課題
導入効果
半田市 税務課の皆さん
半田市は愛知県知多半島の中部に位置する人口 12 万人の街である。童話「ごんぎつね」の作者である新美南吉のふるさとであり、お酢で有名なミツカンが本社を置く街でもある。
半田市総務部税務課(以下、税務課)では、業務委託費用の最適化や庁内に存在するデータの有効活用など様々な課題が存在していた。ArcGIS を導入することで業務委託の内容を見直し、委託費用の削減を行った。
また庁内におけるデータ活用にも取り組んでいる。現在では他部署からも GIS データの作成依頼があり、日々の業務の中で有効かつ効果的に ArcGIS を利用している。
税務課では、土地に対する課税額を決定するために現況確認図を使って現地調査を行っている。現況確認図の作成は 2017 年(平成 29 年)度まで業務委託として行っていたが、成果品の品質向上や、業務にかかる費用の透明性など、課題があった。課内にはもともと固定資産業務専用の GIS が存在していたが、データを閲覧するためのみに使用しており、データの利活用はほとんど行われていなかった。
ArcGIS を知ったのは、2017 年 10 月に東京で開催された自治体向けの情報システムイベントであった。展示ブースで ArcGIS 製品のデモや事例紹介の展示を見学した。それまで GIS は情報を閲覧するだけのものだと思っていたが、庁内のデータと合わせてうまく活用すると「情報をつくる・見せる」ことができると感じた。そして、全世界で 100 万人もの人が使用しているソフトウェアなら自分でも活用できると確信した。具体的なデータ活用としては、固定資産データを GIS 上で分析すれば、土地の評価額を算出する上での各種補正の見直しや、地価変動の原因分析を行うことで、評価精度の向上に活用できると考えた。
さらに、ArcGIS を無償で使い始めることのできる、自治体 GIS 利用支援プログラムの存在が大きかった。このプログラムを知り、すぐに参加申し込みを行った。プログラムに採用されたことで初年度の費用が掛からず ArcGIS を導入することができた。
また、このプログラムには、ライセンスだけではなく、GIS の技術を習得するためのトレーニングや QA サポートが付属している。その他にも、操作手順を記した各種マテリアルが ESRIジャパンから提供されており、チャレンジしやすい環境が整っていた。そのため、初めて触る ArcGIS にも不安を感じることなく始めることができた。
税務課では現地調査を行った上で固定資産評価額を算出し、課税標準額を決定している。ArcGIS で最初に行ったのは、この現地調査で使用する現況確認図の作成である。
地図の作成に必要な技術は自治体 GIS 利用支援プログラムに付属しているトレーニングで学んだ。トレーニングの内容は職場に戻ってからの業務にすぐ活かせるものであり、今では 1 日あれば職員自身で現況確認図を作成することが可能となった。
ArcGIS の導入により、現況確認図の作成において、色味の細かな設定や図面上に重ねたい要素の選択、そして外部データを用いた表現も職員自らの手で行うことができるようになった。そのため、本当に利用したい地図を、試行錯誤しながら効率的に作成できるようになった。
これにより、委託内容の見直しを行うことが可能となり、ArcGIS 導入年度の 2018 年(平成 30 年)度のみで約 3 割の委託費用を削減することができた。
また、地図を職員自身の手で作成、編集ができるようになったことで、課税情報などの個人情報を含むデータも利用して解析を行えるようなった。例えば不動産鑑定士に対して土地の鑑定評価を依頼する際に、個人情報を含む転入者のデータと、オープンデータ(国勢調査)である高齢者のデータを半田市の地番図に重ねて将来的な人口分布を割り出した地図などを作成し提示した。オープンデータを使用したことで、鑑定価格に関する説明を受ける際に、統計データを用いてわかりやすく説明してもらえるようになるなど、副次的な効果もあった。
その他にも、年度別建築数を地図上に可視化し、現在半田市の建物がどのエリアに多く建築されているのか可視化できるようになった。この資料は地価の変動を検証するための資料として業務の中で使用している。
今後 IoT や 5G 等テクノロジーの発達によってビッグデータを扱いやすくなり、GIS をさらに有効活用できる時代がやってくる。半田市でも統合型 GIS が導入され GIS に対する関心が高まりつつある。税務課で作ったデータやマップを庁内の他部署にも展開し、やがては部署の枠組みを超えて共有できるようになり、GIS が当たり前に使える環境を作っていきたいと考えている。
また、世間一般に広く GIS を広めたいとも考えている。今後は半田市民が GIS に触れる機会も増えていくと思うので、災害時の情報公開等、街を良くしていく活動に GIS を利用していきたい。