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事例

ArcGIS で海洋ごみの発生源を突き止める

日本財団・瀬戸内オーシャンズ X

 

世界の海を、瀬戸内から変えていく

概要

瀬戸内オーシャンズ X は、瀬戸内海に面する 4 県(岡山県、広島県、香川県、愛媛県)と、日本財団が連携協定を締結し、共同で推進している包括的海洋ごみ対策プロ ジェクトである。調査研究、企業・地域連携、啓発・教育・行動、政策形成の取り組みを行い、瀬戸内海へのごみ流入量 70% 減、 回収量 10% 以上増を達成することを 当初の目標に掲げている。 各団体が連携することで山から海底にまで広がる流域と閉鎖性海域を捉えた海洋ごみゼロ対策を行い、循環型社会を見据えた「瀬戸内モデ ル」として世界に広げていくことを目指している。

課題

海洋ごみの約 8 割は陸域から出ていると言われている。しかし、ごみが県や市町村を越えて移動してしまうため、「誰が」「どのように」ごみを回収するのか、その役割分担が曖昧になりやすい。

また、各地域での対策が地域・個人の取り組みで終わってしまうことや、自治体・企業・研究者などの分野を跨いだ取り組みが不足していることなども課題の 1 つである。こうした課題に対して、さまざまな関係者と連携し、プロジェクトにおける調査研究を進める中で随時その目標を見直しながら回収活動などを進め、最終的に瀬戸内海のごみを減少傾向に転換させようとしている。

ArcGIS 導入の経緯


清掃活動情報、
清掃活動結果情報を投稿するアプリ

瀬戸内オーシャンズ X では、海洋プラスチックごみの発生抑制を目的に 2020 年(令和 2 年)11 月〜 2021 年(令和 3 年)5 月、岡山・広島・香川・愛媛の瀬戸内 4 県の中の人口が集中する 280 河川・用水路の延長約 1,188km に沿った 23,770 の地点で、河川散乱ごみの大規模な散乱実態調査を実施した。この調査における調査対象河川、流域の抽出・選定、調査地点の選定、現地調査、調査結果の集計・分析とその見える化をするため ArcGIS を採用した。ArcGIS を採用した理由の 1 つとして、豊富な機能に加え、クラウドサービスである ArcGIS Online 上で ArcGIS Survey123(以下、Survey123)による調査結果の即時共有や調査結果の効果的な見える化が可能であることが挙げられた。

課題解決手法

ごみの発生源を特定するための解析を実施
Survey123 により収集された調査結果やその分析結果の蓄積、集約、見える化をする場として「瀬戸内オーシャンズ X データプラットフォーム」(以下、データプラットフォーム)を ArcGIS Online 上に構築した。大規模河川調査結果である各調査地点のごみ数量からプラスチック系のごみ推定重量の算出や、ごみの種類ごとの数量集計等を行い、その結果をデータプラットフォームに反映した。

データプラットフォームでは、人口集積を表すメッシュと調査結果とを重ねて表示することで、その相関関係を見られるようにしたり、3D マップ上にごみの量を種類 別に円柱で表示したり、地図、グラフ、インジケーター等のダッシュボードで表示したりするなど、効果的で見やすいデータの見える化を行った。


瀬戸内オーシャンズ X データプラットフォーム
(3D マップ表示)


瀬戸内オーシャンズ X データプラットフォーム
(ダッシュボード表示)

効果


大規模河川調査結果を説明した
ArcGIS StoryMaps

ごみ発生源の特定と流出実態の明確化
Survey123 を活用することで 23,770 地点もの多数の地点の調査を行うことが可能となった。

ArcGIS デスクトップ製品や ArcGIS Online を活用した分析の結果、周囲と比較して際立ってごみが集中し、発生源と思われる 1,711 箇所ものごみの溜まりやすい場所(ホット・スポット)を発見できた。また、ごみの流出実態として本調査の期間である約半年で約 100 トンのプラスチックごみが確認できたことから、年間の流出量が推定 200 トン以上であることが明らかになった。加えて、県ごとの特徴的なごみ散乱パターンの分析に必要な 6 つの横断的分析項目

  1. 大雨の頻度
  2. 人口密度
  3. プラスチック系ごみ推定重量
  4. 袋詰めごみ個数
  5. 水路の割合
  6. 網場の数

といった必要な基礎資料を作成する際にも大きく貢献した。また、ArcGIS を活用することで効果的な情報伝達ツールとしての役割も果たした。たとえば、ArcGIS StoryMaps を活用することにより、大規模河川の調査結果を地図や写真を織り交ぜながら、読み手にわかりやすく伝えることが可能となった。

今後の展望

今回、ArcGIS を導入して実施した調査結果から、各県の地理的特性に合わせた取り組みが必要だということが判明した。また、ホットスポットを踏まえた戦略的なクリーンアップ活動が必要であることもわかった。この活動を支援するため、「ごみの溜まりやすい場所」、「清掃が必要な場所」、「清掃活動情報」、「清掃活動結果」などのエビデンスを双方向で共有できるマップをデータプラットフォームに追加し、今後一般向けに公開する予定だ。

マップへは、投稿アプリで清掃実施予定や清掃実施結果を投稿することができるため、いつ、どこで誰が清掃をしているかなどの活動状況を共有できるようになる。さらに、それらの情報を掲載していくことで、清掃活動状況に係る活動資金や人手状況など、清掃活動が将来にわたり持続的に行われ、状況を検討することができる仕組みを構築していく。これにより、効率的な清掃を可能にし、今後の高齢化社会による担い手不足にも対応可能な体制づくりにつながることを目指している。

瀬戸内オーシャンズ X は、今後も瀬戸内海の海洋ごみの全体量を減少傾向に転じさせ、海洋ごみ全体量を削減させる、という目標に向かって、一層の貢献ができるようなデータプラットフォームへと発展させ続けていく。


データプラットフォームに清掃活動情報、
清掃活動結果情報を追加

プロフィール


日本財団・瀬戸内オーシャンズ X



関連業種

関連製品

導入協力企業

内外地図株式会社
組織名 内外地図株式会社
住所 東京都千代田区神田小川町3-22
電話番号  03-3291-0338
Email  touma@naigai-map.co.jp


資料

掲載日

  • 2024年1月29日