事例 > 新しいゾーニングコード(土地利用規制)作成で人口増加に対応。GISを都市計画に活用

事例

新しいゾーニングコード(土地利用規制)作成で人口増加に対応。GISを都市計画に活用

コロラド州デンバー市

 

デンバー市が新しいゾーニングコード作成で人口増加に対応

人口増加により既存のゾーニングが時代遅れとなっていたコロラド州デンバー市。GISを活用し、市民の声を反映させながら行ったまちづくりの成果とは。

イントロダクション

colorado-1
新しいゾーニングコードを使いArcGISで作成した地図。

自治体が発展しより良い形に変化するために、ゾーニング(土地利用規制)が行われる。ゾーニングとは、最も適切な場所に人口が集中するようにしたり、利用目的が確立している地域を保護・維持したり、将来に向けて望ましい土地利用の区分けをする事である。コロラド州デンバー市は約60万人の人口を擁し、10年以内にさらに10万人の増加が見込まれている。旧来の規制では対処しきれない街の発展と増え続ける人口に対処するため、市は新しいゾーニングコードを作り、地図を作成した。

新ゾーニングコード作成に向けて

デンバー市の元々のゾーニングコードは1956年に作られたため、今では時代遅れとなり、古い規制に従うのが困難になっていた。市民は古いゾーニングコードの修正を繰り返し求め、2009年、市長のJohn Hickenlooper氏は、新しいコードを作って地図にするよう市の地域計画開発局(CPD:Community Planning andDevelopment)に命じた。CPDには以前からGISアナリストが2人在籍しており、ArcGISソフトウェアも一式揃っていたため、この課題に対処する環境は整っていた。新コードは、市のプランナーおよび市長任命のゾーニングコード作成タスクチームが、市民の助言を受けながらデザインすることになった。

GISは新しいゾーニングコード作成の為にとても重要で、デンバー市全域のゾーニングコードの草案から最終成果物作成までのすべての段階において利用された。市には以前より、「デンバーGIS」というシステムがあり、重要な空間データと必要なすべてのソフトウェアを含めたフレームワークを提供している。ソフトウェアの中には、市の職員が利用可能な「Locate」、「View」、「Map」というマッピングアプリケーションが含まれている。加えて、CPDは2006年に、元々の紙のゾーニングマップをデジタルフォーマットに転換済みだった。もし紙のままであれば、新コードの設計はかなり困難だったに違いない。CPDのGISチームはこれらの入手可能なリソースを使い、市全域の土地の状態や重要な特徴などの確認をしたり、広範囲にわたるデータ処理や空間解析を行ったり、公聴会用に紙地図やポスターを作成したりして担当者をサポートすることができた。チームは草案のレイヤをジオデータベースのフィーチャクラスとして設計し整備した。また、デンバーGISの日々の更新は、Locate、View、Mapの各アプリケーション経由で行われた。

また、市民の閲覧用にWebサイトも作成され、草案のマップやPDF形式でダウンロード可能な参照用マップを自由に見ることができるようになった。GISテクノロジーとWebアプリケーションを利用することにより、市は新しいゾーニングのレイヤをデジタルで作成し、内部で確認してから一般公開することが出来るようになり、結果として透明性が増し、市民からのフィードバックも広く受け入れることができるようになった。

新しいゾーニングマップ作成の準備は、草案自体の作成よりもずっと前に開始していた。重要な基本レイヤの内のいくつかはすでにデジタルフォーマットになっていたが、新しいレイヤを数多く作成したり、他のデータベースから取り込んだりする必要があった。最初のステップは市内の各区域の状況をマッピングすることだった。区域の状況とは、道路網、建物の形状、区画の大きさ、そして土地利用の分布や密集度などを指す。地図作成チームは以前から保有していた高解像度の航空写真を含むGISデータを利用し、これらの区域の状況をマッピングした。新しいレイヤが作成されると、ArcGISでそれを評価、分析した。例を挙げると、市のプランナーは頻度分布ツールを使い、区画サイズの分布を評価し、それぞれのゾーンで適切な最小区画サイズを決定することが可能になった。

2つ目の新しいレイヤでは、以前カスタマイズしたゾーニングを保護する必要があった。この中には、新しい規制の適用除外となる古いゾーン、PUD (Planned UnitDevelopments:計画的一体開発)、またはPBG( Planned Building Groups:計画的建造物群)が含まれた。PBGのマッピングの際は、何千ものサイトプランの確認や個々の境界線のデジタイジングを行い、その後それぞれの品質チェックをする必要があった。これらの「手を付けてはいけない」エリアは、個々が持つ属性と一緒に新しいゾーニングコードのレイヤに合併された。

必要なデータを利用可能なデータ形式に変換した後は、デジタルと紙、両方の参照地図を作成する必要があった。マップはデンバー市内の11の地区評議会用だけでなく、78の統計区域用にも作成された。参照用地図には現在のゾーニング、概念上の土地利用と実際の土地利用、航空写真、道路の区分、区画の大きさ、そして世帯構成などの居住的特徴が含まれた。チームはこれらをチーム独自の参照用として使ったり、市民に向けて開催したワークショップで使用したりした。

新ゾーニングコードを反映したマップの作成

準備が完了した後、実際に新しいゾーニングコードのマップ作成が複雑さのレベルごとに行われた。複雑さのレベルは、現在の状態がコンセプトや土地利用の規制に沿ったものから追加の分析が必要なものまで様々だった。例えば、複数世帯や人口密度が高いゾーンとされているが実際は主に核家族で占められた地区であるとか、工業地帯が複数利用の住宅地帯に開発されつつあるなど、丁寧に調べる必要があった。CPDのGISチームは情報と地図を市のプランナーに提供し、プランナーは境界線の案に修正の線を引いて戻し、修正された線はチームがArcGISでデジタル化した。これらの境界線は次第に繋ぎ合わされ、市の新しいゾーニングレイヤとして完成した。

 

colorado-2
分析に使われた3つの主要なベースデータレイヤ。左から順に、
デンバーのコンセプト土地利用草案、現在の土地利用状況、古いゾーニングコード。

 

市民参加の重要性

市民の参加はCPDが提供するサービスの一つとして不可欠だ。新しいゾーニングコード作成のケースでは市民全員に、技術力の有無に関わらず参加してもらうことが特に重要だった。CPDは、まず一連の公聴会を開き、初期の草案を紹介し、市民が参加してフィードバックを行うことができるようにした。住民たちには居住する統計地区の草案の地図だけでなく、境界を算出した根拠となる参照用マップも提供された。住民たちは、変更案として地図にマーカーで線を入れたりコメントを記入したりした。また、コンピュータを使える市民は、新しいゾーニングコードのウェブサイト上で気になる地区を探したり、コメントを残したりすることができた。

草案作成の段階で、校正や改訂が幾度となく繰り返された。市のプランナーたちは住民たちや市の評議会、ビジネスコミュニティ、そして市の他部署の意見を考慮に入れた。GISチームは新しいレイヤ上で、幹線道路拡充などを決定する焦点となる地域の様々な空間分析を行い続けた。日々の更新がなされ、市のプランナーがLocate、View、Mapの各アプリケーションを使い変更点を再検討した。地形や建物形状のチェックは、編集がある度に行われた。

マップの完成

完成した新しいゾーニングレイヤは、120の新しいゾーン、43の古いゾーン、そして3,553の独立したポリゴンを含んでいた。デンバー市の新しいゾーニングコードは2010年6月21日、市議会にて満場一致で可決された。ArcGISのデータドリブン機能を使って作られた新ゾーニングマップは、現在デンバー市のWebサイトに掲載されている。

プロフィール



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2012年1月1日