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竹林分布拡大の時系列解析

九州大学大学院生物資源環境科学府

 

空中写真から過去30年間における竹林分布変化の傾向を探る

日本各地の里山で起こっている竹林拡大。その対策の糸口として、空中写真から複数時期のデジタルオルソフォトを作成。竹林とそれに隣接する土地被覆を関連させながら拡大の傾向を把握し、今後の里山社会を考える。

森林は我々に多くの恵みを与えてくれる。森林から生み出される木材資源は、紙や建築材の材料として使用されるだけでなく、薪・炭などのエネルギーとして人類の生活を支えている。また一方で、森林の存在が、洪水を防いだり渇水を予防するなど、安定した日々の生活環境を提供してくれる。我々人類は、森林を利用するとともに守っていかなければならない。森林をより良く管理していくことが重要といえる。

森林を管理するためにはどのような情報が必要だろうか?まず、現在の森林の状態を知る事が必要だろう。さらに、その森林の将来の姿を予想することも求められる。森林計画学研究室では、現地調査で収集されたデータを基に森林の現況(材積や成長量など)を把握し、さらに将来の森林の姿を予測する手法の開発に取り組んでいる。また、人工衛星により観測されたデータを活用し、広範囲にわたる森林の様子を解析したり、地理情報システム(GIS)を用い、森林が置かれた状況について地形解析や空間解析などを行っている。森林を『木材資源として上手に利用』しながら、同時に『環境資源として保全』していくこと、すなわち『持続可能な森林の管理』これが当研究室のキーワードである。

なぜ竹林が拡大するようになったのか?

里山全体に広がる竹林(福岡県八女郡立花町)
里山全体に広がる竹林(福岡県八女郡立花町)

近年、日本各地でモウソウチクを中心として竹林が自然に分布を拡げていることが報告されている。これほどまでに竹林が拡大するようになった社会的背景には、タケノコ(缶詰)等の安価な輸入品との競合やプラスチックなどの工業製品の普及によりタケノコや竹材の需要が減ったこと、また、労働力・後継者不足により多くの竹林が放置されていることなど、日本の里山社会が抱える深刻な問題が存在する。管理されなくなった竹林は、その旺盛な成長力により周辺の森林に侵入して置き換わるため、森林資源量の減少や、里山の生物多様性・防災機能の低下が危惧されている。従って、竹林分布拡大の将来予測や効果的な拡大抑止策の提案が必要とされている。
現在表面化している現象の傾向を把握し、対策を立てるには、過去のデータを分析することが重要である。空中写真は定期的に撮影されており、事象を客観的に把握できる有効なデータソースである。これまで、空中写真を利用するには、多くの作業が必要であり、大量の空中写真を処理するには時間と労力がかかっていた。しかし、近年の情報処理技術の向上と解析ソフトウェアの高度化により、複数の既存空中写真からシームレスなデジタルオルソフォトの作成が容易になってきた。デジタルオルソフォトの利用は、既存空中写真の利用可能性を飛躍的に向上させ、高度な時系列画像解析への道を拓くものである。

空中写真から変化を捉える

福岡県においてタケノコ生産が盛んな糟屋郡篠栗町と八女郡立花町の空中写真から竹林分布変化を把握した。

使用したデータ

デジタルオルソフォトの作成

空中写真をスキャニングし、ERDAS IMAGINE 8.6 OrthoBASEを用いてデジタルオルソフォトを作成した。これにより、撮影時期の異なる複数枚の空中写真を正確に重ね合わせることが可能となった。

デジタルオルソフォトをモザイクしてシームレスな画像を作成
デジタルオルソフォトをモザイクしてシームレスな画像を作成

竹林の抽出

ArcView 8.3で各時期のデジタルオルソフォトから竹林をポリゴンとしてデジタイズした。

竹林分布変化の把握

竹林分布の時系列変化を隣接する土地被覆(人工林、広葉樹林、耕作地、草地、人工構造物、その他)との関係に着目しながら解析を行った。具体的には、土地被覆別に竹林拡大部分の面積、非拡大部分の面積、隣接部からの竹林の侵入しやすさを算出した。

竹林分布の変化

竹林拡大の傾向とは?

人工林に侵入する竹林の様子
人工林に侵入する竹林の様子

過去30年間で、竹林面積はおよそ1.3~1.7倍増加していた。広葉樹林や草地など人為の関わりが少ない土地被覆は、竹林に置き換わった面積が大きく、竹林と隣接している場合、竹林の侵入を受けやすいことが明らかとなった。一方、人工林や耕作地は、竹林の侵入は受けにくいものの、竹林の多くが人工林や耕地と隣接しているため、竹林に置き換わる絶対的な面積が大きい土地被覆であることが示された。

今後の竹林拡大

現在、多くの竹林は広葉樹林、人工林、耕作地のような土地被覆と接しており、今後も拡大が続く可能性を十分に持っている。それを妨げるものとして立地的要因、生態的要因、人為的要因を挙げることができる。しかし、立地的要因や生態的要因については未だ十分な知見は得られていない。従って、現時点での竹林拡大への対策は、人為的要因に頼らざるをえないであろう。つまりは、竹林の適切な管理である。それには、里山が抱える厳しい状況を冷静に捉えた上で、実態を把握することから始める事が肝要である。

GISは空中写真や衛星データ等の客観的なデータソースに、様々な情報を関連付けることができるツールである。今後、広域的な竹林の賦存量の把握、変化量の把握を行うとともに、より詳細な周辺の土地被覆の情報(人工林の植栽密度や広葉樹林の構成樹種など)を関連付けることにより、竹林拡大抑制に資する方策を検討していかなければならないであろう。

プロフィール


森林計画学研究室メンバー
屋久島調査の風景



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掲載日

  • 2006年1月1日

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