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中越地震における緊急対応支援

十日町地域広域事務組合・十日町地域情報本部

 

通信指令業務、災害情報共有、出動記録分析に総合的にGIS を活用。

災害時の応急活動に情報技術を巧みに利用。混乱する状況下での指示、判断に地図情報を駆使。情報共有も地図で“分かりやすく”

中越地震による被害発生

中越地震による道路被害
中越地震による道路被害

  

2004年10月23日17時56分、新潟県中越地方を中心に大規模な地震が発生した。本震後の1時間には、50回の余震が発生し、十日町市では最大震度6強のゆれが観測された。

十日町地域消防本部は、GISで119番通報に対応した。初動対応以降の情報共有にもGISが利用され、被害状況を把握するための地図、斜面崩壊を検知するセンサーの設置箇所と非常時の連絡先、周辺家屋を示す地図が作成された。

通信指令業務を支えたGIS

震災時にも有効活用されたMapcall Rescue
震災時にも有効活用された
Mapcall Rescue

  

当消防本部は地震発生前から通信指令室にGISを導入し、業務支援ツールとして有効活用している。本システムMapcall Rescue(中央グループ株式会社)は、消防署の緊急対応の迅速化を支援するGISである。

平時の通信指令室の対応は以下のように行われていた。緊急通報された電話番号を画面で入力し検索する。結果として、画面の中心に該当する家屋がその他の道路や地名、地形に関する情報とともに即座に表示される。同時に緊急車両に積込まれている住宅地図の該当ページ番号が表示され、通信指令室から緊急車両に出場先についての的確な指示、情報を伝達する。

災害時の通信指令業務のようす
災害時の通信指令業務のようす

  

震災時もこの仕組みは非常に有効に機能し、400件以上の通報に対しても迅速な対応が行われた。平時の対応では、緊急車両に通信指令室から直接指示を送る。ところが震災時は一時的に要求が増加したため、10台ある緊急車両の状況把握が通信指令室では困難になった。このため、車両の管理の部分は、前線本部にゆだね、通信指令室は、通信対応と出場先の特定に集中した。通信指令係の山口氏は、「地震のときは、MapCcall Rescueがあったので、対応できました」と振り返る。

災害情報の共有化

GISを利用する山口氏
GISを利用する山口氏

  

通信指令以外の災害対応業務にもGISが活用された。山口氏は、災害対応業務に利用する地図を作成。被害状況を空間的に把握するための被害マップ、地震により崩壊のおそれがある斜面に設置されたセンサーの位置と、連絡先を一枚の地図にまとめたセンサー設置点マップが作成された。

被害マップ

十日町地域の道路被害マップ
十日町地域の道路被害マップ

  

被害の全体像を把握できる被害マップが作成された。まず、被害情報の入手からはじめられた。消防本部の近くにある新潟県十日町地域振興局では、道路等の各種被害データがMicrosoft Excel形式でまとめられていた。また、壁に貼られた紙地図上には筆記で、被害に関する情報が記録されていた。前者は、ファイルをコピーすることで情報を入手したが、紙地図はコピーができないため、デジタルカメラで撮影することで対応した。次にGISデータ作成が進められた。Excelファイルには、住所や被害に関する情報が文字情報として記載されていた。山口氏はこれらの情報を1つずつ確認しながらArcViewで場所を示すポイントデータを入力し、GISデータの形式にまとめ、道路被害、家屋被害、避難勧告地域をGISデータ化した。これらの被害データとベースマップを重ね合せることで、被害マップを作成、印刷し、情報共有が図られた。

斜面崩壊センサーマップ

斜面崩壊センサーマップ
斜面崩壊センサーマップ

  

地震以降、斜面など地盤が緩み崩壊の危険性が高い場所で、斜面の下に住宅があるような危険箇所には、センサーが設置された。センサーが斜面崩壊の兆候を察知するとまず、地元住民に通報され、次に、24時間対応可能な消防本部に連絡が入ることになっていた。消防本部は関係機関への連絡の役割を担当した。センサーは市内10個所に設置されていたが、市町村合併前の6市町村に分散していた。連絡が入った場合、迅速な対応を必要とするが、市町村ごとに連絡先の数や連絡部署名などが異なっていた。それぞれの連絡先はファイルを開いて調べれば分かることではあったが、緊急の対応が要求されるため、事前に連絡先を一覧できる地図を作成し、掲示板等に張り出すことにした。センサー設置箇所をポイントで入力し、連絡先の部署名や電話番号を属性データとして入力した。アノテーション(注記)機能で、それらの情報を地図の注記として分かりやすく配置した。

出動記録のGIS化

当消防本部には、地震発生後の救急車両の出動記録がExcel形式でまとめられている。いつ、どこに、どのような災害、被害のために緊急車両が出動したのかがこの記録から把握できる。これに位置情報を与えることで地図になり、出動状況の空間的分布や傾向を把握することができる。現在、山口氏は、400件以上の出動先をポイント化する作業を進めており、今後被害の空間的な分析を行い、今後の対応への活用を検討されている。

十日町地域消防本部のホームページでは、地震を経験された方々の手記が公開されている。各体験者の個別視点からの地震の記録である。この手記と同じように消防本部で作成されたGISデータは、今後の対策に生かされる知識になるであろう。

プロフィール


十日町地域広域事務組合
十日町地域消防本部


十日町地域消防本部
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Tel 0257-57-0119
Fax 0257-57-8499

昭和47年4月20日、十日町市、川西町、津南町、中里村の1市2町1村で発足した十日町地域広域事務組合は、翌48年4月1日消防事務を加え本格的に業務を開始。以後、平成8年には構成団体に松代町、松之山町が加入し、広域行政推進に関する事務、家畜指導診療に関する事務、国のモデル広域消防指定による消防事務を共同処理し、圏域の発展と防火、防災対策に大きな役割を果たしております。


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資料

掲載日

  • 2006年1月1日