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国境を越えた環境情報の共有。GISデータのクラウド利用

欧州環境庁(EEA)

 

EU諸国の環境情報を、公開型システムで包括的に管理

ヨーロッパでは、持続可能な環境づくりのためのGISデータのクラウド利用が一般的になりつつある。

欧州環境庁とEsri社、業務提携契約を交わす

欧州環境庁(EEA)は欧州連合(EU)の直属機関として、加盟国が環境政策を検討する際の基礎資料となる、ヨーロッパ諸国の環境と経済活動のGISデータを整備、提供している。これらのデータは、EEA独自のクラウドネットワークである「Eionet」にて公開される。この仕組みは、国、自治体の決裁権者だけでなく、企業や科学者によるGISデータの閲覧や分析を可能にし、それぞれの地理環境情報の共有の場となっている。現在では32の加盟国と、6つの協力国をはじめとする約450団体が参加し、様々な場面で活用されている。

 

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EEAの公開データの一例:ヨーロッパ中の海水浴場の
水質情報や動向を国別、時系列ごとに調べられる。

 

Esri社は、EEAの国境を越えた環境情報共有をArcGISで技術的に支えてきたが、この度、一層の協力を宣言するための公式契約を交わす運びとなった。2011年の具体的な計画を含むこの契約は、地理情報の可視化と利用者のデータ分析の可能性を広げるという、EEAの目的をArcGISで完遂することを再確認したものである。これにより、環境データの共有がさらに簡単になり、ユーザが欲しい情報に迅速にアクセスできるようになることが期待されている。
EEAの事務局長ジャクリーン・マックグレード氏は、次のように語る。「この契約で、Eionetに参画している450の団体がArcGIS 10 にアクセスでき、コミュニティの中でモバイルGISなどの技術開発を行えるようになります。これは大変喜ばしいことです。」

国境を越えたデータ共有
~環境情報共有システムの今~

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INSPIREジオポータルのホームページ
http://www.inspire-geoportal.eu/

EEAはこのほかにも環境情報共有システム(SEIS)の発展に力を注いでいる。SEISとは、誰もが最新の環境GISデータにアクセスできる仕組み、概念の総称である。具体的には、洪水や山火事などの災害発生時に自治体が速やかな対応をとるためのリアルタイム情報や、市民が地域の水質を調べたり、災害危険度を知るためのデータ共有の基盤となっていて、既に多くの国で導入が始まっている。
ヨーロッパでは、様々な団体がSEISの基礎となるサービスを提供している。以下は、それらの一例である。

目覚ましい進化を遂げているヨーロッパのSEISは、クラウドコンピューティングへと確実に推移している。こうしたデータはオフプレミスで管理され、要求に応じてインターネット経由のサービスとして配信されるのが一般的になりつつある。
この流れについて、クラウドの支持者であるマックグレード氏はこのように述べる。「新しいサービスを追加する度に、アクセス数が急増し、情報を公開すればするほど、その情報を見たい人が増えているのが現状です。我々が作成したデータを基盤に、ユーザが独自のアプリケーションを作りたいと言い始めるのも、時間の問題でしょう。」

クラウドGISはデータの格納場所、Webアプリケーション、一点集中型のコンピューティングサービスを提供する。それは低価格でいつでも利用可能であり、アプリケーションの速度も従来より早く柔軟性があるので、ビジネスの持続性も高い。最も重要なのは、クラウドGISが簡潔でスピードの速いデータ共有を助け、コミュニティが活性化することである。
「EEAではクラウドを採用したことで、コストが大幅に削減されました。」とマックグレード氏は語る。余分な費用や時間の削減で、EEAのサービスはさらに内容の濃いものとなり、高品質で最新の環境データの恩恵を受ける、ユーザコミュニティの拡大を進めるだろう。

ArcGIS for INSPIRE

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ArcGIS for INSPIREは、異なる環境で
作成されたデータの国境を越えた共有を
図るために開発された。(日本国内未対応)

Esri 社は、SEIS の中でもINSPIREというサービスに注目した。INSPIREは、EU指令公認のインフラストラクチャであり、EU加盟国の地理空間情報をインターネットベースで共有する手段として採用されている。INSPIREは地理空間情報の作成、共有、利用の基盤となり、ヨーロッパ全体に影響する問題への最適な政策決定と運営の手助けとなる。また、公共機関と市民の情報共有にも活用されている。
このインフラを必要としているヨーロッパ諸国と団体のために、Esri社はArcGISfor INSPIREというエクステンション製品を開発した。これは既存の地理空間情報をINSPIREで利用できるSDI形式に変換するためのソリューションである。本製品は統合型GISの基盤を提供し、SDIを利用する際のプロセスを簡素化して、EUの地理空間情報共有を成功させるために作られた。

ArcGIS for INSPIREで、Esri社はヨーロッパのSDIに完全に対応したソリューションを提供する。このソリューションは伸縮性があり、利用者のみならずINSPIREデータプロバイダとサービスプロバイダのニーズをサポートする。
本製品は、ArcGISのエクステンションであるArcGIS Server Geoportalエクステンションを含み、オープンソースとの互換性も高いため、拡張性も考慮されている。

おわりに:
EEAの今後とEsri社への期待

EEAの情報共有システムは日々進化している。ArcIMSで構築していたSEISをArcGIS Serverに移行する作業がほぼ終了し、安定性と開発性が格段に高まった。ArcGIS Serverになってからは、数時間に3万5千アクセスを受けても何の問題もない安定性を示した。
現在EEAのGIS部門で一番期待されているのが、ArcGIS Onlineだ。EEAの地理空間開発プロジェクトメンバであるジャン・ブリキ氏は、それをEEAのインフラに欠かせない存在だと語る。EEAは毎週のように膨大な量のデータを受信しているが、ArcGIS Onlineで整備すれば、それらのデータにヨーロッパ中の市民がアクセスできるようになる。コミュニティーメンバはテンプレートに独自のデータを書き込み、ArcGIS Online上にポストできる。ブリキ氏はこう締めくくった。「ArcGISOnlineはマップサービスを促進するだけでなく、今までできなかったマッシュアップを可能にする新しい手段だと認識しています。そこは世界中のユーザがデータを共有し、それぞれの環境が発しているメッセージを比較する場です。これからの地理情報共有サービスは、ひとりひとりの持つ情報を、世界中の人々が再活用できるものへと大きく変えていくのです。」
常に発展し続けるEEAのサービスは、今後の環境対策にどのような影響を与えるのか、世界中の期待がかかっている。

プロフィール


欧州環境庁 事務局長
ジャクリーン・マックグレード氏


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資料

掲載日

  • 2011年1月1日

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