宇治市役所建設総務課では、WebGISを用いて空間情報から過去数年分の道路・水路に関する苦情要望の保菅ファイル名を検索するシステムを構築。道路関係各課(3課)の情報共有を明確にし、業務効率と市民サービスの質を上げている。
業務目的を念頭におき、どうすれば効率的・効果的に作業を進められるかという視点からGISが利用できるかどうかを判断し、必要なGISを選択利用する方針が一貫されている。複数の部署・業務でGIS活用が進んでいるのが特長である。GIS活用形態を分類すると、
といった大きく3つの活用形態が見えてくる。ArcGIS事例集Vol.5ではこれら3つの形態のGIS活用事例を紹介していきたい。まずはじめに、1.台帳+XYの事例として宇治市役所建設総務課のWebGISを使った事例を取り上げる。
WebGIS利用前の課題は、大量にある書類から過去の苦情要望の事例を探す検索時間の短縮であった。建設総務課に寄せられる苦情件数は年間100件以上で、年々苦情に関する書類である相談受付簿が積み重なってくる。
新規に苦情要望が来た場合、市民に不公平なく対応をするために過去に同様の事例がないか簿冊ファイルから相談受付簿を探さなくてはならない。ファイルの管理方法は年度別に簿冊番号を付け保存しているが、どこに過去の相談受付簿があるかを調べるのに非常に苦労をしていた。
苦情要望を受けた職員は、相談受付簿に内容や経過を記入し上司に報告し、回覧後の受付簿を簿冊ファイルに綴じるまでを業務フローとしていたが、ステップを一つ増やしWebGISでデータ入力することにした。現実の地理空間情報と簿冊ファイルの相談受付簿を関連付けるために、WebGISで、地理空間図形として簿冊番号などの属性を登録する画面を設計した。
WebGISでは、年齢層の高い職員でも容易にデータの閲覧をすることができ、課題である相談受付簿の検索時間の短縮に導いた。過去の書類検索を素早く行うために、まず簿冊を作成し、WebGISに登録をする。そして個々のファイルに登録した簿冊番号を割り振った。
WebGISを使った情報共有システムで市民から苦情要望を受けた職員は、各々で苦情要望に関する簡易な入力を行うことが可能となった。WebGIS上で、データの入力、検索、閲覧を簡易にすることで業務作業を効率的にし、道路関係各課の情報共有をスムーズに行えるようになった。
WebGISを用いた情報共有システム
道路関係課内のWebGIS情報共有システムは、課内の業務に特化したシステムで、職員が業務に必要なGIS機能をうまく選んでいる。担当職員の林氏は、「属性を付けてファイルの検索をできるようにしたことが大きい。苦情要望の現場情報をWebGIS上で確認し、過去の情報のファイルをすぐ引き出せるようになった。」という。
道路関係課内のWebGISの利用は発展段階で、建設総務課だけの一方的な情報発信にならないように関係職員に操作マニュアルを作成し普及を促進している。
宇治市役所建設総務課ではWebGISデータベースのデータを積み上げ、苦情の傾向分析を行うことを目指している。今後、課内のWebGISは成長し宇治市内の道路関係の苦情要望を減らし、より良い街づくりに貢献するであろう。
宇治市では部署を横断する形でのGIS利用環境が整備されている(※1)。
業務、組織、人材面では、「宇治市GIS利用促進検討委員会」が組織されており、月例で業務に根ざしたGIS活用のための業務的、技術的意見交換、調整が行われている。
また、システム面においては、WebベースのエンタープライズGIS、汎用GIS(ArcView)、モバイルGIS(ArcPad)、業務特化GIS(Pascal等)などが導入済みである。さらに、データについては、共用空間データとして住宅地図、都市計画図、航空写真等が利用できる環境が整備されている。