課題
導入効果
エネトピアグループは、山陰を活動エリアとした総合エネルギー事業者である。地域の人々に都市ガスや LP ガスを安全に、安定的に供給するというコアのガス事業に加え、電気・インターネット通信・宅配水といった生活に根付いたサービス提供を行っている。
2018 年(平成 30 年)7 月には創立 100 周年を迎え、新たなブランド「enetopia」として、歴史を刻み始めた。「エネルギーの創出と地域の活性化」、「地域の人々とともに実現する理想郷」といったブランドコンセプトのもと、地域の豊かな暮らしづくりを目指し、たゆまぬ挑戦を続けている。
エネトピアグループは、2015 年(平成 27 年)に ArcGIS Online をプラットフォームとして導入、2019 年(令和元年)に日常でのガス導管の維持管理やガス漏れといった保安対応を行う際に必要になるガス導管マッピングシステム(以下、導管マップ)として ArcGIS Pro を採用した。
対象建物でのガス利用の有無、道路でのガス管埋設状況、その他ガス管の管種、口径といった情報が地図上で視覚的に確認できる。同業他社が採用しているカスタマイズベースの導管システムとは異なり、今回の取り組みは基本的に ArcGIS の標準機能(一部、カスタマイズした部分はある)を使って導管マップを実現したことが最大の特徴である。ガスの竣工図面はオンラインストレージで管理しており、ArcGIS とリンクすることですべての情報が導管マップ内で完結できている。
鳥取ガス株式会社 社屋
旧導管マップは 2002 年(平成 14 年)に導入し、10 数年経過していた。保守を更新してはいたものの、故障すれば部品提供がなく修理不可能といった故障リスクが高まっている状況に面していた。
何年も前に代替システムの検討を開始し、売り切りの施設管理専用 GIS も検討したが、リプレイス時の初期費用が高額で比較する製品対象も限定されていた。施設管理専用の GIS 製品であるがゆえ拡張性が低く、独自仕様を組み込む為の改修コストが割高な点、また全社員のモバイル活用を推進していく上でオンラインの機能が不十分な点も致命的な問題であった。また、ガス小売全面自由化にともなう導管部門の中立性の担保(情報遮断機能)等も課題としてあり、それらの点を考慮する必要があった。
システム選定にあたっては以下の点を重視した。
エネトピアグループでは全従業員にモバイル端末(スマートフォン、場合によってはタブレットも)を配布しており、クラウドサービスやモバイルアプリを有効利用できる環境にあった。課題であった現場での導管施設情報閲覧については ArcGIS Pro で作成したマップを ArcGIS Online へ共有することで解決した。費用面でもサブスクリプション、クラウドサービスである ArcGIS によりコストダウンが図られ、開発費に関してもできるだけ標準機能を使うことで抑える方針とした。
現場では最新の導管施設情報、顧客情報とあわせ、オンラインストレージ上の各種図面や現場写真の閲覧が可能となり、作業品質、対応スピードの向上を実現できた。緊急時の対応においてもその効率が期待できる。
また、モバイル端末の利用によりペーパーレス化が促進され、業務効率化と情報漏洩リスクの低減につながった。これらはコロナ禍でのテレワークや分散業務の導入においても大いに役立った。
現地でのモバイル活用
今後は災害時対応やより一層の業務効率化のために活用していくことを考えている。昨今、大雨や地震、台風といった自然災害が増えていることから地域のインフラ事業者として、災害時の対応状況を地域の人々に素早く伝える必要がある。緊急時におけるガスの復旧情報などを ArcGIS で公開することで少しでも顧客の安心、安全につながればと考えている。
また、ArcGIS のオンラインプラットフォームと現地調査アプリを使った業務のモバイル化など、無償で提供される ArcGIS アプリ群を活用した業務効率化を企画、検討している。