課題
導入効果
NEXCO西日本情報テクノロジー株式会社(以下、NEXCO西日本情報テクノロジー)は、 NEXCO西日本グループが利活用している高速道路の業務システムの開発・運用を行っている。
ユーザー部門である西日本高速道路株式会社(以下、NEXCO西日本)およびNEXCO西日本グループでは GIS を導入し、業務活用を進めている。
NEXCO西日本グループの業務は、広範囲な高速道路の維持管理を担うことから、道路周辺で発生する事象情報を地図上で可視化することが求められる。また、迅速な情報共有を目指し、業務ポータルサイト「GIS 情報共有マップポータル」を構築し、Web アプリを主にノーコード(プログラミングをせずにマウス操作で開発する手法)で開発した GIS 情報共有マップを導入した。
NEXCO西日本グループでは、道路事業に関するさまざまなデータを保持しているが、Excel によるデータ管理が多いため保持データが散在している。また、現場で発生している情報の見える化や情報共有ツールがなく、NEXCO西日本グループの大きな問題点として改善が求められている。そのため、NEXCO西日本情報テクノロジーではデータを集約し一元管理するとともに、高価なシステム構築ではなく、内製でマップを構築し、NEXCO西日本グループからの要望に迅速に対応するシステム構築が課題となった。
NEXCO西日本情報テクノロジーは、NEXCO西日本グループから「静的情報の集約およびマップ化」「ノーコードでの迅速なマップの構築」の要望に沿う、ArcGIS での業務ポータル構築機能およびダッシュボード機能による「GIS 情報共有マップ」を採用した。
GIS 情報共有マップ採用の基準は下記のようなものであった。
このように ArcGIS で構築する GIS 情報共有マップは、高い信頼性と柔軟性を持つことから選定された。
NEXCO西日本グループの要望を幅広くヒアリングし、要望については随時受け付けるとともに、NEXCO西日本グループ各社が集う GIS 技術検討会などでも議題に挙げた。ヒアリング時間の短縮およびユーザー部署とシステム開発担当者の意思疎通を高めるためのオーダーシートなどの補助ツールの整備も進めた。
実装段階では ArcGIS Dashboards を用いて GIS 情報共有マップを開発した。蓄積・情報共有をするデータは、ユーザー部署がシンプルに運用および更新できるようにするため、これまでExcel や個別業務システムに格納されていたデータを、CSV でアップロードする仕組みとした。
各業務に対応した GIS 情報共有マップが複数リリースできた段階で、ArcGIS Enterprise Sites を用いて「GIS 情報共有マップポータル」を開発した。ArcGIS Enterprise Sites を用いることで業務ポータルサイトのトップページやカテゴリページをブログ感覚で作成・編集することができた。
開発面では、アプリケーションの計画からリリースまでの時間が従来に比べ大幅に短縮され、低コストで開発できるようになった。
ユーザー側では今まで可視化されていなかったさまざまな業務を可視化・DX 化でき、高速道路の安全性や快適性、関連業務サービスの向上につながっている。
「GIS 情報共有マップポータル」のトップページには各業務に対応したマップが一覧表示され、誰でも分かりやすくアクセスできる。Web アプリの1つであるダッシュボード機能を活用することで、業務の状況をタイムリーに可視化し、管理することが可能となった。
「地震動予測マップ」では、どの事務所が管轄する道路施設(橋梁、跨道橋、トンネル、等)がどこに位置し、どれぐらいの地震リスクがあるのかがひと目で分かるようになった。
「申し出対応履歴ダッシュボード」では敷地と私有地の境界の草木等についての申し出を管理している。データのフィルタリングや検索が直感的に操作でき、私有地に入り込んだ草木の草刈りなど迅速に対応することが可能となった。ユーザー部署ではお客様対応の品質向上につながったと実感を得ている。
「ワイヤーロープ接触事故ダッシュボード」は事故地点をマップ化し、ヒートマップ表現を行うことで事故多発地点を容易に把握することができ、同じ画面でその属性から原因究明や対策の洞察を得るツールとなっている。
利用ルール、運用方法が確立したことでグループ各社が自らマップを構築し、対応するWebアプリケーションを実装する取り組みに発展している。
今後は、ArcGIS のダッシュボード機能やその他のノーコード開発手法をさらに活用し、より一層の業務全般の効率化を図る予定である。
「防災マップ(仮称)」では、リアルタイムデータ(事象報告データ、気象、ライブカメラ、車両プローブデータ)を活用し、スマートフォンとの連携、SaaS や既存サービスおよび他組織との API 連携を目指している。
NEXCO西日本グループは、今後も迅速で的確な状況把握により高速道路の安全性・快適性の向上を続けていく。