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事例

急激に発展した都市特有の問題から市民の安全を守るためGISを導入

アブダビ警察

 

アラブ首長国連邦の首都が世界クラスのエンタープライズGIS構築に乗り出す

急激に発展した都市特有の問題から市民の安全を守るためにGIS導入を計画したアブダビ警察の最終目標とは。

イントロダクション

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アブダビ警察が作成した火事のシミュレーションで
煙が流れる範囲を予測する

アブダビ首長国は、アラブ首長国連邦(UAE)を形成する7つの首長国の内の1つであり、アブダビ市はUAEの首都でもある。ニューヨーク市マンハッタンを彷彿とさせる高層建築が立ち並ぶアブダビ市は立地的にもマンハッタンと似ていて、アラビア半島沿岸の島の上にある。かつては沿岸の町のひとつに過ぎなかったが、今や公園や木々が目を引く洗練された国際都市となった。しかし、驚異的な早さで発展した結果、アブダビ市は必然的に大都市特有の問題を抱えることとなった。例に挙げると、暴力事件の増加や安全なコミュニティ形成などで、これらは全世界的な問題にもなっている。
アブダビ警察(ADP)は、警察とそのサービスに対する市民の信頼を増すためには情報が必要不可欠であると確信している。ADPはGISを使い、よりよい意思決定に必要な人的リソースおよび業務の情報を1つに集約している。

アブダビ首長国の警察本部はより安全な社会を目指し、UAE内務省を通して他のUAE警察と協働している。ADPはアブダビ島、アルアイン市、郊外エリア、そして西部の4つの主要な地区の治安維持を担当している。ADPは、社会の要望に最高レベルの規律と訓練で応えることが可能な情報を活用し先を見越して行動する警察部隊の育成を目標としている。

新システムの開発

ADPは、UAE内務省大臣兼警察庁長官であるSheikh Saif Bin Zayed AlNahyan (シェイク・サイフ・ビン・ ザーイド・アル・ナヒヤーン)閣下の指揮により、2年以上に渡り、シンガポール、米国、日本、フランス、ドイツ、フィンランド、英国、オーストラリアを含む世界中の法執行機関を歴訪し、犯罪分析や公衆安全、保護、犯罪捜査、緊急時対応、さらには基幹業務における各国のGIS利用状況を調査し比較を行った。
その結論として、エンタープライズGISシステムを構築し、アブダビ首長国のみならずUAE全土の警察と公衆安全部隊で使用するという包括的で野心的な目標を持つに至った。ADPは、緊急時人材派遣対応、タスクフォース管理、指揮管理、自動位置追跡システムなどすべての警察サービスをサポートする現代的なGISシステムを構築するにはArcGISが理想的だと確信していた。
スタート時におけるこうした考えをもとに、GISセキュリティセンターが設立され、ADPやすべての危機管理部門のGISデータやアプリケーションの取り扱いについて責任を持つこととなった。
「われわれの目標は、情報や分析を必要とする人に素早く簡単に届ける効率的な方法を見つけることでした」センター長のMohammed Saleh Almansoori中尉は語る。
スタート時におけるこうした考えをもとに、GISセキュリティセンターが設立され、ADPやすべての危機管理部門のGISデータやアプリケーションの取り扱いについて責任を持つこととなった。「われわれの目標は、情報や分析を必要とする人に素早く簡単に届ける効率的な方法を見つけることでした」センター長のMohammed Saleh Almansoori中尉は語る。

センターが抱える課題の中には、適切な地図を探すこと、緊急時に一番近くて適任な警察官を探すこと、そしてすべての情報を他の警察署や複数の災害対応チームと共有すること、などがあった。「以前は、各警察署は別々のデータベースにあるデータを人の手で組み合わせて非常事態のレポート用の地図を作成していました。」ADPの指令室長であり効率的対応戦略目標のマネジャーであるSulaiman Al Maskari中佐は語る。アラブ警察のGISソリューションアーキテクトであるMohamed Bisher Bashaireh氏は付け加えて言う。「ADPは、長いこと使われていた色々なシステムからひとつひとつレポートを作成していました。人手を使い、すべてのスプレッドシートやマップレポートを見比べて、そこから活動可能な情報を作り出そうとしていたのです。この作業はとても時間がかかるものでした。」

これら人力によるデータ加工の問題を解決すべく、GISセキュリティセンターはEsriのパートナー企業であるEmerGeoSolutions社 (バンクーバー市)のソフトウェア「EmerGeo Fusionpoint」を使用した。このソフトウェアはArcGIS Serverが管理する中央GISデータベースと密接に連携している。加えて、GISセキュリティセンターの危機情報管理システムにはArcGISベースのソフトウェアが含まれ、旧来の凶悪犯罪用の指揮命令システム、緊急車両位置監視システム、有線テレビカメラによる都市部監視システム、大規模災害用の緊急時セキュリティ計画システム、派遣する専門家の情報を格納した人材管理システムの5つのシステムを統合した。

ADPはさらに、この野心的な目標に賛同したマサチューセッツ州のEMC社と共同してセキュリティの堅牢な最新鋭の警察GISクラウドシステムを設計した。次にEMC社がカリフォルニア州のVMware社に声をかけ、安全でスケーラブルな、緊急時にもアクセス可能で昼夜を問わず機能するインフラを共同で構築した。「GISセキュリティセンターは全国規模のソリューションの重要性を理解していました。」中央オペレーションの指揮者でありUAEのセキュリティGISプログラム導入に際して旗振り役を務めたAhmed NasserAl Raisi中尉は語る。「コミュニティと公衆の安全性を高めることができるからです。それが後にADPが連邦セキュリティプロジェクトに投資し、複数の警察署間や関係する連邦政府の諸機関とのデータ共有にてこ入れをすることに繋がったのです。」

目標の達成

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アラブ首長国連邦の首都である
アブダビ市の治安を守るため、
ADPはIT技術を最大限に活用する
方策を立てた

ADPが描いたビジョンの第一段階は現実のものとなった。今では完成した世界クラスの危機管理システムを警察と消防双方が利用している。このシステムによって効率的な情報の統合が実現し、かつて複数の独立した情報システムを使用していたスタッフが現在それを利用している。

新システムは大規模な自然災害発生時だけでなく、地震や工業地帯の火事、暴動など事件の大小に関わらず使用することができる。このシステムは、リスク評価、被害緩和、災害対応、復旧からなる危機管理のサイクルのすべての段階において利用できる。さらに、大規模な事件や事故が起こった後、状況認識統一(COP:CommonOperational Picture)のための地図を作成し、その機関が対応した効果がどうであったかを入念に評価することができる。その評価の際は、警察補助機関やUAE全土の警察署から基本となるGISデータを自由に手に入れることができるのである。

GISベースのソフトウェアにより、コンティンジェンシープラン(起こりうる不測の事態、特に最悪の事態を想定して立てる計画)の作成が可能になり、緊急用と通常業務用アプリケーション双方からのデータや処理を自動的に一つにまとめることができる。つまり必要とする人に、重要な作戦データについての一つの共通した認識‒COP‒を提供するのである。

さらなる発展への展望

今回このような堅牢なITインフラを構築したことは、ADPやUAE内の他の警察組織が将来プロジェクトを立案する際の大きな基盤となる。ADP治安維持司令部の役員会は、現在GISセキュリティセンターと共同して、警察タスクフォース管理に関する戦略的プロジェクトについての評価を行っている。プロジェクトは対応にかかる時間を短縮し、リソース計画を改善することを目標としている。将来的にはこの一大プロジェクトにより、システム利用者と意思決定者がデータを可視化し、リソースを効率的に配置し、利用できるようになるのである。
GISインフラの構築者でありADPのGISタスクフォース管理プロジェクトのプロジェクトマネージャであるMohamed TermahAbdul Rahim氏もこう述べる。「すでに準備されている安全なクラウド環境のおかげで、将来このプロジェクトを履行する際はスムーズにいくことでしょう。」

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掲載日

  • 2012年1月1日