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事例

西ナイルウィルス拡散状況・パターンの解明で被害を最小化

NASAほか

 

リモートセンシングとGISで西ナイル熱の流行から市民を守る!

蚊を媒介に人命に多大な被害を及ぼす西ナイルウィルス。リモートセンシングとGISで西ナイルウィルスの拡散状況やパターンを解明し、人的被害を最小化する。

天気の良い日に屋外で楽しんでいるところを蚊に刺されるのは、日常、どこにでもある風景である。しかし、蚊にさされることで眩暈・発熱、さらには体が麻痺状態になり、そして死に至る可能性があるとしたら。「蚊に刺されること」が私たちの生死にかかわる重大な結果をもたらす存在に変わったのは、1999年に北アメリカで西ナイル熱が流行したことがきっかけであった。

西ナイルウィルス

西ナイルウィルスは蚊によって媒介されるウィルスで、人間、馬、鳥などの中枢神経系に影響を与える。

西ナイルウィルスは、アフリカ、ヨーロッパ、中東、西・中央アジア、オセアニア地域で存在が確認されており、一番最近では北アメリカでその存在が発見された。

西ナイルウィルスの拡散は、殆どが蚊による感染である。まず、西ナイルウィルスに感染している鳥などの血液を吸うことで蚊が感染する。そして、この感染した蚊が西ナイルウィルスを人間やその他の動物に広めていく。2002年には新たに4つの人間への感染経路(輸血、臓器移植、胎盤経由、母乳育児)が報告されている。

人間の体内での潜伏期間は3日~14日で、殆どの場合ウィルスに感染していることに気付かない。西ナイルウィルス感染者の約80%は感染の兆候は全くないが、約20%の感染者は西ナイル熱による軽い症状を発症する。症状としては、発熱、頭痛、体の痛み、そして極まれに、発疹やリンパ腺の腫れが見られる。これらの症状は数日間程度で治まるが、健康な人でも数週間寝込むことがある。この発症者の内150人に1人という確率で重症となる人がいる。症状としては、高熱、頭痛、首の凝り、方向感覚の喪失、昏睡、体の震え、痙攣、筋力の低下、視力の低下、痺れや麻痺等が代表的である。これらの症状は数週間続き、神経系に与える影響は一生残ってしまうこともある。

神経系の病気を発症する一番の要因は高齢である。55歳以上の人は免疫抵抗力が低いため、ウィルスに感染する危険度も高くなる。Monterey Countyは、カリフォルニア州で最大の高齢者施設を保有し、事実、高齢者が多いために西ナイルウィルスに注意深く対応する必要があった。

NASAにおける西ナイルウィルスの研究

NASAは公共衛生応用プログラムにより、公共の保健衛生管理局が西ナイルウィルスの拡散を追跡・予測するための研究を行っている。NASAはその革新的な技術とデータ、衛星画像を武器として、病気への攻防戦に役立たせている。このプログラムは、公共衛生局へNASAの保有する情報を提供し、それを利用してのウィルスの拡散状況やパターンを解明し、利用できるリソースを如何に効率良く配置して病原体に対抗するかを目的としたものである。

連邦、州、そして地方自治体とが一体となり、現在NASAの3つのプログラムが西ナイルウィルスの研究の重要な役割を果たしている。Healthy Planetプログラムでは、NASAの衛星画像やデータベース情報、研究結果や情報ネットワークを提供している。伝染病研究における国際研究パートナーシップ(INTREPID)は、衛星画像から抽出したデータを基に国レベルの気温、植生分布、渡り鳥の移動経路や地域の報告ケースのデータベースを構築している。

さらに、NASAのCenter for Health Applications of Aerospace Related Technologiesでは、リモートセンシングとGIS技術を利用して、カリフォルニア州サクラメントにおける鳥と蚊両方の生息地となり得る地域の判明も行っている。このプロジェクトは、特に西ナイルウィルスと同様に、鳥から蚊へ媒介するウィルスによる脳炎の拡散を追跡している。

これらのプログラムは、共に蚊の生息地の分布と西ナイルウィルスの発症場所との関連性を基に、病原体の流行の予測を手助けしている。

カリフォルニア州Monterey郡

NASAにおいても同様の試みがなされていることを認識していたMontereyCountyの保健衛生局は、NASAの研究機関に連絡を取り、2003年にはNASAの援助金による独自のプロジェクトを運営していた。このプロジェクトには、蚊の生息地とその周辺住民を関連づけたリスクマップを作成し、西ナイルウィルスへの対策方針を決定する上で役に立てるという目的があった。

保健衛生局では、NASA DEVELOPプログラム(カリフォルニア州Moffett FieldのAmes Research Center)により4人の研究生を迎え入れ、プロジェクトを進めてきた。研究の一環としてリスクマップを、郡内の蚊の群生地を表した衛星画像を基に作成した。

学生により現地調査された蚊の生息地と衛星画像情報から作成された地図を基に、蚊鎮圧チームが動員された。
このプロジェクトは2段階に分けて遂行された。

Phase1:ベクターマップの作成
Phase2:ウィルスの発症とその対応をトラッキングするGISの構築

当初の目的であったウィルスが浸透している高リスク地域の明確化は、ウィルスを媒介する蚊の繁殖地及び蚊の生息地と郡の人口分布とを関連付けることで達成された。

Monterey 郡における西ナイルウィルスリスクマップ
Monterey 郡における
西ナイルウィルスリスクマップ

  

Landsat7号の画像の解析にはLeica Geosystems社製品のERDAS IMAGINE8.6が使用された。植生地域と市街地域の教師付き/教師無し分類、そしてIMAGINE Spatial Modelerによるモデルの構築及びラジオメトリック補正を行った。

分類された植生地域は、ベクターカバレッジとしてESRI社のArcGISに取り込まれた。オーバーレイ解析により問題となる3つの地域のマップが作成された。

蚊の繁殖地
蚊の生息地
蚊の生息、繁殖の可能性の高い地域

さらに、蚊の種固有の特性と生息地、そして飛行地域などを分析することでウィルスを媒介する可能性が最も高い3種の蚊を特定した。これらの結果を基に、Monterey郡内の監視重点区域の地図を作成した。

このリスクマップは高リスク地域を赤色に分類しており、人口密度の高い地域に隣接した蚊の繁殖地を示している。監視重点区域により、ウィルスが進入する可能性の高い場所や湿地、雑木林なども明らかにされている。さらに、蚊の生息地や繁殖地、蚊の捕獲や監視予定地域の情報などもこの地図に記されている。

westnile-2
Monterey 郡における
西ナイルウィルス監視重点地区

  

IMAGINE Virtual GISを使用して、郡のフライスルー動画も作成された。これは、特に一般市民への教育や情報源として利用されており、一般市民が自らの責任意識を高め、病気発生を未然に防ぐのに一役買っている。

Monterey郡政府IT部門のGIS解析者Darryl Tylerによると、本プロジェクトの成果物は、リスクに瀕する住民の明確化、ウィルス対策の計画、そして土地開発者へのリスク地域の情報提供が挙げられるとのことである。

郡内部における西ナイルウィルスのウィークポイント地域が、ベースライン分析により、Phase1の段階で地図化された。これにより、限られたリソースを最大限活用できる監視方法を検討することが可能となり、現在もこのデータがNorthern Salinas Valleyの蚊鎮圧地区(NMCMAD)、及びMonterey郡で利用されている。

さらにこれらの地図は、Phase2に必要な情報源として、NMCMAD地区以外での蚊の活動調査と対策を司るMonterey郡の環境衛生部門のGISシステムで、ウィルスの発症対応と追跡にも活用されている。

今回、リモートセンシングとGIS技術は、Monterey郡における西ナイルウィルスの流行から市民を守るための事前対策に大きく役立った。

蚊の監視プロジェクトによりMonterey郡政府は、西ナイルウィルス発生の可能性が高い地域に対し、蚊の鎮圧対策を迅速かつ効率的に実施することが可能である。現在では、郡政府はウィルスが市街部を襲う以前に、その存在を察知することができる。

さらに、このプロジェクトの方法は、蚊、のみ、ダニなどによって媒介されるアルボウィルスへの研究に適応できるため、他の政府機関の関心も高くなっている。

Tyler氏によるとこのプロジェクトは、政策決定者に対し、リモートセンシング技術による綺麗な画像を提供するだけでなく、現在、そして未来の病気を評価する際の有効なツールであることを認識させるきっかけになったということである。

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西ナイルウィルスを媒介する蚊


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掲載日

  • 2006年1月1日

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