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事例

関西主要圏における金融機関の立地分布とその変化

兵庫県立大学

 

金融情報と地理情報を融合
平成の金融大編成後の金融機関立地の変化をみる

1990年代に始まった金融自由化に伴い、1990年代後半から大きな金融再編成が行われた。再編成が行われた後、銀行の支店数と立地はどのように変化してきたのか。GISを用いて、その結果を考察する。

背景

20年ほど前から金融機関の支店立地の変化についての研究を行っている。GISの本格的な利用は、1997年からで、ハードの環境とソフトウェアの価格の面で以前と比較して導入が容易になってきたことが、導入の経緯である。バブル崩壊後の地方信用組合、信用金庫の支店立地とその変化に関する研究にGISを利用した。
1997年時点のGIS導入時は、他社のGISソフトウェアを利用していたが、その後、機能(直線距離計測機能等)、価格の両方の面からESRI製品を選択・採用、それ以来、継続的に利用している。

1990年代初めには、23行が存在した上位業態(都市銀行、長期信用銀行、信託銀行)では、相次ぐ経営統合・合併が行われ、2005年初には、6グループ・3行に減少している。
その結果、統合銀行間の重複支店の統廃合、無人店舗化(ATM)が進み大幅に有人店舗が減少した。都市銀行の店舗に関しては、1999年3月末に3270支店あった状態から、2004年3月末には、約2,390支店への27%の減少となっており、どのような立地の支店が減少したのかという興昧が、研究の動機である。

本研究は、支店数の減少が顕著に見られる1999年3月末と2004年3月末における関西主要圏(大阪府下全市区町村、及び淡路島を除く兵庫県南部地域を対象)の都市銀行の支店立地とその変化についての分析から廃止対象支店に関する特性分析までに渡るが、ここでは主にGISを用いる関西主要圏の都市銀行の支店立地とその変化についての分析について紹介する。

主に、最近隣の店舗の特定とその距離の特定をArcGISとVBAを組み合わせ、独自にツールを作成することで実現した。
解析結果の視覚化と支店周辺の社会環境の特徴の把握に、GISは極めて有効であった。

金融機関の支店データベースのGISデータ化

毎月一回、東京銀行協会から購入可能な支店データベースのうち、1999年3月末時点と2004年3月末時点の金融機関の支店データベース内の住所データと、従来研究で構築されてきた、支店の位置座標データ、街区レベル位置参照情報ダウンロードサービス(国土交通省国土計画局 国土情報整備室)を利用し、約7000店舗(地方銀行も含む)のアドレスマッチングを行い、GISデータ化を実施した。
また、街区レベルでは表現できない(同街区に複数の店舗がある場合)約700店舗の支店に関しては、様々な紙地図などをもとに、手作業でアドレスマッチングを行った。

苦労の結果作成した1999年3月末、2004年3月末の2つのGISデータをArcGIS上に重ね合わせることによって、1999年時点では存在した支店の店舗の多くが、2004年には存在していないととが容易に把握できる図となった。
また、その傾向をみてみると、大阪市中心部及び神戸市中心部の都心地域でのかなりの閉鎖があること、同時に、郊外の交通ターミナル以外の地域の副次的な中心地区にある支店が閉鎖されたことなどを直感的に把握することができるようになったことが、GISを利用できなかった時期との大きな違いである。

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支店の分布とその環境分析

多くのエリアマーケティング手法が存在するが、との研究では、大阪府下及び兵庫県の南部地域に展開する都市銀行の支店全体の分析対象とすること、また今後この領域に存在する都市銀行以外の金融機関についても同様の分析が必要となることを考慮し、さらにはある程度の正確さを確保しつつ計算量と作業時間を抑えるため、支店が存在する4次地域
メッシュを特定した上で、その4次メッシュのデータのみではなく、店舗が存在するメッシュに隣接する8個の4次メッシュ(4次メッシュが存在しない場合にはその4次メッシュを含む3次メッシュ)を全て特定し、空間データをして重複がない形のデータとして利用している。

現在、さまざまな指定統計を用いた地域メッシュデータが整備されてきているが、今回の分析では過去の経験を踏まえ、事業所・企業統計の最新の平成13年度地域メッシュ統計を利用した。事業所統計のみを採用した理由は、これまでの研究により、世帯数や人口、居住者の住宅環境などの変数は地域金融機関の収益状況に大きく影響しないことが明らかとなっているほか、これらの変数は以下の分析で取り上げる資本金1,000万円以下の事業所数等と強い正の相関を持つことを考慮した結果である。また、企業活動を示すメッシュ統計としては商業統計や工業統計などもあるが、これらは販売額や生産額が企業活動の実態を反映するといった長所がある反面、多くのメッシュについてデータ秘匿されており、またサービス業のウエイトが大きい地域の活動状況が反映され難い等の問題があること、事業所・企業統計は資本金規模別等の企業数が利用出来るため、中小企業を対象としたリテール活動の実態を捕捉可能とするため、事業所・企業統計を利用した。

ただし、事業所・企業統計には金融機関に関する業態別・銀行別の支店数、最寄の同一銀行の支店(僚店)までの距離、あるいは金融機関の支店ごとの就業者数等のデータがなく、それらについては独自にデータベース化する必要がある。金融機関の業態別の支店数や、最近隣の僚店までの距離、などは、GISでデータを加工作成している。金融機関の支店ごとの就業者数等に関しては、「日本金融名鑑」の店舗情報データを加工・使用した。

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今後の展開

コンビニATMが都市銀行の支店立地計画にどのような影響を与えているのか、コンビニATMと都市銀行の支店の立地展開の関係についての研究を予定している。
地方銀行の銀行間の支店展開の比較、指標化を進めていくことを計画している。

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プロフィール


兵庫県立大学大学院応用情報科学研究所
川向 肇 助教授



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掲載日

  • 2007年1月1日