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地球観測衛星の観測機会を把握する

 

地球観測衛星の観測計画

近年の宇宙利用の活発化の流れにおいて地球観測衛星が取得する画像情報は、広域を俯瞰できる重要な役割を担っています。地球観測衛星は衛星ごとに設計された軌道を進行し、搭載されたセンサーによって地球を観測します。多くの地球観測衛星は、一定の日数(回帰日数)で同一軌道に戻る太陽同期準回帰軌道を利用しており、同一の観測条件で同じ地点を観測するためには最短で回帰日数分の期間を要します。

政府系の地球観測衛星は、限られた観測リソースを最大限活用するため、政府や民間などのユーザーから要求された利用用途に対応した観測計画(基本観測計画と呼ばれる)に基づいて平時の観測が行われています。日本の地球観測衛星である「だいち2号(ALOS-2)」の基本観測計画は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の Web サイトで公開されています。ALOS-2 の基本観測計画は KML 形式で提供されていることから、GIS に取り込んで自組織の関心対象と重ね合わせて評価することが可能です。ちなみに、 ALOS-2 の回帰日数は 14 日です。

だいち2号(ALOS-2)の基本観測計画の抜粋(2017 年 11 月 20 日~ 12 月 3 日)

大規模災害発生時などの緊急時には、平時の観測計画を変更して緊急観測を行う場合があります。緊急観測時は観測計画から入射角や撮影モードを変更して観測することになりますが、回帰の条件により、常に理想のタイミングで観測できるとは限りません。たとえば、自治体の防災計画に地球観測衛星の利用を組み込むことを想定した場合、その自治体の範囲が「いつ」、「どのような観測条件」で観測できるのかを事前に整理しておくことで効果的に衛星観測データを利用できるかもしれません。

だいち2号(ALOS-2)の観測機会

ALOS-2 の直近の詳細な観測機会は、JAXA が運用する検索サイトである AUIG2 で検索することができます。下図は、ある日時の観測機会の検索結果です。観測範囲の概略を示すフットプリントと観測条件を確認することができます。検索結果はシェープ ファイルや CSV にエクスポートできます。

AUIG2 による観測機会検索の例

以下は、ある回帰での日本域の観測可能域を Web マップ化し、ストーリー マップ ジャーナルを使用して表現した例です。水色のラインは ALOS-2 の進行方向(この例では、北向きに進行)を、ポリゴンはこの軌道でセンサーの入射角を変更した場合に観測可能な範囲の全パターンのフットプリントを表しています。凡例に示すように、赤色は衛星に近く(入射角が小さい)、青色に向かって衛星から遠ざかる(入射角が大きい)ことを意味します。平常時は、基本観測計画に基づく観測条件によって、ある入射角で観測が行われますが、緊急観測時にはこの範囲内で入射角を変更して要求される範囲を観測します。

ALOS-2観測機会マップ(図をクリックすることで、ストーリー マップを閲覧できます)

災害監視分野では、これまでの観測実績を基に浸水域や土砂崩壊域の抽出に適した衛星による観測機会の知見が蓄積されつつあります。こうした情報が Web マップとして共有されることで、視覚的に衛星の観測機会を理解することができるようになり、ユーザーのさらなる宇宙利用の促進が期待されます。

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掲載種別

  • 活用法

掲載日

  • 2017年12月20日