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建設工事前に、GIS でバーチャル ツアーが可能に

米国都市開発会社 Pape-Dawson Engineer

 
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アメリカ首都圏の POLOCOM2020 経済成長ランキングにて人口約 100 万人のテキサス州オースティンは 3 位にランクインした。
街の北西の 120 万平方メートルを占め、オースティンで 2 番目の繁華街とも称される“ザ・ドメイン”には、オフィス、小売店そして住宅用の不動産がある。


Pape Dawson Engineers によって作成された、工事の 3D モデルでは、
既存の建物と敷地の観点からプロジェクトを見ることができる

商業施設のテナントにはアマゾンやフェイスブックが含まれ、ルイヴィトンやティファニーなどの小売店舗もある。
ザ・ドメインの場所はもともと IBM が管理部門と製造部門の敷地として開発したが、1990 年代に売却された。
ザ・ドメインのプロジェクトの最初のフェーズは 2007 年に完成された。ザ・ドメインを所有・運営する 4 つの企業のうちの 1 つである Stonelake Capital Partners は既存の 13 万平方メートルの敷地を再開発しており、また 8 階建ての商業・住宅施設を建設している。

建物設計の評価

建物が設計された後、建築設計士やプロジェクトの投資家が建設前にその設計を評価できるように、可視化することが重要だ。これには様々な方法がある。

あらゆる 3D ファイル形式で提供される建物のスケール設計モデルを、審査のために作成、配布することができる。
これらの細密なモデルは設計プログラムなどで簡単に表示可能だが、依頼された建築物の位置情報に欠ける。
実物大模型を作成し、建設現場で必要な場所に正確に配置することが可能だ。また、建物の大型完成予想図を建設現場で作成し配置することもある。
大型完成予想図を配置することはザ・ドメインで過去に活用されてきた方法だった。建設や融資に関わる人は、敷地の既存の建物群の中で開発中の建物がどのように見えるかを直接確認するために敷地の周囲を車で走り回った。
しかし、モデルや完成予想図からは建設案の静的な情報しか得ることができない。実物大模型または大型の図を使用することのデメリットは、建設現場を実際に訪れないといけないことだ。長距離の移動を伴い、また天候の影響も受けるので不便になりかねない。

没入型のエクスペリエンスを創造する

GIS を使用するテキサス州の Pape-Dawson Engineers は開発地の土木開発担当として選ばれた。いくつもの企業から建物のデザインの意見を求めた。
Esri 社で AEC 分野のソリューションエンジニアとして働く前は、Pape-Dawson Engineers の GIS アナリストを務めていた Daniel Chantlos 氏がこのザ・ドメインのプロジェクトに携わった。
「進行中のプロジェクトとその周囲にある既存の開発されている建物がとても複雑に入り組んでいたため、基本の完成予想図やプレゼンテーションボードでは新しい開発プランを聴衆に適切に見せることはできなかった。」と Chantlos 氏は語った。
「そして、プロジェクトを詳細に表現するために必要な完成予想図の数はおそらく管理し切れないほど多く、プロジェクトのコストを上げただろう。」
その代わりに、ArcGIS を使って、ザ・ドメインに建設される施設の 3 次元バーチャル・リアリティ・ツアーを作り上げることで完成予想図の作成を回避できることに気づいた。

Chantlos 氏 は 高度な 3D デザインソフトウェアである ArcGIS CityEngine、ArcGIS Online、そして ArcGIS 360 VR アプリを Oculus Go ヘッドセットと共に使用した。
バーチャル・ツアーの生成にはいくつかのステップが必要だった。Chantlos 氏 は建築会社から 3D ファイル形式で各建物のモデルをもらった。Pape-Dawson Engineers の商用土地開発部からは CAD 形式の道路ネットワークのデータをもらった。ArcGIS CityEngine に建物や道路ネットワークのデータをインポートすると、道路は自動的に生成された。Chantlos 氏はそこに、街路樹、街灯、人そして車を付け加え、実際の街並みのように見せた。また既存の建物の様子を追加し、新たな建物がどこに建設されるかを決定するために CityEngine を用いて Esri World Imagery データセットから建設現場の空撮画像を抽出した。
最終的なデザインは CityEngine から 360 VR Experience(3VR ファイル)としてエクスポートされ、ArcGIS Online に共有された。Chantlos 氏 は ArcGIS 360 VR アプリを使用しながら Oculus Go ヘッドセットでその 3VR ファイルに接続しバーチャル・リアリティの場面を閲覧した。
「建築家たちはこのプロジェクトのデザインにおいて、Revit、InfraWorks、SketchUp などあらゆる種類の 3D ソフトウェアを使用していました。
そのため、CityEngine が様々な 3D 形式のファイルをインポートできることはとても便利でした」と Chantlos 氏は語った。

建物のデザインの作成に複数の異なる 3D ソフトウェアが使用されたため、各ファイルを CityEngine にて各ソフトウェアのデータ形式に応じて再調整しなければならなかった。大概、3D モデルは座標系の情報を持たないため、Chantlos 氏は各 3D の建物を建設現場内の適切な位置に手動で配置する必要があった。
Chantlos 氏にとって、完全没入型のバーチャル・リアリティの空間を作成するのは初めてだったため、CityEngine の使い方を学び、結果的にそれはやりがいのある経験となった。「最終結果に全員が満足しました。」と語った。


ArcGIS CityEngine で道路や建物を自動生成したのち、街路樹や街灯、人そして車を加えて街並みのように見せた

建設・リースの迅速化

アメリカ中の潜在的な投資家たちは Oculuc Go ヘッドセットを用いて、再開発のプロジェクトをバーチャル・リアリティの空間として、簡単に閲覧することができた。
オースティン、テキサスの実際の建設現場に投資家が足を運ばなくて済んだので、Pape-Dawson Engineers は意思決定を素早く進めることができた。この没入型の体験はプロジェクトの建物のプレリリース用ツールとしても役立った。

この事例は「Before Construction Starts, GIS Makes a Virtual Tour Possible」を元に翻訳しております。

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掲載日

  • 2023年7月5日