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事例

GIS 統合基盤システムで業務の全体最適化を目指す

環境省大臣官房総務課環境情報室

 

職員の GIS 利用促進とオープンデータ普及推進への取り組み

概要

デジタル化の急速な進展・高度化が進む中、知恵・価値・競争力の源泉であるデータ利活用の重要性が認識されている。環境省は地球上のさまざまな環境事象を取り扱う行政機関であり、それゆえに省内で取り扱う環境関連情報の大半は、地図上の何らかの位置に紐づけることが可能である。環境事象の捕捉に始まり、課題の設定、施策の検討、関係者および国民への情報共有や利活用をデジタルの地図上で実施することは、極めて有効な手段である。

今回 ArcGIS を使用して開発された GIS 統合基盤システムは、省内の地理情報システム(GIS)を集中管理することで、コスト削減と効率的な業務遂行の実現を目指している。また、データ作成・共有を進めることによりデータの利活用の推進とオープン化への基盤を構築する。さらに、データ管理を改善し、職員による GIS の活用を促進することで迅速かつ正確な意思決定の支援にも繋がる。また、公開可能なデータは「環境ジオポータル」を通じて一般利用者に提供し、地理情報を含む多様な環境データの有効活用を促進している。


個別 GIS を GIS 統合基盤に集約させ、共通基盤の運用を目指す

GIS 統合基盤システムの目的と取り組みの背景

運用・保守費用の削減

政府による情報システム運用費用削減の指針の下、環境省でも情報システムの運用・保守費用の削減に向けてさまざまな取り組みが行われている。部局がそれぞれに構築した複数の GIS システムを一つの GIS 基盤に可能な限り統合するとともに、統合が困難なものについてもデータ連携などにより、地理データおよび機能の重複整備や重複管理を解消し、各システムの整備・運用に係る投資と管理コストを低減できる。

職員のGIS利活用促進、業務効率化、行政サービスの向上

GIS データを横断的に利活用できるシステムを構築することで、どこの部局・地方環境事務所でも共通のデータが利用可能となり、職員間のデータ利活用が進む。システムが共通のユーザーインターフェイス、機能となればデータの収集・分析や利用フローが整備され、職員の業務効率化につながり、行政サービスの向上が期待できる。また、システムが統一されることで GIS 活用のための組織体制も整備され、職員の GIS スキルやノウハウの蓄積も促進される。

オープンデータの推進

GIS 統合基盤システムを通じてマップやアプリケーションの公開が進むと、多様なデータを一般利用者に広く提供できる。利用者は容易にマップやアプリケーションを取得・利用できるようになり、GIS データの新たな利活用事例の創出を促すことができる。

ArcGIS 採用の理由

環境省では、あらゆるデータを共通のオープンデータとして利用できるデータ基盤を目指し、さらにどのアプリケーションでも利用できるシステムを模索していた。ArcGIS にはノーコードで使用できる多数のアプリケーションが標準で搭載されているため、職員にプログラミングの知識がなくても、普段の業務に必要な機能を迅速に活用し、業務の効率化を図ることができる。

ArcGIS の機能は GIS 利活用の促進や業務効率化、オープンデータの推進など、環境省の目指す方針とも合致していた。基盤統合後に想定していた具体的な活用例として、Web ブラウザーのみで利用可能な Web アプリ作成や、GIS オープンデータの公開、省内 GIS ポータル構築、Web マップ作成などがある。高スペックな PC やソフトウェアのインストールが不要で、部局・地方環境事務所での GIS 利活用を拡大し、横断での地理情報の共有を通じて業務の効率化や行政サービスの向上に貢献できるものが ArcGIS で実現できると考えられた。

課題解決手法

GIS の基盤を統合するにあたり、GIS を利用している原課室へのヒアリングを実施し、現行システムでの地図機能の運用状況の棚卸調査を行い、GIS 統合基盤システムの基本構想をブラッシュアップした。その後国立環境研究所と共同で行った実証実験にて、組織間の連携の検証や試験的なオープンデータ公開などを実現し、基盤の統合に向けて整備を進めた。

運用開始

2024 年(令和 6 年)4 月にシステムの運用が開始されたが、現在も基盤内の共有データの追加や管理、個別 GIS の移行作業に注力している状況である。個別の GIS マップやアプリケーションの整備完了に向けて運用を続けていくことで、将来的なシステム管理の手間や運用コストを削減できると期待している。

GIS の利活用拡大

ArcGIS で構築した統合基盤システムは、すべて Web ブラウザー上で利用できるように設計されているため、これまで GIS を使いにくかった地方環境事務所に所属する多くの職員が、比較的容易に GIS を利用できるようになり、GIS の利活用が進んでいる。職員自らが必要なデータやアプリケーションをプログラミングなしで構築したり、GIS データを部局・地方環境事務所横断で共有したりして日常的な業務に使われ始めている。

オープンデータの公開促進

環境ジオポータル
環境ジオポータル
(https://geoportal.env.go.jp/)

GIS 統合基盤システムを導入したことで、多様な GIS データやアプリケーションを組み合わせて作成されたデータも簡単に一般公開できる環境が整備されてきた。たとえば、現場の職員が現地調査アプリ(ArcGIS Survey123、ArcGIS Field Maps)を使って収集した災害廃棄物仮置場の情報を GIS ポータルに集約することで本省や地方環境事務所にも即時に共有される。さらにシステム内のオープンデータを、環境に関するオープンデータ検索サイト「環境ジオポータル」に自動連携することで、一般利用者もリアルタイムで利用できるデータとして提供が可能となった。この環境ジオポータルは、GIS データ公開・コミュニティ形成アプリケーションである ArcGIS Hub で構築され、一般利用者は地理データの検索やプレビューに加え、ダウンロードや API 利用も可能なサービスであるため、今後もオープンデータの利用促進に貢献していく。

今後の展望

今後、部局・地方環境事務所等での業務利活用の促進のために研修の場や情報交換の場を積極的に実施する予定である。今回のシステムの整備および運用保守対応の担当者は次のように期待を持っている。「 GIS 統合基盤システムをさらに発展させ、新たな GIS 関連システムの導入と省内外でのデータ共有を進めていきます。これにより、環境政策の更なる推進に貢献することを期待しています」

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資料

掲載日

  • 2024年10月30日