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事例

GISを用いた行政情報の「見える化」

横須賀市議会

 

市の現状・課題を可視化した「横須賀データマップ」の作成

課題

導入効果

 

概要

「見える・わかる・変わる」を基本政策とする小林氏は、市民にとって重要と思われる地域情報や行政情報を、誰もが直感的に理解しやすいよう、GISを使用して地図上で可視化した。作成したデータマップは議会質疑や市民との意見交換の場での資料として役立てられた。また、様々な主題のデータマップをまとめた「横須賀データマップ」を作成し、公開している。小林氏は、この「横須賀データマップ」を用いて市民と意見交換を行う「語り場」も実施し、横須賀市を市民の手で変える材料として活かしている。

 

 

導入経緯

横須賀市のハコモノ問題に取り組む際、全体を把握するために地図を活用しようという思いから、公共施設情報をGoogle Mapsで可視化した。「横須賀ハコモノ研究会」という市民との勉強会を開催し、作成した地図を用いて情報発信・情報共有を行った。この活動が第7回マニフェスト大賞優秀コミュニケーション賞を受賞したことがきっかけで、GISが活用できるということを知り、自治体GIS利用支援プログラムでArcGIS for Desktopを導入した。

 

解析手法

GISを用いたデータマップの作成は、まず情報収集から始まった。横須賀市役所の各部署から資料提供と説明を受けた。紙ベースの資料のデータ化や、調査結果からデータを作成するといった作業も事務所研究員の協力を得ながら進めていった。ESRIジャパンのトレーニングを受け、GISの操作方法も習得した小林氏は、これまで多くの地図を作成し、活用してきた。現在、それらの地図に、独自の調査結果や解説、提案を添えた「横須賀データマップ~41万人の地図~」を公開している。データを客観的に分析したい人のために、基データの公開も行っている。

 

導入効果

データマップを作成することで、膨大で時に難解な行政の資料を、わかりやすい形で市民へ提示することができた。データマップを見た人からは、市の現状を改めて認識したという声や他の情報も知りたいという要望をいただく等、とても好評である。以下にいくつかのデータマップの活用事例を紹介する。

ハコモノ問題

以前Google Mapsで作成した地図をArcGIS for Desktopを使用して改めてまとめた。貸館系施設の位置・規模・種別をシンボルの分類で表し、2㎞のバッファを重ねた。ほぼ市全域がカバーされている一方で、地域によって施設数には大きな差があることがわかった。

図1:貸館系施設の偏在を可視化
図1:貸館系施設の偏在を可視化

学童保育問題

図2:学童クラブ立地の現状
図2:学童クラブ立地の現状

学童クラブに着目し、図2の地図を作成した。小学校と学童クラブのポイントデータに、小学校から250mと500mの距離のバッファを重ねた結果、500m以上離れた所に学童クラブがある小学校が10校あることがわかった。この地図を用いて議会で提案し、「需要のある地域には今後計画的に学童クラブを小学校内に整備していく」という市長答弁を引き出す結果に貢献した。

要援護者用ハザードマップの作成


図3:要援護者用ハザードマップ

津波浸水予測のデータと要援護者がいる施設のデータを重ねて、障害者施設向けハザードマップも作成している。このマップが好評で、市民からより詳しい説明を求められたため、その要望に応え、津波予測・土砂災害予測・洪水予測のデータを1枚の地図にまとめて地域ごとの詳細版を作成した。PDF形式で公開しており、必要な情報のレイヤだけを選択し、見る人がカスタマイズして使用できるようになっている。小林氏はこの地図を持って障害者施設に出向き、それぞれの施設ごとに被害予測の説明や対策を考える出張相談を行っている。

図4:地域別の高齢化率
図4:地域別の高齢化率

また、小林氏は議員活動にもGISを活用している。人口の増減や高齢者の分布等を地図に表して分析し、必要な人へ的確に情報を届けることを意識した効率的なポスティングを行うなど、エリアマーケティングにも応用している。小林氏は「eマナビバ」というweb講座の一つを受け持ち、議員向けにデータマップ活用術を紹介している。こういった議員活動での地図活用を自らが行うだけでなく、他の人へも勧めていくなど、データマップの活用促進に意欲的である。

今後の展望

「まちの未来について考えていくうえで、文字を追うのではなく、地図や絵で見ながら、誰でも話がしやすいような形で市民とまちの未来について考えていきたい」「現在はある時点を切り取った平面の地図しか作れていない。これを、ある時点の、または将来の3D地図を作成したり、時系列でアニメーションをつけたりなど、静的な地図だけでなく動的な地図も用いて、よりまちの姿や将来を「見える化」していきたいと考えています」と今後のGIS活用にも意欲的である。政治側から市民への提示は、抽象的なイメージで将来像を語るか、びっしりとした文章で示すかの両極端な提案となっているのが現状であり、よりわかりやすく市民に提示していくべきであると小林氏は考えている。「いつかはGISを駆使した地図や絵、アニメーションで見せるマニフェストを作成するのが夢です」と小林氏は語った。

 

プロフィール


横須賀市議会
議員 小林 伸行氏


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資料

掲載日

  • 2015年6月17日