事例 > GIS を活用したインフラ損傷通報システム「KitaQ 市民レポート」の導入

事例

GIS を活用したインフラ損傷通報システム「KitaQ 市民レポート」の導入

北九州市 都市整備局

 
facebook share

いつでも簡単、スマートフォンで通報が可能
~ GIS を活用した市民参加型インフラ通報システムの構築~

概要


道路損傷箇所

自治体が道路や河川、公園などのインフラ施設を維持管理していくうえで、市民の皆様からいただく損傷に関する通報は重要な情報源となっている。
北九州市では、市民の皆様から正確な損傷箇所の位置や、損傷状況等を通報していただけるよう、地理情報システム(GIS)を活用した市民通報システムを構築し、2023 年(令和 5 年)10 月より運用を始めた。
このシステムは、GIS を活用することで損傷箇所や損傷状況等の通報情報を俯瞰的に可視化できることから、業務の DX 化を含めたインフラ施設の効率的な維持管理を支援するツールとして活用している。

課題

本市では、定期的な点検や巡回パトロールにて現場確認を行うとともに、市民の皆様から通報いただいた損傷箇所の情報をもとに補修工事等の対応を行うなど、インフラ施設の適切な維持管理に努めてきた。
通報は電話でいただくことが多いが、「通報する方に損傷箇所や状況を説明するのに手間をおかけする」「通報を受ける市側としても、場所や状況の特定が難しいこともあり、現場確認を行う必要がある」といった課題があった。

ArcGIS 活用の経緯

本市では 2013 年度(平成 25 年度)から ESRIジャパンとライセンス包括契約(サイトライセンス契約)を締結しており、庁内での情報共有から、住民の皆様への情報公開まで積極的に ArcGIS を活用しており、今回の市民通報システムについても ArcGIS の活用を検討した。他の都市でも類似のシステムを用いたオンライン通報システムが導入されているが、利用者が事前に専用アプリを利用端末にダウンロードしておく必要があるものが多い。
一方、本市では、より手軽に市民の皆様に通報していただけるよう、Web ブラウザー上で通報できるArcGIS Survey123 でシステムを構築した。また、クラウド型 GIS である ArcGIS Online は、ノーコードで業務アプリが構築できることから、アジャイル的に本市独自のシステムを構築できる点も ArcGIS の選定理由の一つであった。

課題解決手法

今回、ArcGIS Online を利用して主に以下のアプリを構築した。

  1. ① KitaQ 市民レポート(通報システム)
  2. ② 管理用マップ
  3. ③ 補修指示書 出力機能

① KitaQ 市民レポート(通報システム)
ArcGIS Online に付属する ArcGIS Survey123 を利用して、市民の皆様が現場から道路・公園・河川の損傷情報を容易に通報いただけるシステムを構築した。
通報者が位置情報および写真を添付して送信することで、リアルタイムに情報を収集できる仕組みとなっている。
(北九州市公式 LINE および北九州市ホームページからアクセス可)

② 管理用マップ
通報された情報は、リアルタイムで管理用マップに反映される。
管理用マップでは、通報情報をマップ上で可視化できるだけでなく、通報されたデータの検索、修正等を行うことができる。
また、通報いただいた道路・公園・河川の損傷情報に対して、「対応中」「補修完了」「経過観察」などのステータスを変更することができ、対応状況を素早く、俯瞰的に把握することが可能である。


管理用マップ

補修指示書(イメージ)
補修指示書(イメージ)

③ 補修指示書 出力機能

道路等の損傷の補修工事を工事業者に依頼する際に使用できる、「補修指示書」を管理用マップから出力できる機能を実装した。
損傷箇所の位置および写真情報をもとに簡単に出力できるため、工事業者への指示資料の作成などに活用され、職員の業務負担の軽減につながっている。

効果

システム導入後、2024 年(令和 6 年)9 月末までの約 1 年間で、今回のシステムを通じて 1,700 件を超える通報をいただいており、緊急度に応じた適切な補修を行う等、効果的・効率的な維持管理につながっている。
このシステムによる通報は、電話による通報と比較して、より正確な情報(位置、損傷程度等)を収集することができるようになった。そのため、これまでの電話対応に比べ業務負担が軽減されるだけでなく、市民の皆様の手間も軽減されている。
今後も、引き続き市民への周知を行うことで、多くの通報をいただき、インフラ施設の適切な維持管理に繋げていきたい。

今後の展望

将来的には、蓄積された投稿情報を管理用マップで俯瞰的に確認することで、損傷の多い箇所を分析し、予防保全型の維持管理につなげていきたいと考えている。 さらに、位置情報が必要な通報を取り扱う他部署にも、同様のシステムを展開することが可能であり、こうした取り組みにより業務の DX 化を進めるとともに、市民サービスの向上を図っていきたい。

プロフィール


北九州市役所 本庁舎



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2025年1月10日