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GISを活用したエコロードのデザイン

福島県いわき建設事務所

 

国道289号荷路夫バイパスは、GISを活用して野生動物のコリドー(回廊)の設計を行い、自然環境と共存・調和した道づくりを目指した「エコロード」に取り組んでいる。

調査、計画段階から設計、施工、管理の段階まで、自然環境の保全にきめ細かく配慮された道路を表すエコロード(Ecological Parkway)。GISの空間解析による環境への負荷を軽減するための工夫は、今後の道路計画のモデルになるだろう。

国道289号荷路夫バイパスエコロード

一般国道289号は、新潟県新潟市を起点に、福島県の南会津、県南地方を経ていわき市に至る延長260Kmの幹線道路で、県内の生活圏を結ぶ連携軸のひとつとして、県勢発展を支える重要な路線として位置づけられている。このうち、いわき市田人町荷路夫地内の路線は、幅員が狭く、急力ーブ急勾配が連続する交通の難所となっており幹線道路としての機能を果たせない状況になっている。そこで、荷路夫バイパスは、それらの問題を解消することを目的として事業化された。この地域には豊かな自然が残されており、動植物・生態系などの自然環境に配慮した「エコロード」として整備が進められている。また、荷路夫バイパスは第2世代のエコロードとして注目を集めている。

これまでのエコロードは、希少な自然を対象として、行政と専門化が中心となって調査や計画、設計を行ってきた。このようなエコロードを第1世代のエコロードと言うならば、荷路夫バイパスは日本の里山によく見られる身近な自然を守ることを目的とした、行政や専門家だけではなく、NPOや地域住民も積極的に参加して推進する第2世代のエコロードと言える。

エコロード研究会

荷路夫バイパスのエコロードでは、従来の行政主体の検討委員会形式ではなく、地域に密着して活動している各種団体との連携を図り、さらに道路の計画・施工・維持管理・野生動物、植物、淡水生物等のエコロード計画策定に必要な専門知識を有している複数のNPOとの協働によるエコロード研究会を設立した。このことにより、専門的な調査研究とあわせて、調査・計画・設計段階から工事完了後までの住民参加が可能となっている。

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GISの活用

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エコロード研究会のGIS分科会

福島県いわき建設事務所とNPO法人ワイルドライフ市民&科学者フォーラムや関係機関によって構成されるエコロード研究会では、本計画でのGIS導入について以下の通り目的を5つに整理した。

①情報の視覚化
住民参加、市民参加の条件の一つが、専門用語や膨大な紙の調査報告デー夕、難解な図面を排し、さらにデザインの経緯や結果を一目瞭然化することである。GISでは、3Dなどのツールを用いてビジュアルに示すことができる。

②情報や言語の共通・共有化
土木と環境など、異なる分野の専門家が共同作業を効率的に進めるためには、使用する情報や言語の共通化が要点である。GISでは基本的にシェープファイルという位置』情報と属性情報ともったファイルを用いることができ、さらに属性テーブルに詳細な情報を格納することができ、情報や言語の共通化が可能となる。しかも、デジタルデータとしてEメールやCD、DVDどで情報のやり取りができる。

③情報の統合化
自然環境保全調査、国土数値情報をはじめとして、省庁レベルの環境情報ソースがGISでの活用を目的としてシェープファイルの形で情報提供を行いつつあり、それらに荷路夫での自然環境調査結果をオーバレイすることで、空間解析や多変量解析などの統計的な解析、それに基づくデザインが行うことできる。

④手法のモデル化
解析やデザインの経過をArcGISのジオプロセッシング機能を用いてモデル化すれば、荷路夫バイパスだけでなく、同じような事例のエコロードに再使用することが可能である。

⑤地域の学習
解析結果を地域に残すことで、新たな「地域づくり」の資料として、あるいは学校教育における地域の学習に際して強力なツールとなる。

ArcGISによるエコロードのデザイン

ノスリの保護プログラム作成

荷路夫バイパス計画地内の森林に営巣したノスリ(福島県の準絶滅危惧種)の保護プログラムがGISによって作成され、Hl7年度に引き続き、Hl8年度も無事ヒナの巣立ちを確認した。ノスリの飛翔奇跡をArcGISによって解析した結果、巣の周囲に直径500mの防衛圏、1500mのテリトリー、5kmの八ンティングエリアが作られていることがわかった。とくに、防衛圏内では親鳥が強い警戒心と攻撃性をもっていたため500m圏内の工事を中止するとともに、巣から直視できる領域をArcGISの可視領域解析によって求め、テリトリー圏内の可視領域についても工事を中止した。一方、影響がないと判断された地域についてはそのまま工事が続行することができた。

タヌキのアーチパスのデザイン

野生動物の移動ルートを解析することができれば、移動ルートと道路が交差するところが対策工のポイントである。地域の典型種であるホンドタヌキの移動ルートをArcGISによって解析し、さらに沢の保全を重ね合わせ、アーチ型パスのデザインを3D化した。

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今後の課題

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荷路夫の豊かな自然(国道289)

今後は、効率よくデータの整備を行う仕組みと工事完成後の追跡調査や維持管理に向けた活用方法とホームページでの活用を検討していくことを考えている。また、今回の取組みで苦労したのは基盤データの整備であった。今後、GIS有効利用を進めるにあたっては、様々な業務で作成した航空写真や地形図のデータを様々な組織(国、県、市町村、団体など)の枠を超えて相互利用できるシステムの確立が望まれると乙ろである。

「荷路夫バイパスでは、『ともに考えともにつくる道づくり』を実践するため、エコロード研究会が主体となり、GISを活用したエコロードのデザインや地域との連携・情報発信、住民参加の仕組みづくり等、様々な取組みを行っています。エコロードをキーワードとした荷路夫バイパスの取組みは始まったばかりですが、完成後のエコロードが地域に愛され、持続可能な社会資本となるよう努力していきたいと考えています。」と猪狩主査は語った。

 

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掲載日

  • 2007年1月1日

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