事例 > 2022 年「地理総合」必修化に向けた 産学官連携から考える GIS 教育の授業実践モデル

事例

2022 年「地理総合」必修化に向けた 産学官連携から考える GIS 教育の授業実践モデル

桐蔭学園(中学校・高等学校・中等教育学校)

 

社会とつながるキャリア教育を実践した探究「未来への扉」
GIS ゼミ

概要

桐蔭学園は 1964 年(昭和 39 年)に設立され、一人ひとりが変化の激しい多様な社会にしっかりと適応し、自らの人生を切り拓くための自立的学習能力の育成に力を入れている。アクティブラーニング(以下、AL)研究の第一人者である桐蔭学園の溝上理事長(元京都大学教授)の教育モデルを実践し、全国の AL 型授業のフロントランナー校として、自ら考え判断し行動できる人材の育成を目指している。高校 1 年次から 2 年次の 2 年間で様々な角度からの分析や問題解決方法など一生涯使える力を身につけるため、大学のゼミのように各専門教員の分野で研究する授業、探究「未来への扉」を 2018 年(平成 30 年)にスタートした。

桐蔭学園で地理を担当している石橋教諭は、2022 年(令和 4 年)から高校必履修科目となる「地理総合」の授業実践モデルを作成するために GIS ゼミを開設した。2 代目 GIS ゼミ(高校男子部 16 名)では、東京大学・横浜市青葉区・ESRIジャパンの産学官と連携して「GIS × 防災教育 × 健康 = 健康のことを考えながら楽しく防災について学ぶ」教材を作成した。この教育活動が評価され、2019 年(令和元年)度の初等中等教育における GIS を活用した授業に係る優良事例表彰で「日本地図センター賞(地図の効果的な活用の観点)」受賞した。さらに、第 25 回神奈川県高等学校社会科研究発表大会で「教育長賞」を受賞(優勝)し、神奈川県の代表校として全国大会へ出場を決めた。

課題

桐蔭学園は中学・高等学校を合わせると生徒数が 5,000 名程度、地理科教員だけで 17 名もいる大規模校である。GIS 教育を校内で普及させるには、石橋教諭一人だけが GIS 教育を学んでそれを教えるには限界があり、GIS の専門家から地理科教員に向けて理解しやすい GIS 教育を指導してもらう必要があった。校内では全教室に Wi-Fi 環境が整備され、ICT 教材を活用した授業を行っていること、探究「未来への扉」を高校 1 年次から 2 年次の授業で実施していることから、石橋教諭は桐蔭学園の教育環境に適した GIS 教育の授業実践モデルの構築を目指した。石橋教諭は GIS 教育を提案するにあたり、「生徒も教師も楽しくて深く考えたくなる授業」をキーワードに掲げ、GIS のスペシャリストでなく、どんな教師でも実施可能な授業で、地方自治体や大学と連携して様々な地域でも凡用性がある GIS 教育の授業実践モデルの構築および普及を目指している。

ArcGIS 活用の経緯

石橋教諭は学生時代から親交のあった元慶應義塾普通部の太田教諭の紹介で、G 空間 EXPO2017 の Geo エデュケーションプログラムで ESRIジャパンが実施する GIS ワークショップに参加した。そこで GIS の専門家から無償でサポートが受けられる ESRIジャパンの「小中高教育における GIS 利用支援プログラム」(以下、支援プログラム)を導入している大阪府立岸和田高等学校の上田教諭に導入事例を伺い、GIS 教育を桐蔭学園で普及させるために支援プログラムの導入を考えた。その後、ESRIジャパンが主催した GIS 勉強会に参加し、製品特性を理解した上で、支援プログラムの導入について校内で議論し、2017 年(平成 29 年)12 月より桐蔭学園で導入することになった。

課題解決手法

GIS 教育の授業実践モデルを考案するため、石橋教諭は 2018 年 5 月に初代 GIS ゼミ(高校女子部 2 名)を開設した。そこでは東京大学や慶應義塾大学、東京都町田市、町田地域子育て相談センター、神奈川県立こども医療センター、ESRIジャパンの産学官と連携し、町田市における子育て支援のあり方について研究した。
GIS ゼミは生徒たちの居住地域を中心に、SDGs の目標を軸として、教育・福祉・環境・交通・街づくり・防災の中から興味のある分野を選び、GIS やスマートフォンのアプリなど最新のデジタルツールを活用して地域研究を行っている。そして、産学官との連携を通じて社会とのつながりを意識し、キャリア教育の礎となるゼミを目指している。

探究「未来への扉」が開始した際に、初代 GIS ゼミの研究ノウハウを継承し、2018 年 9 月には 2 代目 GIS ゼミを開設した。東京大学・横浜市青葉区・ESRIジャパンの産学官と連携し、地理総合の 3 つの柱である GIS・防災教育・グローバルを踏まえた、「GIS × 防災教育 × 健康 = 健康のことを考えながら楽しく防災について学ぶ」という教材を作成した。

2 代目 GIS ゼミでは簡単にアンケート調査票の作成・集計・解析が可能な Survey123 for ArcGIS を活用して、桐蔭学園の所在地である横浜市青葉区の健康と防災教育に関するアンケート調査を実施した。また、横浜市青葉区が GIS を活用して作成した「青葉ウォーキングコースマップ」を利用して、その利用状況と災害時に備えた防災教育についてフィールドワークを行った。その結果を基に桐蔭学園周辺に居住する幼児と保育施設・地域防災拠点との相関関係などの GIS マップを作成および分析した。さらに、大学・大学院生の GIS の応用研究を生徒に紹介し、高校で学んだ GIS が大学・大学院の研究と連動性があることを気づかせた。

学外ではゼミ生が東京大学空間情報科学研究センター「ひらめき☆ときめきサイエンス」、慶應義塾大学 SFC 未来構想キャンプ「防災ワークショップ」、竹中平蔵氏の世界塾「世界を知るサマースクール in 香港」などのワークショップにも参加し、地理総合の 3 つの柱となる GIS・防災教育・グローバルについても学ぶ機会を得た。
また、2019 年 9 月には高校 1 年生向けに 3 代目 GIS ゼミ(高校共学アドバンスコース 20 名)を新たに開設し、GIS 研究で蓄積された授業実践モデルを中学・高等学校の地理の授業でも実践している。

桐蔭学園周辺に居住する幼児と保育施設・地域防災拠点との相関関係
桐蔭学園周辺に居住する幼児と保育施設・地域防災拠点との相関関係

効果

GIS を活用した授業実践モデルの実施により、生徒が目標としている大学や企業、官庁の人々と研究を通して交流できたことでキャリア育成につながった。さらに、GIS 教育の授業実践モデルが外部機関からも評価された。

石橋教諭・GIS ゼミの受賞歴
初等中等教育における GIS を活用した授業に係る優良事例表彰

今後の展望

石橋教諭は「地理総合の GIS 教育で、どのような力を身につけて欲しいか、学内外の地理科教員たちと協力して GIS 教育のルーブリック(評価基準)を確立したい」と語った。2022 年から始まる「地理総合」に向けて、GIS 教育の授業実践モデルの精度をさらに向上させ、全国の中学校・高等学校に普及させたいと考えている。

プロフィール


桐蔭学園高等学校 地理科 石橋 生 教諭
(最後列左から2番目)と高校男子部 GIS ゼミの
皆さん、東京大学 小口 高 教授ら



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2020年1月7日

Copyright© 2002-2020 Esri Japan Corporation. All rights reserved.
トップへ戻る