米国フロリダ州レオン郡では、2014年11月4日に「地方自治体インフラ整備税(通称:Penny Sales Tax)」の20年間延長の是非を問う住民投票を実施した。投票に先立ち、郡ではEsri ストーリー マップのマップジャーナルを活用した情報発信アプリを立ち上げた。増税といった重要な問題には、パンフレットやPDF資料といった従来の媒体だけでなく、活発な議論につながる面白い啓発資料の必要性を感じていたからである。
マップジャーナルアプリでは、地図、解説文、ビデオ、画像、ポップアップ、音楽といったマルチメディアを複合的に使用することができる。主に歴史、旅行、保全活動といった内容に用いられることが多い。今回は、本地図アプリが消費税に関する質問や税金の使い道を示すのに適していると判断され採用に至った。「地図は魅力的な語り部である」とレオン郡行政官であるヴィンセント・レオン氏は評する。「消費税に関する要点だけでなく、地域社会が今後どのように形作られていくかを伝える最適な方法を探していた」
地図アプリでは、アプリの左側に増税後に実施予定の施設整備と経済開発プロジェクトに関する解説文と画像が表示される。予定されているプロジェクトには、道路および歩道の整備、自転車レーンの新設、バス停の補修、群営催事会場の美化、公園や緑化スペースの新たな整備がある。ユーザーは各項目をスクロールし、アプリの右側にある地図上に表示されたアイコンで個々のプロジェクトの実施場所を確認することができる。アイコンをクリックすると、プロジェクトの簡単な内容と写真やイメージ図がポップアップ表示される。さらに、ポップアップ上のリンクからは、プロジェクト費用の概算や詳細情報を記載した地図、郡職員宛の問合せフォームへとつがる仕組みだ。また、ストーリー マップからはプロジェクトが郡全体で実施され、地域全体に税金が還元されることもわかるようになっている。
「有権者は、増税に賛成か反対かは別として、インタラクティブにプロジェクトの実施場所や内容を手軽に閲覧できる地図アプリを楽しんでいる」と郡の行政間業務および特別プロジェクトコーディネーターであるクリスティーナ・パデレス氏は語る。数千におよぶ画像を掲載していることもあり、PDFなどに比べて積極的な情報発信につながっているのも一因だ。また、公共情報スペシャリストのマシュー・カベル氏は「レオン郡の取り組みは、地域住民の行政への参加に繋がっていくのではないか」と分析する。「ストーリー マップは説得力があり、アクセスしやすく、また面白い」
本地図アプリは、タラハシー郡およびレオン郡のGIS部門、地域広報窓口、デザイン部門、レオン郡計画部 都市計画チームの共同作業により構築された。GISシステム統合スペシャリストのネッド・ケーク氏は、当初、Esri社のストーリー マップツアーアプリもしくはタブ付のストーリー マップをカスタマイズする予定であった。しかし、レオン郡のGISマネージャーであるスコット・ワイズマン氏が、2014年Esriユーザー会でEsri社社長 ジャック・デンジャモンド氏によるマップジャーナルテンプレートのデモを見たことにより方針が変更された。
ケーク氏は、レオン郡のArcGIS Online組織向けプランを使いMap Journal Builder を立ち上げ、アプリの骨子を構築した。地形図のベースマップおよびカベル氏から提供された解説文や写真、画像をアプリに読込むとともに、編集可能なフィーチャーでWebマップを作成し、ポイントデータの追加とポップアップの構築作業を行った。デザイン部門は各セクションの色合いに合わせたカラフルなアイコンの作成を担った。
本地図アプリはArcGIS Onlineだけでなく、クラウド環境であれば閲覧可能なクラウドソリューションとして構築された。「私たち郡職員やレオン郡消費税委員会、協力してくれた地域住民は、インフラ整備や経済開発プロジェクトに様々な考えと多くのエネルギーを注いでいることをこの地図アプリ上で表現したかった」とカベル氏は振り返るとともに「ストーリー マップは解説と分析を理想的に融合させることができる」と結んだ。(増税の是非を問う住民投票は2014年11月4日に可決された)