課題
導入効果
東北電力ネットワーク株式会社は、東北 6 県および新潟県を供給地域とする一般送配電事業者である。同社では、国が定める「エネルギーの仕様の合理化等に関する法律」に基づき、電力需要家へのスマートメーターの設置を進め、2021 年 10 月時点において、全需要家の約 78% の自動検針を実現している。スマートメーターの設置が進むに連れて、スマートメーターの通信障害対応など、通信品質を確保するための保守業務の負担は増加することが想定されている。そこで東北電力ネットワークでは、地理情報システムを活用した「スマートメーター通信ネットワーク管理システム」を構築・導入することで、保守業務の効率化を図った。
東北電力ネットワークでは、電力需要家向けにスマートメーターの導入・設置を進めており、その設置数は、2023 年度(令和 5 年度)で約 700 万台を数える見込みであるが、設置数の増加に伴い、スマートメーターの通信障害対応など、通信品質を確保するための保守業務が新たに発生することから、保守業務を効率化する必要性があった。
例えば、通信が不安定な個所をどう改善するべきか検討する際には、通信経路収集率等、関連するシステムから収集した情報をもとに検討することになるが、こうした情報の多くは数値情報であり、実際の通信経路を想像することが難しく、加えて周辺のスマートメーターの通信状況を同時に確認することができないため、検討は非効率に行われていた。
そこで東北電力ネットワークでは、スマートメーター位置や、通信計画を示したメッシュ等、設置計画や保守業務に必要な情報を他システムとデータ連係することにより地図上に可視化でき、また必要に応じて表示する情報を容易に登録・削除・更新できるようなシステムを構築することをスコープとして、地理情報システムのパッケージを検討することとなった。
検討の結果、複数の候補の中から、大きなカスタマイズを加えることなく、標準機能で業務要件を満たすシステムが構築でき、プロジェクト全体のコスト低減が期待できたことから、ArcGIS を本システムのパッケージに採用することとした。
本プロジェクトで構築したスマートメーター通信ネットワーク管理システムは、スマートメーターや中継器から届く情報を受信・管理する「メーターデータ管理システム(MDMS)」や、 配電図面・設計書作成システム等、従来であれば複数のシステムを参照する必要のあったさまざまな情報を、一元的に管理・確認できるものとして構築された(図 1)。
本システムでは、スマートメーターや中継器といった設備を地図上に表示し、通信状態等を色別に変化させ、視覚的な把握が容易になるよう工夫している(図 2)。
また、スマートメーターの通信経路や受信信号強度の地図表示にも対応させ、実際の現地の通信状況の可視化を実現している(図 3)。
さらに、スマートメーターの通信方式は、スマートメーター同士で通信を中継するマルチホップ方式や、携帯電話回線を用いる方式等いくつかあるが、各通信方式に対応するエリアを可視化することで、適切な通信方式を速やかに判断することが可能となっている(図 4)。
なお、スマートメーターの通信障害は地形や建築物のような障害物等、周囲の環境により発生することがあるため、本システムでは高解像度な衛星写真もシステムの背景地図に選択できるようにし、周囲の地形や障害物を鮮明に確認できるよう工夫している(図 5)。
これまで、スマートメーターの保守業務や通信障害時の対応において、当該設備の情報を確認・把握するためには、複数のシステムを参照する必要があったが、本システムの構築により、ワンストップでの情報把握が可能となり、業務の省力化が図られた。
また、スマートメーターの通信障害が発生した際には、スマートメーターの通信経路や通信状況、衛星写真を同一の地図画面に表示させることで、机上にて原因予測や対策を事前に検討することが可能となり、保守業務の効率的な運用につながっている。
東北電力ネットワークではスマートメーター通信ネットワーク管理システムを導入し、配電設備やスマートメーターの情報を地図上に可視化することにより、設備管理、現場状況把握が従来に比べてやりやすくなったと実感している。
こうした、地理情報システムを活用した設備情報の可視化は、電力設備管理に限らず、他の業務の効率化にも期待できるため、今後は、設備設計業務等の利用の拡大を検討していきたい。
組織名 | : | 東北インフォメーション・システムズ株式会社 |
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