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事例

GISを潮力発電の適地選定に利用

ジョージア工科大学

 

米国南東部における新エネルギー活用への取り組み

ジョージア州沿岸の入り組んだ地形が生み出す強い潮の流れを可視化し、潮力発電の可能性を探る。

イントロダクション

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フィルター処理後の潮流密度の地図

潮流とは、潮の満ち干きによっておこる海水の流れのことである。流れが狭くなっているところや岬の周辺では、海底の地形により強まることがある。潮力発電は海流の運動エネルギーを利用しており、風車を回転させて発電する風力発電と似ている。
水力や風力発電は、2005年のエネルギー政策法や2007年のエネルギー自給・安全保障法によって米国議会に支援されている。米国エネルギー省のエネルギー効率及び再生可能エネルギー局の風力・水力発電プログラムは、発電効率の向上と低コスト化が進むにつれ、発電施設の設置を加速度的に進めている。

本プログラムでの水力発電のゴールの1つは、海流や潮汐による発電における高度な流体力学的技術の可能性を理解することである。現在、様々なエネルギー変換装置が提案中もしくは開発されており、その種類は風力タービンのようにギアボックス(増速機)経由で発電する水力タービンから振動水中翼型発電機にいたるまで多岐にわたる。

潮汐エネルギーは、再生可能エネルギーの中でも新しいテクノロジーで、二酸化炭素を排出しないエネルギー生産に貢献するとされている。しかし、潮力発電の可能性を評価するためには、まず潮流の運動エネルギーをマッピングする必要があるのである。

そのため、主にエネルギー省、全米科学財団、ジョージア州から出資を受けたジョージア工科大学の研究者達がチームを組み、ジョージア州沿岸の潮流エネルギーのポテンシャル評価および発電に最適なロケーションの選定を行った。

研究チームの活動

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水深によってフィルター処理を行い、潮力発電の
候補地を示した図。制限区域(赤)、
危険区域(黄)、適合区域(緑)。

最近出版されたジャーナル (Journal ofRenewable and Sustainable EnergyReviews) にも掲載されたように、チームは米国海洋大気庁の電子海図、米国立地球物理データセンター、環境脆弱性指標マップ、米国地質調査所、アメリカ国勢調査局、米環境保護庁などのGIS データを広く活用した。州や地元の環境情報は、ジョージア州天然資源省や米国野生生物部から提供された。

彼らはこれらの機関から集められた地理空間データを、物理的適合レイヤ、環境制約レイヤ、社会経済的制限レイヤの3つのレイヤに分類した。これらのレイヤには、絶滅危惧種の生息地域等環境懸念のある区域、海上交通路や開発区域等経済・社会的制約がある地域が含まれている。

研究チームは、Esri社(米国)のサイトライセンスを利用してArcGISを広範囲に活用し、これらのレイヤをもとに最適なロケーションの選定を行った。適合性評価の分類に必要なパラメータは、他の海洋再生可能エネルギー、水力発電システム、風力発電プロジェクト等の適地選定業務をもとに作成された。

適地選定マップの作成

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適合地から輸送ラインまでの正規化距離

ソースの異なるデータは、ArcGISを使って主題毎にマージ(結合)され、適合区域や制限区域は、関連するフィーチャをマージして作成された。環境脆弱性の高い区域は、危険区域のマークをつけて数値化され、深さや潮力の密度のラスタデータはArcGIS Spatial Analystを使って空間的なフィルター処理を行った。制限区域はマスク処理を施し、輸送ラインや送電線、 適合地までの距離はSpatial Analystのツールボックスを使用して計算された。最終的な結果は、電力密度、アクセスのしやすさ、環境スコア等のデータを重ね合わせ、それらの数値を計算することによって得られた。

「Geodata.govのような全国規模のデータを提供するGISポータルは、データへアクセスするためのパブリックゲートウェイとしての役割を担い、データにアクセスするのに非常に役立ちました。」意思決定システムの実行を担当したジョージア工科大学博士研究員のZaferDefne氏は、このように述べている。

沿岸地域は、人間の活動、動物相、物理現象等が複雑に重なり合い非常に動的な生態系を成している。地理空間データとGISツールなしには、潮力発電施設の適地選定を行うことはできなかったのである。

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掲載日

  • 2012年1月1日