術研究所 社会防災システム研究領域 地すべり変動研究チーム
土志田 正二 氏
 『地すべり地形分布図を用いた地すべり発生危険地域の評価』
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第5位
早稲田大学大学院 創造理工学研究科 後藤春彦研究室
柳沼 優樹 氏、林 書嫻 氏、前田 茜 氏、河内 昇平 氏、金子 奈津 氏、高嶺 翔太 氏、陳 海韻氏、山本 香菜 氏
 『日本の原風景である棚田の耕作範囲の縮減像 -新潟県における旧小学校区の七集落を対象として-』

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