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クラウドGISで市民参加の促進と行政サービスの質を向上、透明性のある地域社会へ

カリフォルニア州 グレンデール市

 

市民参加型で街を改善するための新しい仕組み「CitySourced」

道路の陥没や落書きなどの苦情は市民によって直ちに報告され、クラウド上でGISデータとして管理、公開されるサービスが提供されている。

イントロダクション

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カリフォルニア州グレンデール市では、
市民がスマートフォンで自治体に問題箇所
を報告、対応を依頼できる。

カリフォルニア州ロサンゼルスの郊外に位置するグレンデール市は、市民参加の促進や、庁内業務の効率化、そして市内の最新情報を蓄積し総括するのに最新の地理空間技術を活用している先駆的存在である。

最近では、米国Esri社のパートナーであるCitySourced社の最新技術を活用し、市民からの公共サービスの依頼をできるだけ自動化することで、能率的に市民参加の向上を促進するという、クラウドベースの市民通報プラットフォームを有する初めての自治体のひとつとなった。

同市は、本プラットフォームを一般市民がより直接的に行政サービスに参加できる仕組みづくりとして提唱される「Gov2.0」の一環として位置付けている。その戦略のひとつとして、市役所が市の現状を把握しやすいよう、監視システムを構築した。その代わりに、市は業務のさらなる効率化と、対応状況を市民が閲覧できる透明性を実現する。
市の監視システムは、スマートグリッドの観点から公共設備ユーザへ向けたスマートメーターの採用や、公衆安全を保障するための監視カメラなどからなる。その一方で、市民にもCitySourcedのモバイルアプリケーションを使い、スマートフォンで問題を報告することで、自ら監視者となることを呼びかけている。

 

導入手法とその効果

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住民はオンラインで問題を報告したり、他の
市民の報告状況を閲覧することもできる。

グレンデール市は、iPhone、 Android、BlackBerryなどの一般的なスマートフォンを利用して、市民が落書きや路面のくぼみ、壊れた街灯などの地域の問題を「現場で」簡単かつ効率的にレポートし、市に適切なサービス依頼をする仕組みができないか検討してきた。

CitySourcedのモバイルアプリケーションはGPSを利用したプラットフォームであり、市民は報告時に撮った写真を添付したり、カテゴリ分けしたり、コメントしたり、GPSの位置情報をつけて自治体に送信することができる。市民は市役所が自分の報告を受信したときと、依頼事項への対応が完了した際に確認のメールを受信できるだけでなく、他の市民が報告した箇所を地図上で閲覧できる。

グレンデール市はCitySourced社と協力して、適切な市民サービスが選定され解決できるよう、または報告した市民が進捗状況を確認できるように、従来のサービス依頼システムにCitySourcedシステムを統合することに力を注いだ。

そう遠くない将来に、これまでの全てのコミュニケーション手段とインターネットベースの方法に加えて、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器の利用がますます増加し、市民から自治体へのコミュニケーションや自治体業務に人気の手段として普及するでしょう。」と、グレンデール市のITディレクターで、Gartner社の州・地方自治体部門の前役員であるエド・フラガ氏は言う。

グレンデール市は、CitySourcedのサービスを始動させるのに3つの段階を踏んだ。1つ目のフェーズは、既存のサービス依頼システムと資産運用システムへの大規模な統合であった。そしてそれを市の部門長向けに公開し、プロジェクトへの後援と、フィードバック、及びバグ調査の協力を呼びかけた。

2つ目のフェーズでは、公開範囲を市の全職員に拡大し、発展的なフィードバックやテスト運用に活用された。

フェーズ3は、2010年10月の公式公開である。そこでは、市民もCitySourced.comにアクセスし、グレンデール市について検索したり、市内でレポートされた全ての事例について地図上で参照し、写真つきの詳細を閲覧できる。フェーズ3では、市のウェブサイト上に、市内の情報を集めてカスタマイズされた地図が公開された。

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シンプルなユーザインターフェイスは即座の報告に便利。

 

おわりに:職員の意識向上へ

グレンデール市職員たちは、CitySourcedという市民と市役所の新しいコミュニケーション手段を提案するにつれて、市民サービスの提供と地理的な分析との連携の必要性をより強く感じるようになった。

「GISは市職員にとって、分析ツールであり、これからの指針を考えるためのツールでもあります」とフラガ氏は言う。「GISと向き合えば向き合うほど、私たちはGISの未来への可能性を発見します。それは市民のためだけでなく、地域社会全体にとって有益なものとなるでしょう。」

GISは分析データの基盤になるとともに、市全体のサービスの向上に貢献しつつある。CitySourcedは、たとえ自治体の各部署がそれぞれの業務に特化していても、みな同じ地理/地形を共有し、同じように市民サービスを提供しているという意識を職員たちに芽生えさせた。

職員ひとりひとりが、お客様が直面している問題を適切に把握するためにも、他部署との調整が必要な時の迅速な対応にも、CitySourcedに上がってくる依頼に日頃から目を向けることが役立つだろう。

フラガ氏は今後の構想として、市民からの報告データのさらなる利活用を進めると同時に、最新のGISソフトウェアで、市民が壊れた電柱の修理依頼をスマートフォンでレポートするような仕組みを作りたいと考える。そして、該当する電柱の特定と、報告した市民への確認、並びに市の修理依頼といったプロセスをアプリケーションが自動で行えればと期待している。さらに、その電柱が私有地にあった場合でも、所有者の住民に知らせることを可能にしたいという。

グレンデール市がCitySourcedを選択した理由を聞くと、フラガ氏は次のように答えた。「市の従来のサービス依頼システムとGISを統合することで、利便性を劇的に高め、知識の共有や透明性を実現させるという我々のビジョンにぴったりだったからです。この試みは、自治体で業務が集中した時に、少ない時間で今まで以上に質の高いサービスを提供するために、GIS技術がいかに役立つかの証明になるでしょう。」

CitySourcedはグレンデールの他にもサンフランシスコやロサンゼルス等の自治体で多くの導入実績がある。現在はアメリカ国外の自治体と導入に向けて協議を重ねている。

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掲載日

  • 2011年1月1日