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事例

東日本大震災におけるSNSマップ。被害状況や救援依頼などの生の声をWebマップへ

ESRIジャパン株式会社、Esri社(米国)

 

震災発生後、日本全国でTwitterなどの「ソーシャルメディア」に上がった様々な声を、Webマップで集約

ESRIジャパンとEsri社(米国)の協力体制、そしてクラウドコンピューティングの活用によるマップ構築

イントロダクション

2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と、その後の大津波による大規模な被害。この震災発生直後から、「ソーシャルメディア」と呼ばれるインターネットの情報プラットフォーム(Twitter、Facebook、mixiなど)では、現地の被害状況、救援依頼、ボランティアの募集などの「生の声」が飛び交った。

しかし、その数はあまりにも膨大で、単に時系列でその流れを追っていたのでは、実際にどこで何が起こっているのか、誰がどこで何を欲しているのかということが情報の渦に飲み込まれて見えなくなってしまう。

このようなソーシャルメディアに登録された情報の中には、「ジオタグ」と呼ばれる位置情報が付加されているものが数多く存在する。そこでこのジオタグをキーとし、複数のソースからの情報をマッシュアップ(複数のWebサービスを組みわせて、一つのWebサービスに集約すること)したものが『ソーシャルメディアマップ』である。(図1)
このソーシャルメディアマップにより、

  1. ソーシャルメディアユーザの注目を一番集めているのがどの地域であるかを知りたい
  2. 地域ごとにどのような声が上がっているのかを知りたい
  3. 特定の地域における、異なるソーシャルメディアの情報をまとめて参照したい

という要望に応えることができる。

 

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図1 ソーシャルメディアマップの画面

 

ソーシャルメディアマップ公開決定までの経緯

東北地方太平洋沖地震が発生したのは、2011年(平成23年)3月11日14時46分頃のことである(気象庁のプレスリリースより)。東京都千代田区のESRIジャパン本社オフィスも震度5クラスの非常に大きい揺れにみまわれ、壁や天井に亀裂が入るなどの被害があった。

そして、まだパニックも収まりきっていない15時頃、Esri社(米国)から安否を尋ねるメールが届き、同時に「ソーシャルメディアマップを公開し、迅速な救援活動に役立てるべきだ」という提案がなされた。

 

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図2 Esri社(米国)が公開した暫定版マップ

 

Esriでは、DisasterResponse(災害対策)ソリューションの一環として2009年ごろからソーシャルメディアマップアプリケーションの開発を始めており、2011年1月にオーストラリア北東部で発生した大洪水や、2011年2月のニュージーランド地震でもソーシャルメディアマップを公開していた(3月12日には、Esriが暫定版の東日本大震災ソーシャルメディアマップを公開している(図2))。
このEsriからの提案を受け、「GISベンダーとしてまずできることをやろう」ということでESRIジャパンがソーシャルメディアマップの作成に着手したのが11日の夕方のことである。

マッシュアップの対象になるソーシャルメディアコンテンツは、Twitter(生の「つぶやき」情報)、YouTube(動画情報)、Flickr(写真情報)、そしてsinsai.infoである(図3)。sinsai.infoは、2008年のケニア暴動をきっかけとして開発されたUshahidiという情報共有プラットフォームを用いて、日本国内の有志により構築された震災情報共有Webサイトである。

クラウドコンピューティングの活用

サーバ機へ設置したが、大地震の直後でオフィスのインフラが不安定であることと、そのサーバ機ではアクセスが集中した際のスケールアウト(サーバの数を増やして処理性能を向上すること)に対応できないということで、正式公開版はクラウドサービス上で運用することに決定した。使用するクラウドサービスは、Esriとの共同作業であることを鑑み、米AmazonWeb Services社のクラウドサービスである「Amazon EC2」を選定した。このAmazon EC2には「Amazon MachineImages(AMI)」という仕組みがあり、クラウド上で仮想マシンを新規作成する際にOSやミドルウェアがプリインストールされたマシンイメージを選択することにより、面倒なインストール作業や初期設定を省くことができる。EsriからはArcGISServerがプリインストールされたAMIが提供されているので、ArcGIS Serverを動作させるためのサーバを迅速に調達することができた。

こうして、12日夜にはWebアプリケーションの設置が完了したが、公開を開始するためにはソーシャルメディア以外のコンテンツの追加やアプリケーションの調整などの作業が必要となり、公開開始は15日の朝となった。

 

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図3 ソーシャルメディアマップの仕組み

 

公開後

公開直後はサーバのC P U 稼働率が100%に達することもしばしばあったが、Amazon EC2上の仮想サーバは停止中であればスペックを変更できるので、状況に応じて深夜にCPUやメモリの増強をおこなう等の処置を施した。また、富士通株式会社の「オンデマンド仮想システムサービス(現在のサービス名は「FGCP/S5」)」やニフティ株式会社の「ニフティクラウド」といったクラウドベンダー各社のご支援をいただき、サーバインフラの増強をおこなった。

まとめ

自然災害、人為災害に関わらず、災害には場所と時間が大きく関わるため、GISや空間データを用いることで、災害について深く理解する事が可能となる。科学者たちがモデルや仮説の検証を行うのとは別に、一般の人々も、ウェブ上でGISマップを表示しGISを用いて分析することにより、地理空間的な観点から正しく物事を見ることができる。

GISを使って空間的な観点を持つことにより、私たちは自然災害を深く理解することができ、それにより、地震のような自然災害の危険度を一人一人がより深く認知し、災害に備えることに繋がる。各種機関においても、GISを活用する事により、有時の際助けを必要とする人々のために最適な対応をとることが可能になる。関連する膨大なデータとGISツールをどう使うかは使う人次第である。

 

謝辞
sinsai.infoとのマッシュアップに関してご快諾とご助言をいただきましたOpenStreetMap Japanの古橋大地様、震災対応用として無償のクラウド利用アカウントをご提供頂きました富士通株式会社様、ならびにニフティ株式会社様に厚く御礼を申し上げます。

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掲載日

  • 2012年1月1日