13歳少年のエベレスト登頂に全世界が注目。
TwitterやSNSまで組み込んだアプリケーション「Live on Everest」とは。
ネパールでサガルマータ(空の女神)として知られる山、エベレストの征服を多くの人々が夢見る。幸運な登山家は勝利を示す標高8,848mの山の頂きに立つ̶少なくとも数分間は。しかし、13歳のジョーダン・ロメロのように世界中の視聴者を引き連れていくことが出来る者はほとんどいない。
2010年5月のある晴れた夜、マイナス18度以下の気温の中、ジョーダンは険しく危険なエベレスト登山の最後となる26時間の山頂へのアタックを開始した。カリフォルニア州ビッグベアレイクから来たこの少年は、世界最高峰の山の頂上に立つ最年少記録の更新が目前となっていた。
世界中の人々がEsri社提供のWebアプリケーション「Live on Everest」でジョーダンの旅に注目していた。彼らはジョーダンがエベレスト北東の峰を登るに連れてモニタ上のデジタルマップに赤い点が増えるのを見て、モニタに釘づけになった。それぞれの点は、彼の10分ごとの前進状況を表している。心臓の鼓動のようにゆっくりと脈打つ円は、最新の所在地を表している。地図に重ねられたのは「チーム・ジョーダン」のメンバーからのTwitter(ツイッター)のやりとりだ。チームのメンバーにはジョーダン自身、彼の父親のポール・ロメロ、育ての母のカレン・ラングレンが含まれ、頂上に近づくにつれてガイドのアンパサン・シェルパ、ラマダワ・シェルパ、ラマカルマ・シェルパが加わった。
ビッグベアレイクの小さな集落では、ジョーダンの学友であるナオミ・ネルソンの家で歓声が上がっていた。彼女も家族と一緒にマップ上の点を追っていたのだ。5月22日の現地時間9時45分、赤い点が頂上で点滅しているのを見て、彼女はジョーダンの夢が実現したのを知った。「マップ上のジョーダンを、両親と姉と一緒にずっと見ていたんです。彼が頂上に着いた時は、みんな大興奮でした。」中学一年生のナオミは語った。他にも大勢が見ていた。エベレスト中継の視聴者数は、登頂当日には18,000人にまで急上昇した。
Esri社提供のWebアプリケーション「Live on Everest」経由で、
世界中の人々がジョーダンの冒険をたどることができた。
「テクノロジが人命を守っているという事を実感しました。僕たちのチームは安全でいられたし、救助隊や友人、家族までとも連絡をとりつづけることができました。」6月に家に戻った後、ジョーダンは「Live on Everest」について語った。「信じられないくらいの反響でした。僕たちは、おそらく最もプロフェッショナルで最も人に見られたエベレスト遠征隊として称賛されたんです。」
チーム・ジョーダンのオンライン投稿は、彼らの旅行体験の数々を記録していた。ジョーダンがネパールのカトマンズの通りを歩く最初の興奮をツイートと写真がとらえている。それから投稿の内容は安全な装備や食糧補給のたびに変わっていった。山に入ると、ジョーダンは料理人のクマールだけではなく3人のシェルパについても書いた。そして山に忠誠を誓う伝統的な登山前の儀式にチームが参加すると、掲載内容は厳粛なものになった。その後に掲載された個々の写真は、巨大なパーカや帽子、グローブ、そしてゴーグルで誰だか判らなくなった。更に酸素マスクが追加され、山頂に近づくにつれてツイートは短く、間隔も開きがちになった。
アプリケーション「Live on Everest」は、様々なオンライン情報と地理的な情報を一つの画面にするためにEsri社のArcGISテクノロジを使って作られた。ほぼ生中継で居場所を表示するマップとTwitterのつぶやき機能に加え、このアプリケーションはチームのFacebook (フェイスブック)*のブログやFlickr(フリッカー)** の写真などのソーシャルメディア情報を一つにまとめて表示した。「Live on Everest」の訪問者は、現地の天気予報にアクセスしたり、日々の進んだ距離と標高を表示する地形断面図を調べたり、登山ルート脇の景色を見たりすることができた。
「こんなに遠く離れているのに世界中の人たちが僕らのすることを全部見ているっていうのはすごく素敵な気持ちでした。」ジョーダンは言った。「家族やファンの人たちが僕らと繋がっていると思うと元気がでました。僕たちの冒険が、さらに誇らしいものになったんです。すごい感じ、月にいるのにみんなが僕たちを見ているって感じに近いかな。」
ArcGIS API for Microsoft Silverlight/WPFを使って作られた「Live on Everest」のビューワは、チームが最後に投稿したGPSの位置まで自動的に案内し、同時にチーム・ジョーダンやほかの人がソーシャルネットワークで何を話しているかを見ることができた。天気予報や地形モデルなどの教育的な機能も付け足すことができた。
完成したビューワのおかげで、チーム・ジョーダンはたくさんの教室や家庭で紹介された。ジョーダン自身の学友たちもWeb上で毎日彼をチェックした。ビッグベアレイク中学校で一年生に歴史と英語を教えるジェニー・マッコイは、「Live on Everest」を毎朝クラスの大きなスクリーンに投影した。何かを成し遂げるために目標に向かって努力し続けることの大切さを生徒たちに伝えたかったのだ。「生徒たちは、実際に知っている人間が大きな目標を立ててびっくりするようなことを成し遂げるのを目の当たりにしたのです。」マッコイは語った。
「Live on Everest」アプリケーションは、ほぼ生中継でチームの居場所やTwitterのつぶやき、
そしてチームのFacebookブログやFlickrの写真などのソーシャルメディア情報を表示する。
「このテクノロジを通して僕を見た子供たちの何人かは僕に触発されて、実際になにか大きな目標に向かって行動を起こすようになるかもしれないですね。」ジョーダンは言う。実際、学友のナオミ・ネルソンは、山に登りたいとは思わないと話しながらもこう言った。「ジョーダンにエベレストが登れるなら、私だって何かを成し遂げられるはずよ。例えば超音波技師になるとか、サッカーを一生懸命練習してMVPをもらうとか。」
13歳の少年による偉業の達成は、最新のテクノロジの助けを借り世界へ喧伝され、同世代の子供達へ大きな夢の達成へのモチベーションを与えて止まない。
*Facebook(フェイスブック):世界最大のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。
**Flickr(フリッカー):オンラインの写真共有サービス。ユーザは撮影したデジタル写真をFlickr のサーバにアップし保存・管理できる。公開された画像は誰もが閲覧可能。