事例 > 能登半島地震での災害対応における情報マネジメント

事例

能登半島地震での災害対応における情報マネジメント

輪島市都市整備課

 

災害対応における情報マネジメントの重要性

実際の災害現場で要求される住民対応。自治体による迅速で正確な対応のために必要とされるツールとは。

震度6強、その瞬間

2009_wajima_1

「震災発生時、車で1時間の距離にある妻の実家の穴水町の海岸を息子と散歩中でした。すぐに津波が来ると思い、家族を連れ、高台避難しました。そのときは、輪島市で大きな被害があるなんて、想像もしていませんでした。」輪島市都市整備課の宇羅氏は2007年3月25日の能登半島地震発生当時をそう振り返った。

しばらくすると、テレビで輪島の被害の状況が映し出された。字羅氏は、とりあえず家族を妻の実家に預け、市役所に車で向かった。

石川県輪島市西南西沖40Kmの日本海で日発生したマグニチュード6.9(気象庁暫定値)の能登半島地震は、石川県・富山県を中心に数多くの死傷者を出した。震源を中心に家屋倒壊・道路崩落や電気・ガス・水道などのライフラインの寸断が発生し、エレベータ内に人が閉じ込められる事故も相次いで発生した。

宇羅氏が輪島市役所に到着すると、ロッカーが転倒し、書類が散在し、足場も無い状況だった。周りの職員も自分が今何をしてよいのかわからない状態で、地域の実績に即した形で策定されたはずの地域防災計画の通りに行動が出来ている職員はほとんどいなかった。毎年防災訓練を行っていても、実際の災害時には誰でも混乱することを痛感したと言う。

倒壊家屋は全壊、半壊、一部損壊、その他を含め3万棟を超えた。家屋だけではなく、江戸時代からの伝統的な町並みを残してきた黒島地区も大きな被害を受けた。

被災者生活再建支援

政府では、被災時に住んでいた家屋や住宅が、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」と認定されると給付されるり災証明書を持っている市民に対し、住宅の応急修理、市税納期延長などさまざまな公的支援、民間支援を行なえる制度を定めている。今回の震災でも、輪島市はこの支援体制を利用し対応した。

上記り災証明の判定は現地調査にて決定するが、現地調査後、輪島市の職員に加え、小千谷市、長岡市、十日町市、富士常葉大学に参加していただき話し合いを行なうことで、調査の質、調査員のレベルを均一にし、情報の共有化をおこなった。このミーテイングは、後の内部調査の件数を滅らすことに繋がった。

2009_wajima_2

上記フローでもわかるとおり、り災証明書を発給することで被災者はさまざまな支援を受けることが可能となるが、自治体職員は証明書発給を自分たちのゴールとするのではなく、その後の被災者生活再建を第一と考え、新たな出発点であると位置づけることが重要であると宇羅氏は語った。

GIS利用での成果

wajima-2007-4

り災証明書発給を当面の目標としていた輪島市が、次の取り組みとして行なったことが、位置情報を利用しての各部所データベースの結合であった。結合することにより、部署間を横断したさまざまな業務での利用が可能となる。

データ結合を行なったデータ、部署は、下記の通りである。
① GIS位置情報(復興支援室)
② 住家被害調査(税務課)
③ 応急仮設住宅(都市整備課)
④ 住宅応急修理制度(都市整備課)
⑤ 建物除却申請(環境対策課)

これらデータを結合させるために、各課では家屋位置情報に共通のり災IDを付与することを大原則とした。これを主キーとして他の支援業務データにリンクさせることが可能となり、マスターデータベースが出来あがった。データベースの結合はArcView9.2を利用し、り災IDをキーにテーブル結合を行なうことで作成された。

このマスターデータをベースにArcView9.2で「災害公営住宅建設地の検討」、「住まい・まちづくり復興計画」、「被災者台帳の整理」、「被災者生活再建支援業務」のデータ整備に活用した。

被災時の利点、問題点

言頭でも述べたように、地域の実績に即した形で策定されたはずの地域防災計画も、毎年行なっているはずの防災訓練も、住民からの問い合わせの多さ、職員の混乱もあり、実際の災害時にはほとんど機能することはなかったという。

今回の震災で、浮かび上がった問題点としては、「全庁的に災害対応業務を知る」、「共通のデータベースを利用し、情報を管理、共有する」、「住民への周知をしっかり行なう」というところで、災害時だけでなく、日常の業
務から日々意識して行なうことが重要である。

特に「共通のデータベースを利用し、情報を管理、共有する」という部分においては、紙地図、台帳ベースのみで業務対応している自治体には、GISデータ化する整備までの期間や予算確保が難しいということがあるが、最終の目的は、もしもの時に被災者がスムーズに生活再建が可能となるように導くことであることを認識し重要施策として取り組むことが大切である。

また日ごろから日常的にGISを汎用的に使いこなし、このスキルが災害対応だけでなく、さまざまな各課業務ヘ利用できることを理解することで自治体業務を円滑に行うことが出来る。

今後の対策、予定

GISはツールとして非常に有効であり、さまざまな業務に使用することで、市民の安全、安心を獲得し、行政の業務効率化に役立つことがわかった。

今後、輪島市では健康推進課による「要援護者マップ」、都市整備課による「用途地域図」、選挙管理委員会による「選挙ポスター掲示板地図」などを整備していくことを検討している。その他、企画課による統計業務や各種分析、放送課でのケーブルテレビ幹線管理、農業委員会の農用地区域の把握、教育委員会による学校区の管理など、全庁的なGISのニーズに応えられる体制を整えていきたいと考えている。

プロフィール


宇羅 良博 氏



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2009年1月1日

Copyright© 2002-2019 Esri Japan Corporation. All rights reserved.
トップへ戻る