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一刻を争う医療現場で命を救うツールとしてGISが活躍

ロマリンダ大学メディカル・センター

 

ロマリンダ大学における保健医療GISの取り組み

地域医療や救急医療の問題が叫ばれる中、GISがこれらの問題を解決する1つのツールとしてどのように活用出来るのだろうか?

ロマリンダ大学

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カリフォルニア州ロマリンダ市

カリフォル二ア州南西部に位置する口マリンダ市は全米屈指の長寿の町である。この町にはキリスト教セブンデイ・アベェンテイス卜派の信徒が多く住んでいる。彼らは菜食主義をはじめとする教義に従ったライフスタイルを営んでおり、彼らの平均寿命は全米平均のそれと比べると、10歳以上長いと報告されている。ロマリンダ大学はキリスト教の教えのもと1905年に設立され、医学、歯学、薬学、公衆衛生学など保健医療分野の学問を中心とした大学である。特に小児医療、心臓外科の分野では世界的な業績を有する。また、研究・教育のみならず日々の医療業務においてGISが幅広く利用されている。

ロマリンダ大学メディカル・センター

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フリーウェイ上のライブカメラとマップが連動

ロマリンダ大学メディカル・センター(LomaLinda University Medical Center;LLUMC)は、南カリフォルニアの4つの郡、イニョー、モノ、リバーサイド、サンバーナーディノ郡内で唯一存在するレベル1の外傷センターであり、約330万人の命を守る役割を担う。

月並みな表現ではあるが、救急医療の現場では、1分1秒たりとも無駄には出来ない。「患者はどこにいるのか?」、「事故はどこで発生しているのか?」、「救急車、消防車、ドクターヘリ、あるいは病院、消防署などの救急事態に対応出来る資源はどこにあるのか?」、「どれくらいの時間で現場に到着し搬送出来るか?」、などのリアルタイムな地理情報の収集や解釈が重要となる。

「サンバーナーディノ郡のエアーレスキューチームでメディカル・ドクターとして任務を遂行していた時に、こんなことがありました。ある日、患者さんをヘリから下ろして離陸した直後に、その場所からへリでたった30秒で行ける場所で、6歳の少女が車にはねられました。しかし、通信センターは、我々がすぐ近くにいることに気づかずに、事故現場からへリで30分もかかるアナハイムに別のへリの出動を要請したのです。」と、Emergency Medical Services (EMS)のJeff Grange医師は語った。このようなことを数々経験し、救急医療における状況認識のコンセプ卜を思いつく原動力となったのである。

彼をはじめとするLLUMCのスタッフは、救急医療における地理情報の重要性を認識しESRI社に相談を持ちかけた。ESRI社は、病院やドクターへリなどの状況の管理や位置情報の表示を目的としたWebGISを構築し、Air-Tack社がへリや緊急車輌のリアルタイムな位置情報を扱う仕組みを提供した。

AEGISのシステム概要

LLUMCの発案によって構築されたシステムAEGIS(Advanced Ernergency Geographic Information System)は主に以下の機能を有する。

LLUMCのスタッフはこれらの情報を40インチの液晶ディスプレイモニターで逐次把握することが可能である。

AEGISシステムの導入効果

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リアルタイムで表示されるヘリの現在地

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AEGISのシステム概要

「今までは、救急搬送時に救急車が渋滞に巻き込まれたり、ヘリを出動させるべきかどうか判断に迷うことがありましたが、AEGISにより救急車輌やヘリの位置情報、病院の受け入れ態勢の情報が同時に確認出来て、より良い意思決定が出来るようになりました。AEGISは救急搬送時において、命を救う強力なツールです。」と、LLUMCのJeffGrange医師はコメン卜した。

「AEGISシステムはLLUMC向けに開発しましたが、このソリューションは世界中の病院やEMC組織に適用可能です。救急搬送に関わる情報、つまり、病院のみならず、消防、警察、交通、天気、背景地図などの情報を1つの画面で表示するツールを持つことは病院の救急救命科としては初めてでしょう」と、ESRI社の保健医療分野のソリューションのマネージャであるBill Davenhall氏は語った。

ロマリンダ大学におけるその他の取り組み

LLUMCでは、病棟におけるベッドの管理システムが導入されており、ベッドの空き情報や患者の状態などがフロアー毎に視覚的に把握出来るようになっている。

また、公衆衛生学部では学部や大学院において、国際医療分野を中心としたGISを利用した研究や教育が行われており、将来、保健医療の分野で活躍する人材に対するGISの教育がなされている。

新潟大学との大学間交流協定

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新潟市内での大学間交流協定式

2008年3月に新潟大学とロマリンダ大学公衆衛生学部との聞に大学間交流協定が結ばれた。保健医療分野においては、国際医療分野での共同研究やプロジェクトの推進、研究者の相互交換制度などが検討されている。また、この協定により保健医療分野のみならず、防災、工学分野における応用研究や教育の連携も期待されている。GISを核とした大学問交流の動きが今後、注目されている。

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掲載日

  • 2009年1月1日