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建設業におけるGISを活用した事業継続計画(BCP)の実施・運用

株式会社 亀井組

 

GISとワークショップを取り入れたBCPの再構築!
100年以上の歴史を持つ企業の100年後の未来を創造するための
新たな挑戦

課題

導入効果

 

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亀井組徳島本店

イントロダクション

亀井組は、明治39年(1906年)に創業した徳島県に本社を構える地場の総合建設会社であり、一世紀を超え、地域の暮らしを支えてきた企業である。主な事業は、官公庁が発注する道路や河川などの工事を行う「土木事業」、民間の病院や寺社仏閣などを建築する「建築事業」、一般のお客様向けに新築住宅の建築やリフォームを行う「住宅事業」、太陽光発電や省エネ診断を行う「環境事業」の4つの事業が大きな柱となる。亀井組では、これら4つの事業により、顧客や地域に対する社会的責任を果たすため、BCP(事業継続計画)を進めている。100年以上の歴史を持つ企業が100年後の未来を創造するための新たな挑戦をはじめている。

 

背景

徳島県は、近い将来起こる可能性が指摘されている「南海・東南海地震」による災害の影響が懸念視されている地域の一つである。亀井組では、平成19年よりBCP(事業継続計画)の策定に着手した。徳島県下の建設会社としては極めて早くBCPに取り組み、徳島県事業継続計画審査委員会より、平成20年に審査員特別賞を、平成22年には徳島県知事賞を受賞している。

ただ、BCP策定の中心人物であった根来氏には一抹の不安があった。BCPは、緊急事態に備えた組織体制構築などの「事前対策」と災害・事故発生後に事業活動を速やかに開始するための手順を定める「事後対応」を計画するものであり、会社経営の観点からも重要なものとなる。根来氏はBCPの重要性を理解していたが、「他の社員がどれほど亀井組のBCPを理解しているの?」、「実際に有事の際、策定された行動計画通りに対応できるだろうか?」といった不安を持つようになった。そこで根来氏は、GISを用い、亀井組が直面するハザード(危険)を可視化することにより、社員全員が共通の危機意識を持つための試みをスタートさせた。亀井組BCPの再構築が始まったのだ。

導入手法

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ゆれやすさと重要顧客の状況

GISを用いたハザードの可視化は、まず近い将来直面する可能性のある「東海・東南海地震」を第一のハザードと定めて行われた。内閣府中央防災会議が平成24年8月に発表した「南海トラフ地震リスクデータ」をArcGISに取り込み、徳島県下のリスク状況を確認した。さらにその上に、亀井組の営業拠点、避難所、社員の自宅、顧客、主要取引先(下請け企業など)の位置を、住所情報からジオコーディングして各種レイヤに展開した。

 

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営業拠点から社員自宅の徒歩到達圏

さらに道路ネットワークデータを使用し、営業拠点から社員の自宅、あるいは避難所から社員の自宅の到達圏分析を行い、のちに検討される社員の初動参集体制を決めるうえでの基礎資料を作成した。これらの基礎資料は、全社員を集めて開催された「BCP特別講習会」時に説明され、亀井組が直面する危機意識が共有されることとなった。

 

導入効果

平成25年6月、亀井組BCPを再構築するうえで、社員一人一人のBCPに対する参加意識(我こと意識)を高め、有事の際に機能する体制を作ることを目的に、「ワークショップ形式」によるBCP再構築プロジェクトが立ち上がった。いわゆるボトムアップ型でのプロジェクトの開始である。

ワークショップ運営にあたっては、防災の専門家である兵庫県立大学の浦川 豪准 教授の指導を仰ぐこととした。ワークショップには各部署から選抜された社員(12名)が参加し、亀井組社員として、部署の垣根を越えた議論が繰り広げられた。

ワークショップでは、まず亀井組の強みと弱みについて話し合われ、現状の企業リソースが洗い出された。次に災害等発生後に新たに必要となる作業について議論された。現在は、この新たに必要となる作業の優先順位付けがなされているが、地場の建設会社としての「地域に対する社会貢献」が最優先事項となり、土木部を中心に議論が進められている。議論された内容を基に、平成25年度中に改訂版のBCPマニュアルが作成される見込みである。

 

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GISを使った講習会を聞く亀井組社員

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ワークショップの様子

 

亀井組住宅部は、BCPでのGIS利用と並行して、平時の業務においてGISを利用する活動をスタートさせた。いざという時にGISを有効に活用するため、日ごろからGISに慣れ親しもうという発想である。住宅部では、新築で家を建てた顧客やリフォームにより住宅を修繕した顧客など多数の一般顧客を抱えている。これらの顧客に対し、クラウド技術を活用したGISを提案し、日常のメンテナンス作業を効率的に行う仕組みの構築を検討している。また、見込顧客に対する営業活動にGISを利用するため、情報収集の仕組みの検討と顧客データベースの見直しを初めてい。

まとめ

今回のBCP再構築を担当した根来氏は、「プロジェクトにGISとワークショップを取り入れたことで、認識の共有を図ることができ、社員のBCPに対する意識付ができた。今後もGISを有効活用することで、防災対策および災害対応を効率的に進めていきたい。」と語った。

 

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掲載日

  • 2014年2月20日