事例 > 地すべり地形分布図データベースのインターネット公開

事例

地すべり地形分布図データベースのインターネット公開

独立行政法人 防災科学技術研究所

 

進化を続けるWebGISによるインターネット公開

利用者にとってより使いやすく、提供者側にとってより管理しやすいサイトを目指して。

 

地すべり地形分布図

nied-1
地すべり発生直後の写真
(澄川地すべり、1997年5月)

地すべりとは、斜面の一部あるいは全部が重力の影響によって斜面下方に移動する現象である。いったん動き出すとこれを完全に停止させることは難しく、広い範囲が地中深くまとまって移動するために甚大な被害を及ぼす恐れがある。日本は、地質的な脆弱さや梅雨や台風による多雨多湿な気候によって毎年各地で地すべりが発生している。なお、地すべり地形分布図では、土石流、落石といった現象も含む広義の”Landslide”ではなく、幅100m以上の斜面変動を最小単位とした狭義の「地すべり」を判読対象としている。

 

nied-2
地すべり地形分布図(暑寒別岳、第48集)

防災科学技術研究所で整備している地すべり地形分布図は、過去の地すべり変動によって生じた地形の形状を図示した地図である。一般に地すべりは同じ場所で繰り返し発生する性質を持つ。そのため、過去に発生した地すべり変動履歴の範囲を示した図は将来の発生場所や再滑動の可能性を検討する際に有用である。現状では将来を予測したハザードマップではないが、地すべり地形の危険度評価の基礎資料として利用可能な図面である。
地すべり地形分布図は1982年から整備が開始され、2010年12月現在、20万分の1図郭で残り16面となった。現在の予定では、2016年度までに完成予定である。形成された地すべり地形は数百年にわたり残るため、一度整備すれば長期的に利用可能な寿命の長いデータである。

地すべり変動によって生じた地形的痕跡を1970年代の4万分の1モノクロ航空写真の実体視判読によって抽出し、それを所定の凡例によって地すべり地形の分布と形状、開析度を2万5千分の1地形図上に書き写す。防災科学技術研究所で整備している地すべり地形分布図の特長は、この30年間同じ判読者が行っているため判読基準が一定であり、かつ年々その判読精度が上っていること、そして、ほぼ日本全国を統一された表現方法で網羅していることが挙げられる。

また、近年発生した大規模な地すべりなどは、現地調査を含めてより詳細な地図を別途作成することも行っている(2004年新潟県中越地震の斜面変動分布図など)。

 

WebGISによるインターネット公開

nied-3
地すべり地形分布図(ArcIMS版)

紙地図の地すべり地形分布図は、一覧性や自由に書き込みができるといった便利さがある一方で、GISで解析を行ったりインターネット上で公開するには不向きである。そこでGISでも活用しやすいベクタ形式でのデジタルデータの整備も行われるようになった。

そして2000年10月に、迅速、簡単にアクセス可能なインターネットの特長を活かしたWebGISによる公開を開始した。2010年10月で公開10年目を迎え、現在は、シェープファイル、KML、PDFでのダウンロード提供も行っている。

利用者層は、研究者、学生、建設コンサルタント技術者などの専門家はもちろんのこと、自宅の建つ斜面の状態を知りたい災害に興味を持つ一般の方まで多岐にわたる。

WebGIS公開当初はArcView IMSをエンジンとして採用し、2005年からArcIMSベースとなり、2008年にデザインの一新、パフォーマンス向上、機能の追加を行い、現在次のような機能を実装している。
任意の範囲の拡大・縮小、表示範囲の移動、各地すべり地形の属性表示、地図の印刷、表示レイヤの選択、地名検索、概観図表示、行政が指定している地すべり指定地の表示、代表的地すべり地の表示。
WebGISはベクタ データでの公開であるが、それと並行して、ラスタ データでの表示システムや、3次元表示システム(静岡、中越、八幡平、北松の4地域)も公開中である。

そして、2011年1月、ArcGIS Serverと、ArcGIS API for Flexを採用した新サイトが公開される。

ArcGIS Serverによる新WebGIS

ArcGIS ServerベースのWebGISでは、マップキャッシュの採用による描画パフォーマンスの大幅な向上、Flexによるフレンドリーなユーザインターフェイスなど、利用者にとっても使いやすくなっている。
ArcGIS Serverは提供側にとってもメリットが大きい。ArcGIS Desktopで複雑に作りこんだ凡例表現をそのまま利用できること、インストールの簡便さ、機能の開発や公開範囲の拡充といったメンテナンスのしやすさである。
担当の内山氏は、「外注せずに開発とメンテナンスが可能なため、導入から運用までのトータルコストの削減と障害対応の即時化、必要な機能を自分で追加できるフレキシビリティなど、運用安定性が高まりました。」と評した。

nied-4
地すべり地形分布図(ArcGIS Server版)

まとめ

自然災害情報室長の井口氏は、「道路、トンネルやダムなどの施設を作る際に、必ず参考にする基本的な地図として、地形図や地質図と同じようにこの地すべり地形分布図を基礎的なデータとして使って欲しい。防災にも役立つし、経費削減にもつながる。」と、地すべり地形分布図の今後の活用に期待をかける。

今後は、他の機関が提供しているWMSサービスと重ね合わせて表示する機能の追加を検討中である。さらに、現在別ページで公開している情報や、他部署で整備しているデータベースも一か所に集めるという構想もある。
こういったことが実現すれば、利用者自身が様々な地図を重ね合わせてオリジナルの主題図を作ることができるようになるだろう。

補足情報・関連情報

プロフィール


内山 庄一郎 氏(左) 井口 隆 室長(右)



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2011年1月1日

Copyright© 2002-2017 Esri Japan Corporation. All rights reserved.
トップへ戻る