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事例

ArcGIS プラットフォームを用いてオホーツクの農業 DX を実現

JAオホーツク

 

さまざまなデータの見える化と効率的な圃場調査業務の促進

ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特徴

  • 現地調査業務の効率化を実現
  • 他の組織と連携した情報共有が可能

概要


オホーツク農協連区域図

北海道オホーツク地域はオホーツク海に面し東西約 200km、南北約 100km に広がり、特色豊かな自然環境を活かした農業が展開されている。

オホーツク農業協同組合連合会(以下、オホーツク農協連)は、オホーツク管内の 14 農協と正組合員戸数 3,754 戸(2021 年度(令和 3 年度)時点)から構成される連合会である。近年は、管内農協が直面する各種の課題に対応するために設置した共同利用施設等の管理運営や、実態分析を踏まえた中長期計画である「オホーツク農業の振興方策」の策定と実践推進を行っている。

オホーツク農業の振興方策では、畑作地域におけるジャガイモシストセンチュウ類(PCN)やコムギ縞萎縮病などの重要な病害虫対策を目的とした「合理的輪作体系の確立」を目指している。これらを達成するためには正確な実態把握が必要であるが、その労力が多大なため省力化が求められていた。そこで、ArcGIS を用いた現地調査業務の効率化とデジタル化を行った。

ArcGIS を活用することで、調査時のペーパーレス化やリアルタイムな進捗管理が実現した。

今後は、大学や研究機関と共通プラットフォームである ArcGIS を用いたデータ連携を行い、病害虫や輪作体系の高度な解析を行うなどさらに利活用を検討していく予定である。

課題

オホーツク地域は、大規模畑作経営を中心に自動操舵トラクターや可変施肥の普及率が高く、農協においても GIS の普及が進むなど、スマート農業分野では北海道内でも先進的な地域の一つである。

一方で、GIS を十分に活用するためには一定の知識と技量が必要となるが、人事異などで担当者が変わった後は引き継ぎがうまくいかず、結果として十分に活用できていない事例も散見された。

オホーツク地域は地理的にも札幌圏から比較的遠隔地で、対面でサポートを受けることが難しく、システムに細かな修正や新たな機能を追加するためには多大な費用と期間が必要であったことも GIS の利活用が進まない理由の一つであった。

また、実態把握で得たデータを活用し営農指導に活かすためには、集めたデータを迅速に集計し解析を行う必要があるが、多忙な農協職員が現地調査から解析まで行うことは難しい状況だった。

ArcGIS 採用の理由

オホーツク農協連が、数ある GIS の中から ArcGIS を採用した理由は、「手厚いサポート体制」と「データの汎用性、拡張性」の 2 点である。

ESRIジャパン札幌オフィスと ESRIジャパンのパートナー企業である株式会社 MapsTap 代表の関山氏(網走市)より、ArcGIS がもつ豊富な機能や、農協組織、自治体および学術研究機関での活用事例の紹介があり、導入を検討した。そして、2020 年(令和 2 年)に複数の農協の協力のもと、オホーツク地域で実証試験を行うこととした。

その結果、特に現地調査業務の省力化において求めていた通りの結果を得ることができた。その間もオホーツク地域を拠点に活動する株式会社MapsTap 関山氏より迅速で適切なサポートを受けることができたのも正式な採用理由となった。

課題解決手法

既存システムから圃場データをシェープファイルでエクスポートし、ArcGIS Pro に取り込むところから始めた。コムギ縞萎縮病調査の場合、全ての圃場を調査するため、班ごとに調査を計画する。その際に利用したのは ArcGIS Pro の「エリア内での集計」ツールである。調査班のレイヤーと各班の圃場数の合計を出して調査数を平均化した。ArcGIS Field Maps(以下、Field Maps)に圃場データを表示し、調査対象の圃場が、所属する農協組合員の圃場かを確認しながら調査を実施した。

調査時には、各班の進捗状況を ArcGIS Dashboards(以下、ダッシュボード)で確認した。Field Maps とダッシュボードを組み合わせて利用することで調査が終わっていない班への応援を迅速に行うことができた。


システム概要図

効果


コムギ縞萎縮病調査の効果

準備業務

今までの調査は、利用していたシステムから調査対象の圃場を印刷し、手作業で集計し班体制を計画していた。ArcGIS 導入後は、調査アプリと進捗管理ダッシュボードを作成したことで、作業時間が短縮された。

結果、圃場数や面積の把握、過去の病害虫発生状況の可視化など、調査項目や表示方法が自由にカスタマイズできるようになり、集計結果を効率的に行うための準備が容易となった。

調査業務
(現地におけるモニタリング調査)

モバイル端末での調査により、大量の紙を持ち歩かなくて済み、正確な位置情報を収集できた。作業者に土地勘がなくても迷わずに調査を行えるようになっただけでなく、雨天時でも記録が可能となった。以前は調査票が雨に濡れると、調査後の集計に余計に時間がかかっていた。さらに他の調査班との作業量の調整や進捗管理、また画像の整理などが調査時にリアルタイムに行え、業務の効率化につながった。


ArcGIS Pro 連作状況の可視化例

結果の集計業務
(調査結果の取りまとめと組合員へのフィードバック)

以前は、現地調査後の集計に多くの時間がかかっていたが、ArcGIS 導入後は現地調査と同時に集計が完了するため、組合員へのフィードバックが迅速に行えるようになった。

その他にも、連作状況の可視化が可能になるなど、あらゆる場面で ArcGIS が活躍している。

今後の展望

次期オホーツク農業振興方策の策定に向け、ArcGIS を活用したデータに基づく高度な解析を行い、さらなる地域農業の発展に寄与したい。さらに 14 ある農協の組合員が利用できる農業 DX ツールとして ArcGIS Enterprise を活用し、オホーツク農業 DX を推進する取り組みを計画していきたい。

プロフィール


オホーツク農協連農業振興部
部長 船戸 知樹 氏(右)
株式会社MapsTap
代表 関山 泰臣 氏(左)


関連業種

関連製品

導入協力企業

株式会社MapsTap
組織名 株式会社MapsTap
住所 〒093-0042
北海道網走市字潮見263-44
電話番号  0152-67-7916


資料

掲載日

  • 2023年1月30日