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GISの導入で都市計画業務の効率化を図り、住民にもわかりやすい情報を発信

流山市 都市計画部 都市計画課

 

職員によるカスタマイズで都市計画業務がさらに速く、さらに便利に

GIS技術の導入で都市計画業務の効率化を図り、住民への情報配信にも力を入れている流山市。
より住みやすく働きやすいまちを目指すために、日々努力が続けられている。

変化の時を迎えた流山市

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流山市上空から市街地を望む

千葉県流山市は人口16万人を有する住宅文化都市である。古くから水と緑が豊かなまちとして親しまれ、今なお残る美しい自然は市の財産として大切に受け継がれている。近年ではその恵まれた立地を生かし、「都心から一番近い森のまち」をキーワードに市独自の「グリーンチェーン戦略」を展開、さらなる緑化推進へと力を入れている。その一方で平成17年にはつくばエクスプレスが開通、秋葉原と25分で結ばれるようになり、ショッピングモール「おおたかの森S・C」もオープンするなど、都会らしい一面も注目されるようになった。

様変わりする環境の中で都市と緑の共存を目指す流山市は今、まちづくりの重要な局面を迎えている。その管理統括の一端を担っているのが同市の都市計画部都市計画課である。

都市計画課には様々な業務があるが、中でも市民に馴染みがあるのが用途地域等の照会である。これはどの地域にどのような建物が建てられるのか、どのような制限があるのかを調べるのが主であるが、従来は検索元になる紙ベースの都市計画図を手作業で適宜修正しなければならないことと、そこに記載された爪より小さな地番を検索することから大変な労力と時間を必要としていた。

そこで事態を打開すべく導入されたのが汎用GISソフトウェアであるArcViewだった。ArcViewは都市計画課の業務ツールとして購入したのではなく、業務への適用の可否を評価することを目的に「自治体GIS利用支援プログラム」で導入された。これは自治体職員を対象にESRIジャパンが2005年から開始しているプログラムで、ArcView最新版を1年間無償で貸し出し、技術サポート、トレーニング付きで行うものである。

都市計画業務へのGIS技術の導入

流山市都市計画課では平成16年に都市計画決定図面の作成用にArcViewを導入した。その後平成18年に資産税課の業務の成果品としてShape形式の地番図データが作成され、以後毎年更新される見込みとなったのを受けて、そのデータを都市計画課でも有効利用するために、自治体GIS利用支援プログラムに参加することになった。同時に、本プログラム付属のトレーニングに参加することで、職員のスキルアップをはかり、GIS技術をより広く適応させることも狙いとした。

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都市計画課が開発した地番検索システム

作業は旧座標系で作成されていた地番図を測地成果2000対応ツールにてJGD2000に変換し、さらに1筆につき1ポリゴンのデータに作り変えることから始まった。その上で、業務をより効率的に行うために独自の地番検索プログラムをVisual Basicにて作成し業務に役立てている。

都市計画課では、従来のデスクトップだけではなくノートパソコンにもArcViewを導入することにより窓口で用途地域等の照会ができるようになった。操作は極めて簡単で、対象となる住所をマウス操作のみで検索できるよう職員による従来方法からの改善が行われた。

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検索システムで地区ごとの検索も

また、都市計画図や地区計画に関する区域などをJPEG形式に変換しホームページに掲載することで、住民に情報配信をすることが可能になった。庁内でも他課からの依頼に応じて様々な図面を作成、資料として提供している。

そのほかに国や県からの調査資料として使われる図面もGISを活用して作成できるようになった。建築物動態調査という市内で建築された建物の調査においては、毎年特に時間を費やしていたが、元になる別形式のデータをエクセルに出力しArcViewでアドレスマッチングさせることでこれまで約2ヶ月かかっていた作業時間を2週間ほど短縮できた。

導入効果

色々な分野で活用されている流山市のGISであるが、その最も大きな成果は従来の業務における大幅な時間の短縮と、作成されたデータへのアクセスがより便利で身近になったことにある。

たとえば、それまでA0サイズのマイラー原図を手作業で修正した地番図と都市計画情報をプラスティック紙に重ねて印刷し、肉眼で都市計画情報の案内をしていたことを考えても、更新のしやすさと作業の簡略化の両面で利便性が大きく向上したと言える。

「今までは対応に時間がかかっていた用途地域等の照会が、ArcView上に追加開発した独自の地番検索システムによって、窓口で短時間に検索できるようになりました。また、情報をラベリングして属性表示することで、わずか3回クリックするだけで、誰でも一目でわかるような設定になりました。」と都市計画課の池田氏は語る。

また費用対効果の点についても毎年2000筆を超える修正を手作業で加え、150万円ほどの業者への委託発注のための予算を計上していたマイラー原図を、ArcViewでデータ検索できる形に変えたことで1年に約100万円の経費節減が可能になったという。

しかし、自治体GIS利用支援プログラム応募時に庁内でのGISデータ共有を目的に追加したPublisherエクステンションに関しては、作成したデータを読み込むArcReaderが当時の都市計画課にあったパソコンより高いスペックを必要としたため、継続的な使用には至らなかった。

今後の課題

GISの導入により都市計画課の業務内容には大きな変化が生まれた。しかし、今後GISを最大限に活用していくためにはいくつかの課題が残されているという。

「現時点では部署ごとにGISのソフトが異なり互換性がないため、各課単独でデータを保有している状況です。将来的には統合型GISを目指し全庁でデータをサーバ管理し、課の隔たりなくデータを共有することができればと思います。」と、池田氏。

もうひとつの課題は、人材育成だという。「人事異動により担当職員が数年で変わってしまうため、新しく担当になる職員はGISを一からスタートすることになってしまう。この検索プログラムも前々任者が作成し引き継いできているので、VBAの中身についてすべてが把握できていないと感じます。庁内にもGISを扱える職員は少ないので、今後内部での定期的な操作研修を行うなどの方法で解決できるのではないかと期待しています。」と池田氏は今後の抱負を語った。

プロフィール


左より 瀬野 裕介 技術員、池田 真二 主任主事、長橋 祐之 係長


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資料

掲載日

  • 2010年1月1日