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事例

事故発生地点と交通安全施設の「見える化」で県民を交通事故から守る

千葉県警察本部 交通部 交通規制課

 

GISの活用で施策効果が一目で確認できるように

課題

導入効果

 

概要

千葉県警察本部
千葉県警察本部

千葉県警察本部 交通部 交通規制課は、主に信号機や標識といった交通安全施設の設置や管理を担う。交通規制課が行う業務の最大の目的は、交通事故を未然に防ぐことである。交通事故発生場所を地図上に可視化し、事故の多発地点の割出しや、交通安全施設の設置箇所の検討と導入を行っている。
交通規制課が力を入れている取組みの一つに、小学校の通学路とその周辺で発生した交通事故の可視化がある。通学路と交通事故データを重ねた地図を作成し、学校関係者や児童及びドライバーへの注意喚起につなげている。また、津波浸水予測図と交通安全施設の設置箇所データを重ね、交通安全施設に対する災害対策と早期復旧に向けた対策の構築にも活用している。
交通事故を減少させていくためには、高齢者による交通事故を未然に防止していくことが欠かせない。交通規制課では今後、高齢者の交通事故防止に活用できるシステムを整備し、さらなる交通事故の減少を目指していく。

 

背景

交通規制課は、10年以上前にGISを導入し、今では交通安全施設や災害対策など幅広い情報の管理と可視化に活用している。 最初にGISを導入したのは、2003年(平成15年)で、その目的は通学路の事故対策であった。通学路の場所、交通事故発生箇所を可視化し、対策の検討と実施を行っていた。しかし、GISの利用は長くは続かなかった。
再びGISが注目されたのは、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災である。千葉県内では、海岸地域の浦安や海浜幕張に加え、内陸部の我孫子市などでも液状化現象が発生し、信号機の倒壊など交通安全施設が大きな被害を受けた。当時、交通安全施設情報の一部は文字データで管理されていたため、復旧に時間を要した。この教訓から、今後災害が発生した際に迅速に復旧対応に臨めるように、GISの利用が進められることとなった。
また、警察庁からの事故発生箇所及び交通安全環境の整備状況の可視化と、環境の改善の推進に関する指示もGIS利用再開の一因であった。

 

ArcGIS採用の理由

ArcGIS採用の最大の理由は、シェープファイルで既存の交通事故管理システムと情報のやり取りができることであった。
県内で交通事故が発生すると、各警察署の交通課事故担当者が、いつ、どこで、どのような事故が発生したか(事故概要)や、事故に関連する様々な情報(実況見分実施日、供述調書作成日、送検日など)を文字データで管理する交通事故管理システムに入力する。入力されたデータはArcGISを利用して、簡易かつ効率的な可視化や分析を可能としている。
今では、ArcGISで編集した情報を交通事故管理システムに反映することができるなど、連携機能が強化されている。事故概要を可視化し、分析するためのサブシステムという役割も大きい。

 

導入手法

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津波浸水予測データと交通安全施設データを表示。
浸水の可能性がある信号機等への対策に役立てている(※)

交通規制課のGISは、東日本大震災を機に、先進的なGISシステムへと変貌を遂げた。交通安全施設の設置位置、緊急交通路の予定路線などのデータに加え、津波浸水予測図をはじめとするハザードマップ、災害時避難場所等の様々なデータをArcGISに追加し、閲覧できるようになった。
さらに、県警が所有する様々なデータを組み合わせることで、多種多様な分析にも利用できる。通学路上における事故分析や安全対策の立案と実施効果の測定、事故分析結果に基づく安全対策の立案、実施効果の検証、災害被害想定に基づく交通安全施設整備計画の策定などを行うことが可能だ。

 

導入効果

児童を対象とした交通事故対策

交通規制課では、小学校の通学路上で発生した事故を地図にし、各小学校に配布する取組みを行っている。危険箇所が一目でわかり、児童への注意喚起に適しているため、この取組みには肯定的な反響が数多く寄せられている。事実、児童の交通事故数は減少傾向にある。これは、取組みの成果が現れたものといえるであろう。

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交通安全施設データ、通学路データ及び交通事故データを可視化。事故多発地帯を割り出し、交通安全施設設置の検討、導入効果測定に利用(※)

災害対策

ハザードマップの活用で、発災時の被害想定に基づいた交通安全施設の整備計画や交通規制計画の構築ができるようになった。また、災害時には情報共有ツールとしての活用も期待されている。

 

今後の展望

交通規制課では、今後、高齢者の交通事故削減に力を入れていく予定だ。高齢者と交通事故の割合が多い地域を割り出し、交通安全施設整備対策をはじめ、高齢者への注意喚起を実施していく。高齢者の交通事故を減らすことができれば、県内の交通事故件数の大幅な削減につながるからだ。 また、カーナビメーカーを巻き込んだ取組みも模索している。通学路を走行するドライバーにカーナビから注意喚起のアナウンスを流すというものであるが、現状では千葉県内の通学路データしかないため実現には至っていない。 通学路と交通事故の見える化から、交通安全施設整備の検討と導入、災害対策と復旧対策、カーナビメーカーへの情報提供の模索など、千葉県警察本部 交通規制課の先進的な取組みは今後も続いていくであろう。

※ この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の基盤地図情報を使用した。(承認番号 平26情使、第604号)

プロフィール


副主幹 中村 利弘 氏 (左)
警部補 大竹 秀和 氏 (右)



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掲載日

  • 2015年11月13日