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事例

2022 年地理必修化に向けた高等学校教育における GIS の活用事例

千葉県立千葉高等学校 ・ 大阪府立岸和田高等学校 名古屋市立若宮商業高等学校 ・ 兵庫県立尼崎小田高等学校

 

授業から課題研究まで、多様な学校環境・教員・生徒に求められている GIS とは?

概要

次期高等学校学習指導要領において、地理科目が 2022 年に必修科目となることが決定した。これまでは世界史を必修科目、日本史・地理を選択科目としていたが、日本史と世界史を融合させた「歴史総合」と「地理総合」になる予定だ。また、「地理総合」では「地図と地理情報システムの活用」を 1 つの柱としている。ここでは ESRIジャパンの「小中高教育における GIS 利用支援プログラム」を導入し、先進的に授業や課題研究で GIS を活用している 4 校の事例を紹介する。

地理 A でのデスクトップ GIS 導入の実践

千葉県立千葉高等学校

千葉高校:授業風景
千葉高校:授業風景

千葉高校は、生徒全員へ研究を課した「千葉高ノーベル賞」という活動など主体的な学習を実践している。小林先生は前任校でも選択授業で GIS を取り入れており、千葉高校では地理Aの授業(1 クラス 40 名)で GIS を活用して 1 人 1 つの主題図を作成し、1 分間の発表を課題とした。まず、GIS の概要について学び、PC 教室でオープンデータを利用して ArcGIS Desktop の演習を行った。千葉高校では PC 教室のすべての端末に ArcGIS がインストールされている。生徒たちは自由にテーマを決め、各自で主題図の作成に取り組んだ。以下に、テーマ例をいくつか紹介する。

【テーマ例】

普段の授業に GIS (=地理的機能)を取り入れることによって生徒の地理的な思考力(地理的な見方・考え方)が高まったと小林先生は実感されている。また先生は千葉県高等学校教育研究会の地理部会でも GIS の勉強会や実践例の共有を実施しており、今後はさらに県内の多くの高校で GIS の導入が進むようコミュニティを作っていきたいと語る。

地域課題を ArcGIS Online で発信

大阪府立岸和田高等学校

岸和田高校:校内課題研究発表会の様子
岸和田高校:校内課題研究発表会の様子

岸和田高校は文科省より「スーパーサイエンスハイスクール (SSH)」、大阪府より「グローバルリーダーズハイスクール (GLHS)」の指定を受けており、サイエンス領域の未来を拓くグローバルリーダーの育成を目標としている。その一環として、文理学科の必修科目「文理課題研究」において、GIS を取り入れた授業を実施し、研究成果を ArcGIS Online で公開している。
担当の上田先生は GIS を扱った経験はなかったが、地理総合必修化を見据え、講習会やイベント等へ積極的に参加し操作方法を身に付けることで、いちはやく GIS を授業に取り入れた。岸和田高校は関空に程近く、インバウンドの増加などグローバル化の波を肌で感じることが多いが、こうした時代にあえてローカルな課題に目を向けることができる人材こそグローバルリーダーであるという先生の思いから、GIS を活用した地域に関する研究を行っている。1 年間の授業の中で、泉州地域が抱える待機児童問題や医療機関へのアクセスの問題などを可視化した Web マップを、生徒自身が ArcGIS Online で作成し、研究発表会で地域住民に対して説明を行った。その授業内容は地理情報システム学会の「初等中等教育における GIS を活用した授業にかかわる優良事例」として選出されている。
今後は近隣の大学や地域住民との繋がりをより深め、GIS を活用した課題研究の成果を地域社会に還元していきたいと上田先生は語る。

地域の活性化に向け、観光分野で GIS を用いた情報発信

名古屋市立若宮商業高等学校

若宮商業高校:名古屋城周辺の現地調査風景
若宮商業高校:名古屋城周辺の現地調査風景

名古屋市では名古屋城の木造復元が決まり、2022 年 12 月完成を目指して準備が始まった。今後、駅周辺の開発や、地域の活性化が進むことが期待されている。そんな中、若宮商業高校の平田先生は総合ビジネス科観光ビジネスコースで GIS を活用できないかと考えた。
NPO 法人ビジュアルコンテンツプロダクトネットワークの協力を得て、江戸時代、明治・大正、昭和 33 年の詳細な古地図を利用し ArcGIS Online で現代と過去の様子が分かるアプリケーションを作成した。その後、名古屋市内に残る昔のなごりを歴史観光マップにした。また、現地調査アプリケーションである Survey123 for ArcGIS を使って Instagram で話題となっている外国人向けのレストランマップを作ったり、PTA 研修旅行で保護者と共にデータ収集を行ったりとさまざまな用途で GIS を利用している。
現在、生徒は主にスマートフォンでデータを収集し地理情報の可視化を行っているが、今後は集めたデータの解析・分析まで行いたいそうだ。教員・生徒も含め、観光分野での GIS の活用・重要さを感じているという。

地域コミュニティと取り組む 防災教育

兵庫県立尼崎小田高等学校

尼崎小田高校:授業風景
尼崎小田高校:授業風景

尼崎小田高校は「サイエンスリサーチ科」、「国際探求学科」、「普通科」、さらに普通科の中に「看護医療・健康類型」があり、2 年次で全員が調査研究・報告活動を実施する。「看護医療・健康類型」は 2016 年から「防災・減災―地域コミュニティづくり、高校生にできること」というテーマで取り組みを始めた。その取り組みの過程で「 GIS 」にたまたま出会うことができた。2017 年は GIS を使って地域住民と「災害図上訓練」を行い、地域情報を入力した後、生徒が住民一人一人の自宅周辺を散策し、その住民向けの防災マップを作成した。また、GIS 機能を使用し、尼崎市の地図上に指定避難所、福祉避難所の位置情報、地区ごとの災害時要支援者の人数などを入れ、福祉避難所の指定場所が少ない地区を浮かび上がらせ、市の福祉課と協力し、施設に福祉避難所への協力の呼びかけも行っている。 2017 年には普通科の調査研究活動にも一部導入を試みた。今後は地理や理科の教科、教科横断的な調査研究に導入し、それに合わせて、教員の GIS スキル向上もさせていこうとしている。

今後の展望

授業での GIS 活用には学校の ICT 環境の差異や、教員側の GIS の理解やスキルなど、多くの課題が挙げられる。それぞれの学校環境・生徒・教員に合った GIS を柔軟に考えていく必要があるだろう。ESRIジャパンでは、初等中等教育における空間的思考力を養うさまざまな取り組みを支援するため、ArcGIS 製品と指導者向けのトレーニングを合わせて無償で提供している。今後、地理必修化に向け、小中高の授業での GIS の活用と教員の GIS スキルの習得を支援していきたい。

プロフィール


千葉県立千葉高等学校
小林 岳人 教諭

大阪府立岸和田高等学校
上田 聖矢 教諭

名古屋市立若宮商業高等学校
平田 真治 教諭

兵庫県立尼崎小田高等学校
福田 秀志 教諭、難波 滋 教諭


関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2018年2月16日

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