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事例

オープンガバメントを目指し、先進的なデータ活用に ArcGIS プラットフォームを利用

神戸市 企画調整局

 

データと GIS の活用による市民サービス向上、業務効率化への取り組み

ArcGIS プラットフォームの特徴

  • 全庁的な ArcGIS 活用と、部署間の GIS データ共有
  • イベント情報を API で取得し、ストーリーマップで公開
  • 庁内で蓄積されたデータをオープンデータとして公開

概要

埋設状況
六甲山から望む神戸市の夜景

神戸市は兵庫県の南東部に位置し、大型船も航行しやすい神戸港を有することから古くから栄え、近代では貿易、鉄鋼、造船などを中心とした産業が発展し、国内で 6 番目の人口を擁する都市である。また近年では 1995 年の震災後の鎮魂と追悼を祈念して始まった神戸ルミナリエ、摩耶山掬星台から望む日本三大夜景をはじめ、有馬温泉、異人館街など数多くの観光スポットがあり、観光産業も盛んである。 神戸市では、ICT を活用したオープンガバメント社会を構築し、市民サービスの向上、業務効率の向上、地域課題の解決を行っていくため、GIS を始めとした ICT 環境の整備やそれを活用する人材の育成に取り組み、庁内での GIS やデータの活用に取り組んでいる。

課題

神戸市では、市民サービスの向上、業務効率化、地域課題の解決に向け、ICT を活用したオープンガバメント社会の構築に取り組んでおり、2014 年にはオープンガバメントの研究グループが立ち上がり、2015 年にはデータ・ ICT 活用やオープンデータ推進に取り組む部署として企画調整局内に ICT 創造担当が設置され、ICT を活用したまちづくりを推進している。ICT の活用のためには、これまで以上に職員が GIS やデータを業務で効率的に活用できるような環境とスキル・知識を向上させる必要があった。また、オープンデータの取り組みとして 2017 年 7 月に、神戸市のホームページの利用規約を改訂し、神戸市ホームページ上の情報についてオープンデータとして利用できるようにした。

ArcGIS プラットフォームの採用理由

神戸市では以前から個別の業務で GIS を利用し、台帳管理を始めとしたさまざまな業務を通じてデータが作られてきた。オープンガバメントに向けた取り組みとして、これらのデータを全庁的に利用でき、さらにそのデータを市民向けに公開する統合的なプラットフォームとして、ArcGIS EnterpriseとPortal for ArcGIS を新たに導入し、2016 年 1 月に稼働を開始した。

神戸市 GIS システム構成図
神戸市 GIS システム構成図

課題解決手法

神戸市は、職員がデータを活用して市民サービスや業務効率の向上、地域課題の解決に取り組む研修として 2016 年度に「神戸市データアカデミー」を開催した。この研修では、課長級向けセミナーと職員向けワークショップに分け、それぞれの役割に応じたセミナー構成とした。 課長級向けセミナーでは、神戸市が目指すオープンガバメントに向け、データ活用の重要性や職務でのオープンデータ活用のポイントと事例を紹介し、データ活用の意義を伝える内容とした。 職員向けワークショップでは、各部署が抱える課題に対して GIS やデータ活用による解決を実践的に学ぶ内容とした。ワークショップの題材として GIS を活用したものを紹介する。

1)翌年度の学童保育利用者の可視化

こども青少年課では、毎年小学校の学童保育利用者数を実際の入所申請により初めて把握していたため、準備が後手に回っていた。年齢別人口データと学区データを重ねて可視化することで、学区毎に翌年度の学童保育利用者の予測に役立てようとした。

2)バリアフリー情報の可視化

神戸市北区にある総合福祉ゾーン「しあわせの村」では、高齢者や障害者も楽しめる施設もあることから敷地内の歩道に傾斜角度と階段の位置を記したマップを作成した。このマップはアプリとして提供されており、車椅子で移動する際に目的地まで傾斜や階段が少ないルートを案内することができる。

傾斜・階段情報付きの歩道マップ
傾斜・階段情報付きの歩道マップ

3)不動産価値審査の業務フローの検討

管財課では市内にある不動産価値の審査に必要な資料として、路線価・基準地価を地図とともに提出してもらっていたが、ArcGIS 上に路線価・基準地価を予め用意し、各部署と共有することで、大幅に業務フローを改善することができることがわかった。

神戸市データアカデミーの取り組みを通じて、GIS やデータの活用に前向きな部署や職員を発掘でき、GIS に関する知識の向上につながった。一方で、ArcGIS の操作や機能面で職員だけでは手に負えず外部の支援が必要となることや、業務によっては GIS やデータの活用に至らないものもがあることもわかった。 2017 年度からは、GIS やデータ活用を業務として職員自ら取り組んでもらうため、新たに課長級をメンバーとする「GIS 部会」が組織された。GIS 部会は、GISやデータの活用を個人ではなく組織として取り組むようはたらきかけている。さらに、実務担当者をメンバーとする GIS アカデミーは、普段の業務で使える GIS を目指し、活用事例・相談事例の共有、操作研修、ワークショップなどを行っている。

効果

イベント情報の管理業務効率化と活用

広報紙にイベント情報を掲載するには、以前は各課から所定の Word ファイルで入稿された情報を広報課の職員が紙面に入力していたが、データを活用しやすくするため、Web フォームを通じて行うようにしたことで、データベースでイベント情報を管理できるようになった。またイベント情報は、他のアプリでも参照できるよう API が提供されている。 イベント情報のデータベースが作られたことで、紙面では紹介しきれなかったイベントや、位置情報や写真などの追加情報をイベント情報サイト「KOBE Today」に掲載し、市民に最新で詳細な情報を届けることができるようになった。さらに、イベント情報の API と ArcGIS Online を連携させ、ストーリーマップとして最新のイベント情報を地図上で紹介している「KOBE Today MAP」を開発した。このように GIS やデータの活用に取り組むことで、業務フローが改善され、市民向けの情報公開の質が向上するような事例が庁内で出てきている。

傾斜・階段情報付きの歩道マップ
イベント紹介のストーリーマップ

オープンデータへの取り組み

事業や業務で蓄積されたデータをオープン化し、外部と連携することで、さらなるデータ活用に向けた取り組みを始めている。例えば、神戸市内を走るバスの現在地やアクセル・ブレーキを示す加速度付きのデータ、市内の用途地域や都市計画道路の整備状況などの都市計画情報、市内の観光スポット、保育所の年齢別空き状況の情報を始めとした様々な業務の情報をオープンデータとするための整備を進めている。

今後の展望

現在取り組んでいる庁内のデータ共有プラットフォームをさらに活用し、多くの業務において政策決定に使えるデータ・マップを充実させていくためにも、今後も人材育成、組織・体制、ICT 環境整備の支援をしていく予定である。 その先には、神戸市のオープンガバメントに向けた取り組みを通じて、市民との新しい対話の手段を実現し、市民サービスの向上を目指していきたいと語って頂いた。

プロフィール


企画調整局ICT創造・事業調整担当
係長 中川 雅也 氏、 八尾 翼 氏



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2018年2月5日