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事例

地理空間情報モデリングで古代遺跡を復元

奈良大学文学部文化財学科

 

古市・百舌鳥古墳群におけるGISデータの作成と利用

奈良大学は多くの文化財をもつ古都奈良に位置し、日本ではじめて「文化財学科」を設置した大学である。
考古学研究において数多くの実績をあげており、近年ではGISも積極的に活用している。

概要

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古墳と周辺の発掘調査地域

奈良大学文学部文化財学科では、当学科を中心として平成17年度から19年度の3カ年にわたり、科学研究費補助金の助成を受け、近畿地方における大型古墳群の基礎的な研究を行った。これは、大阪府堺市の百舌鳥(もず)古墳群、同羽曳野(はびきの)市・藤井寺市の古市(ふるいち)古墳群という日本最大の古墳分の基礎的な情報を整備するというものである。
この2大古墳群は、大阪の近郊にあり、古墳群地域は第二次世界大戦後急速に住宅地化が進んで都市化し、のどかな田園地帯であった戦前の面影は失われ、古墳群の本来の地形や地理的環境もわかりにくくなってしまった。

本研究の最大の目的は、両古墳群に関する考古学研究の基礎資料を研究者に提供し、学界の共有財産とすることであった。基礎資料としては、この地域の開発以前の航空写真をもとに、両古墳群が都市化する以前の大縮尺の地形図を作成し、データ化することと、両古墳群の発掘調査の成果を集成するとともに、両古墳群に関する研究の現状と問題点を整理することであった。

当学科は、レバノン ティール遺跡発掘調査など以前より考古学研究においてGISを活用してきた。本研究でも、発掘調査の成果というい多くの地理情報に紐付けられている情報があるので、コレラの基礎資料を集成するにあたり、データベースに空間的な概念をとりいれたGISを用いることにした。GISの活用については、同学部地理学科の碓井 照子 教授、同志社大学文学情報学部の藤本 悠 氏の協力により研究を進めた。

遺跡情報のモデリングとデータ構築

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地理情報標準による現実世界のモデリング

遺跡調査によって、様々な文献資料などのデータも収集したが、将来的に他での研究利用を考慮すると、データの再利用性やデータの共有化という観点から統合的に管理する必要があり、そのためのデータ モデリングが不可欠である。本研究は、データ モデリングをGISをによって行った。
遺物や遺構などの遺跡はさまざまな地理空有感情報を有しているので、モデリングにはGISを活用するのが効果的である。近年、考古学分野においてもGISが活用されており、様々な研究に利用されている。

本研究では、遺跡調査によって収集された様々な情報を体系立ててまとめるため、地理情報標準に準拠した応用スキーマ作成とデータ実装を行った。

地理情報標準とは、ISO19100シリーズ(ISO/TC211)の国際規格を国内向けに標準化した企画である。理知情報標準は、現実世界にある様々な情報をどのようにとらえ、規格化し、共通部品群を用いてデータを提供するのかとりまとめた標準化仕様である。最も大きい特徴は、現実世界を「オブジェクト指向GIS」という方法に酔って、従来からのレイヤ ベースGISでは捕らえきることのできない様々な地理的現象・事象をとらえることができるようになる。

本研究では地理情報標準に準拠した「応用スキーマ」をモデリングしてデータの実装を行った。地理情報標準では、データの実装はXMLで行うことを強く推奨しているが、XMLをネイティブに解釈できる商用GISエンジンは現在のところまだ存在していない。また、オブジェクト指向GISデータモデルも、ISOを例として体系立てられてはいるが、実用レベルとして利用されている例は非常に少ない。
本研究では、データ実装を行うソフトウェアとして、汎用GISエンジンでオブジェクト指向GISデータをモデルを実装しているArcGISを使用した。ArcGISのデータ フォーマットである「ジオデータベース」は、クラスの振る舞いやクラス間のリレーションシップをグラフィカル ユーザインターフェースで構築することもできる。また、標準機能に不足する振る舞いは、カスタマイズによってフォーマット自体を拡張できるという特徴を持つ。

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作成した応用スキーマ(抜粋)

応用スキーマの作成によって、各情報の関連性や定義が明確化されたため、データ利用の効率性を向上させることができた。またジオデータベースにデータを実装したことにより、多くのGISを利用者に活用してもらうための基盤を整えることができた。

GISデータの活用例

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三次元に視覚化した古墳

作成したデータの活用例として、ArcScenceを使用した可視解析を行った。またArcGISアプリケーションをもたないユーザーでも閲覧できるよう、ArcGlobe / ArcGIS Publisherを用いてPMF(パブリッシュ マップ ファイル)を作成し、ArcReaderで配布できるようにした。

地形図という2次元の画面から、遺跡などの構造物を立体的にとらえるには、読図の訓練が必要であるが、三次元化したGISをデータを強調表示してArcGISに読み込ませることで、容易に可視化できる。

同学科千田 嘉博 准教授らの研究では、構築した三次元のGISをデータから中世の城郭研究への応用を試みた。この研究では、古墳の城郭への転用という問題を取り上げ、古市古墳群における岡ミサンザイ古墳を題材として、伝統的に用いられてきた「縄張り図」とGIS上で表現された3DCGが非常に有効な手段となることを明らかにした。

これらの一つ一つの研究成果を積み上げることで、情報の取得、管理、表現に関する課題を見つけ出すきっかけとなるであろうし、単に新しいだけではなく、伝統的な研究スタイルを共有する可能性も生まれてくるだろうと考えている。

まとめ

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研究室風景

本研究では、都市化以前の旧地形図を作成するとともに、宮内庁書陵部や周辺自治体の協力によって収集した発掘調査のデータを旧地形図上に集成して研究者の共同利用に役立てられる基礎的なデータを構築した。このような成果を可能とした背景には、地理情報標準の応用スキーマという、共通の解釈を定義するためのテンプレートが用意されるようになったことが挙げられる。

大型古墳群の発掘調査のデータベース化は科学研究費の研究では大きな限界がある。しかし、今後の調査・研究の発展のためには必要不可欠な作業で、本研究ではその作業を試みた。この研究成果が、今後さらに考古学分野でGISが活用されるための契機にしたいと考えられている。

プロフィール


白石太一郎 教授(左)、藤本悠 氏(写真右:同志社大学文化情報学部)



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掲載日

  • 2009年1月1日

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