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選挙ポスター掲示板設置業務へのGIS活用

宇治市役所GIS利用促進検討委員会

 
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GISの汎用性を活かし、業務の適所においてGISを活用、業務全体の質と効率化を高める。

「宇治市GIS利用促進検討委員会」への参加を通して、各課から集まった委員たちが、日々の業務をベースとして最も効率的かつ有効的なGISの利用場面を考える。

業務の効率化及び高度化を目的としたGISの活用をめざして

京都府宇治市は、京都府の南部に位置し、19万人の人口を抱える都市である。世界遺産である平等院や宇治上神社を有し、また、お茶の名産としてもよく知られる『お茶と観光のまち』として、日本有数の観光都市である。

宇治市のGIS活用に関しては、平成16年末より、本格的に開始されている。以来、GISの汎用性を活かし、年々業務におけるGIS活用の幅(多様性)が広まってきている。

宇治市でのGIS活用に関して特筆すべき取り組みのひとつとして、各課所属の代表者参加の下、庁内におけるGISの利用促進について議論する「GIS利用促進検討委員会」の設置・運営が挙げられる(ArcGIS事例集Vol.3参照)。

この委員会は、平成16年よりスタートし、今年度は、第4期目となる。おおよそ月回のペースで各課の委員たちが、それぞれの業務の効率化や質の向上のためにどうGISが利用できるのか、ということに関して全体での議論、講習会など様々な取り組みを通して答えを見つけ出し、それを各課に持ち帰り、実践に活かしていく。

宇治市GIS利用促進検討委員会の取り組み

当委員会での代表的な取り組みの一つとして、昨年度より行っている「業務の見える化」プロジェクトまたは業務フロー分析がある。各課における特定の業務について、人、もの、データの観点から業務において情報がどのようなフローで利用されていくのか、各課担当者が模造紙に書き込んでいき、業務における情報処理の流れを可視化する。各業務全体を見直し、その上でGISとデータベースの最も効率的な活用方法を考えようというねらいがある。そして、業務の適所において、GISの適切な機能を見つけて使うことが、業務に根ざしたGISの活用を可能とするのである。

また、当委員会では、実際にGISを使用する様々な実践的取り組みも行われている。ArcGISの基本操作について学ぶ一般的な実習に加え、より実践的な研修として特定の業務ヘGIS活用を委員で体験するというような取り組みも行われている。

その一つが、昨年度行われた「宇治市名木百選のフィールド調査Jである。この業務では、宇治市の文化財として市内各所に点在する名木に選ばれた百本の木(名木百選)について、その樹種や大きさ、状態、位置、写真をベータベース化して管理することである。このデータベースを一元管理するためにGISの利用が検討され、研修内容として採用された。各委員たちは、ArcPadによりデータベースから切り出した調査区域の地図をPDAに転送し、各名木をグループ毎に回り、フィールド調査を行った。そして、調査した結果を工クセルの帳票として出力するまでの作業を行った(※調査ではPOS:屋外調査支援システムを使用)。

委員たちは、研修をこなしていくなかで名木百選の調査と各々が日々行っている業務を置き換え、研修で行ったことを各課の業務に適用した場合にどれだけの有効性があるか、不便な点は何かといったことに焦点をあて研修を進めた。

研修の後に行われた意見交換会では、委員たちから、各課で行っている様々な業務におけるフィールド調査にも同じようにGISを活用することができないか、との意見がいくつか挙がった。また、従来の紙の調査票による調査との比較から、PDA使用による利便性、と不便な点についても議論がなされた。

  

※POSはPDA(Personal Digital Assistants)とGPS(Global Positioning System)を利用する屋外調査支援ツールであり、新潟県中越地震における家屋被災度判定用に開発された調査支援ツールを、各種調査に利用できるように汎用化したArcPadベースのGISシステムである。

選挙ポスター掲示板設置のための位置図作成業務

GIS利用促進検討委員会が今年度で第4期に入り、これまで以上にGISの汎用性を重視した業務への活用が検討されている。その中でも、前項で紹介したPOS:屋外調査支援システムは、その汎用性の高さから、これまでいくつかの業務への適用が検討されてきている。そして、実際に水路占用調査では、POSを活用したことにより業務の効率化に成功している(ArcGIS事例集Vol.3を参照)。そして、POSの活用経験からさらに新たな業務へのGISの活用が見出された。

これまで、宇治市では選挙の際のポスター掲示板の設置場所を(約300箇所)A0サイズの都市計画図に直接手で書き込み庁内の参照用として使用していた。また、このポスター掲示板の設置業務に関連しては、業者への設置の指示や建物の管理者への連絡といったような作業が必要となるため、A0の都市計画図とは別に、各設置場所付近の住宅地図とそのページ数、現場写真、管理者の連絡先等の情報を別に準備する必要があった。そして、業者へのポスター掲示板の設置依頼の際には、エクセル表、住宅地図、台帳といったいくつかのデータベースからの情報をそれぞれ業者に示す必要があり、原課側での作業にも、業者のポスター掲示板設置作業にとっても非効率なことが課題となっていた。

そこで、この複数のデータベースの管理と業者への設置場所の指示をより効率的に行うために、A0都市計画図の利用からGIS利用への移行を行った。

このためのGISデータの整備として、以下の作業がなされた。

  1. IT推進課が、紙の都市計画図を参照し、ArcView上で掲示板設置場所約300点を手入力
  2. 入力した300箇所の設置ポイントをWebGIS(統合型GIS)にアップ
  3. WebGISシステムから選挙管理委員会職員がチェックおよび修正をかける

そして、整備されたデータ(掲示板設置ポイント)と、設置場所周辺地図及び写真を整理して掲示板設置業者に示すために、POSの帳票作成ツールが活用された。

ポスター掲示板設置に関する多様なデータをGISデータベースとして一元管理することと、これまでフィールド調査を主とする業務に使われていたPOSの機能を汎用的に活用することで、業務の効率化に成功した。

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業者への設置場所指示のための帳票の例

  

GISの有用性と今後の展開

委員会を通して、業務へのGIS利用が確実に進んでいる宇治市だが、今後もGISを利用していく上で次の2点が課題となっている。

現在、各課から選出された委員は、定例で行われる委員会をとおして、それぞれの所属する課における業務へのGIS利用の促進を担っている。しかし、定期的に行われる人事異動により、いままでに行っていたGIS利用業務が停滞するという危慎がある。

このような状況の中で、今後どのように新たな人材の育成を行っていくのか、また現在GISを利用している課においてGIS利用業務をどのように継続していくのか、という課題を抱えている。

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掲載日

  • 2008年1月1日