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GIS で高速鉄道公社が数百万ドルを節約

サンフランシスコ・ベイエリア高速鉄道公社 (BART)

 

本記事は、米国Esri社の事例「Quick Learner Saves BART Millions of Dollars」を翻訳したものです。

サンフランシスコ・ベイエリア高速鉄道公社(Bay Area Rapid Transit 、BART)の情報システム担当マネージャであるトラヴィス・W・イングストローム氏は、6 人の兄弟と旅行好きの警察署長の父という家庭で育ち、幼い頃から自立心が養われていた。その自立心で、彼は働き始めた当初から仕事に打ち込み、大規模なプロジェクトを任せられるほどになった。最終的に BART GIS の見直しを行うこととなる彼のキャリアパスは 1999 年にスタートした。

同年、カリフォルニア州レイクポート市は、助成金を使い導入したコンピュータとソフトウェアを使用して GIS を新規導入するため、イングストローム氏を雇用した。氏に与えられたのは、市内の上下水道および雨水排水設備をマッピングする役割だった。彼には GIS の知識も経験もなかったが、張り切って業務に取り掛かった。

イングストローム氏は、5,000 人の住民からなるコミュニティ全体の上下水道および雨水排水管の見取り図を 3 カ月で完成させた。氏はこの取り組みの中で、ArcPad 対応の GPS 受信機を使用し、総延長 62 マイルを超える道路すべてを徒歩で回り、すべての公共設備データの保存を手動で行った。

イングストローム氏はその後南アフリカのダーバンにある非営利団体で働き、設備が不十分な中で専門知識を応用し、GIS を使いボランティアと救援活動を組織した。氏は Esri 人口統計データツールを使用して分析を行い、120 人のスタッフを管理しながら ArcGIS でマップを作成した。


ArcGIS Online で構築されたマッピングシステムは、BART 内すべての部署のニーズに応えるものだ

「私が所属した団体の活動の要は GIS でした」イングストローム氏は語る。「業務に集中するために地理空間技術を使用し、助けが必要な人々を見つけ出し、福祉サービスの割り当てを計画しました。この素晴らしい経験のおかげで GIS の創造的な使いかたが身に付き、後に大きな収穫を得ることになったのです」

コンサルタントとしての活動

イングストローム氏は、カリフォルニア大学バークレー校で法律学を学ぶかたわら、ノース・スター・プレサイション・マッピング社で GIS コンサルタントとして働いた。氏は 10 年間にわたり、1,000 を超える自治体へのコンサルティングと職員訓練を組み合わせて実施した。その仕事は時に骨が折れるものだった。多い時には月に20〜30回のトレーニングセッションを行い、GISサービスをすぐに始める方法から資産の効率的な管理方法まで、あらゆることについての教育を行った。同時に、彼は南西部に多数あるネイティブアメリカンの部族政府でも、ゼロからの GIS 構築を行っていた。

そのころには家庭を持ち 2 人の息子がいたイングストローム氏は、家族から離れて各地を転々とし、週末にも仕事をする生活に嫌気がさしていた。北米で最先端の公共交通機関の 1 つである BART が GIS の全面的な見直しを行うことになった時、彼はそのチャンスに飛びついた。

BART

2011 年、BART はエンタープライズ GIS のパイロットプロジェクトを立ち上げるべく、専門サービス企業 ユニバーサル・フィールド・サービス社に依頼した。イングストローム氏の実績と GIS 構築を成功裏に行える能力を十分に認識していた同社は、彼を BART に紹介した。新しい職場はベイエリアの自宅から車で行ける範囲内にあり、氏にとって申し分なかった。BART のニーズを総合的に評価し、路線全体の長期的なエンタープライズ GIS 戦略を策定するまでのたった10か月の契約にすぎなかったが、素晴らしい成果を上げるチャンスだと彼は思っていた。

「BART が私に依頼したのは、ROI(投資収益率)の本格的な分析を行うために必要な、予算に関する提案、人員配置に関する提案、およびビジネスケースの作成でした」とイングストローム氏は言う。「PoC(概念実証)が成功すればその後の努力は惜しまない、と BART の人々が言うのを聞き、このプロジェクトの成功を確信しました。今までの職務経験から、短期間で十分に実証できると分かっていましたから」


BART の線路や駅周辺の住宅密度を表す 3D マップ

革新的なエンタープライズソリューションの開発権限を BART から与えられたイングストローム氏は、任務を精力的にこなした。BART が IT 部門の管理ポストを公募した時、彼は応募し、採用されて、晴れて職員となった。

「多言語」問題

3,200 人の職員、総延長 103 マイルにも及ぶ路線、および 44 の駅からなる BART には、いくつかの重大なコミュニケーションの課題があった。最大の障害の 1 つは、部署間で専門用語の統一がなされない状態が長期間続いた結果、各部門内で完結する縦割り業務となり、他部門との情報共有がされていないことだった。部署ごとに独自の用語を使用していたため、情報の伝達が妨げられ、統合化したマッピングが不可能になっていたのだ。

イングストローム氏が採用された当時、BART で使用している主なマップは、利用者の行先確認用の単なる路線図だった。どの線が地域のどのあたりを走るのか、住民が確認できるようなマップは無かったのだ。路線図は、縮尺や路線の走る向きを考慮せず、駅同士を直線で繋いだものだった。イングストローム氏の最初の大きな成果は、路線の中心線、マイル標、主要施設など、システム全体の正確な地理的位置を含む統一されたマップを作成したことだった。このマップが部門間の情報を統一する鍵となったのだ。

「この最初のマップが完成したことで、部署ごとのニーズに応じてオンとオフを切り替えられるレイヤーを使用した包括的なビューを作成できることが明らかになりました」とイングストローム氏は言う。「言語を統一することで、すぐさまシステムを一本化するための主要な決断が下りはじめました」

ROI 測定後の経済的効果


BART ネットワークの内、30 マイル以上を地下鉄や海底トンネルなどが占める

当初は GIS の個人請負人として雇用されていたイングストローム氏だが、最終的には BART が GIS 請負業者から自立する手助けをする、という皮肉なことになった。氏によるエンタープライズ開発以前は、法定義務により路線周辺の人口統計を把握する費用のかかる調査を行うため、コンサルタントが雇われていた。南アフリカでも人口統計分析の業務経験があったイングストローム氏は、Esri Community Analyst を使用し、同じ調査を行った。Community Analyst を使うと、以前に外部委託していた時よりも優れた人口統計レポートが作成できるだけでなく、ArcGIS システムに統合されているため、BART が生成する地図ベースのレポートに人口統計情報を簡単に入れることができた。

BART の予算の内、かなりの部分が老朽資産交換プログラムに費やされており、その中にはオークランドとサンフランシスコを結ぶ海底トンネルの水中インフラを交換するダイビングチームも含まれる。海中設備のメンテナンスを行うには、手動で検査し修理を行うため、ダイバーを派遣する必要があったが、位置情報技術による支援がほとんどないため、作業にはかなりの時間と費用がかかっていた。

「AutoCAD による地下トンネルの図面を GIS に変換し、そのデータを既知の調査記録と照合し、検査および交換が必要な箇所を正確に示す GPS 座標をダイビングチームに装備することができました」とイングストローム氏は語る。 「それだけで 80 万ドルの節約になりました」

その後の分析で、5 年以内に BART のエンタープライズ GIS は 660 万ドルの正味現在価値を生み出すことが明らかになった。こうした数値実績および数値予測から、BART には常設の GIS チームが設けられることとなった。また、BART は組織的観点からも大転換を余儀なくされ、基本的に GIS をエンタープライズの要とするとともに、イングストローム氏の任務に高度なテロ対策アプリケーション構築とサイバー防衛が加えられた。氏が BART の GIS プロジェクトを再編したことで、100 を超える他の主要プロジェクトが生まれ、その結果、BART が使用するすべての Esri ソフトウェアに対し、新たにエンタープライズライセンス契約が結ばれることとなった。

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掲載日

  • 2019年7月17日

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