第 20 回
GIS コミュニティフォーラム

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マップギャラリー

ユーザー様からご応募いただいたマップとストーリーマップを公開しています。
今回もたくさんのマップが集まりました。皆様のお気に入りのマップは見つかりましたか?

マップ部門

M01. 富士山は東京のどこから見えていたか-DSMによる1963年の東京の可視領域分析

京都産業大学
桐村 喬 氏

東京では、富士山は重要な景観要素であり、各地に富士山が見える坂の地名が残っている。一方で、視界が遮られ、富士山が見えなくなってしまった富士見坂も多い。現在の東京で富士山がどこから見えるのかを考えるのであれば、PLATEAUなどを使えばすぐに判明するが、過去に見えていたかどうかを考える場合には、当時のデータが必要になる。そこで、このマップでは、1963年の東京の空中写真からDSMと3次元都市モデルを生成して可視領域を分析し、富士山が東京のどこから見えていたかを検討した。可視領域のマップによれば、1963年当時は南西方向に開けた台地の崖の多くで、富士山が見えていたようである。また、1963年の3次元都市モデルとPLATEAUを比較すると、1963年当時と比べて、目の前に建物が多くなり、富士山が見えなくなっている様子がわかる。このような過去のDSMや3次元都市モデルは、失われた景観を復原でき、新たな分析視角もわれわれに提供するものといえる。

M02. 3D Local Office Rent Index

筑波大学
松尾 和史 氏、村上 大輔 氏、堤 盛人 氏、今関 豊和 氏

不動産は1つ1つ異なる特徴を有するため、単純な平均値等で価格や賃料を比較することは困難です。 そのため、個々の不動産の特徴の違いを考慮した“不動産価格指数”が用いられます。 しかし、一般的な“不動産価格指数”は地域ごとの時系列データで表されるため、地域間の比較には適しません。 3D Local Office Rent Indexは東京23区における過去20年間の160万件を超えるオフィス賃料データを用いて、250mメッシュごとに指数を推定し、3次元表示したものです。指数の推定にはビッグデータに対しても効率的に推定可能な手法を考案し、適用しました。
この指数は、オフィス賃料の地域差や時間的な変化を柔軟に捉えることを可能にし、不動産市場の解像度を鮮明にします。

M03. 東日本大震災からの復興事業による地形改変量の推計

大阪公立大学 
杉本 賢二 氏

東日本大震災の被災地域では,宅地造成や嵩上げにより津波浸水リスクは低減したものの,大規模な地形改変には環境負荷の増加や景観・生態系サービス・土石資源の喪失といった様々な影響が懸念される.本研究では,震災直後に計測されたDEMと最新のDEMとを用いて復興事業前後の標高差分を算出し,地形改変量の推計を行った.南三陸町を対象とした水系の結果,地形改変量は純増となり,特に志津川地区では広範で標高の増減が見られた.また,山間部では高速道路建設に伴う盛土と切土の連続区間が見られ,復興事業やインフラ整備により大規模な地形改変が行われていることがわかった.

M04. 江戸時代の石高

国際航業株式会社 
本田 謙一 氏、板津 真希 氏

日本国は豊葦原瑞穂国ともいわれるように古来より稲作を基本として国家を運営してきました。江戸期には村々を「石高」で管理する石高制が確立しています。
ここでは旧高旧領取調帳と農業集落境界データを用いて幕末時点の近世村(藩政村)の領域を復元し、村ごとの石高と領分を作成しました。このマップでは幕末頃の村ごとの面積当たりの石高と大名の領分図を示しています。石高は米を主とする農業生産力を表すため、当時の農業生産の分布と各藩の経済力がわかります。
北陸地方の石高の高さ、大河川流域の開発、幕末を主導した雄藩の領分では?と、眺めるほどに様々なことが見えてくるでしょう。

M05. 凸凹地図で見る 山城重慶

株式会社東京地図研究社 
孟 蝶 氏

中国の西南地域に位置する重慶市は「山城」(山の町)と称されるほど山地が多い都市ですが、市全域の常住人口は3213万人ほどにも上ります。人口が特に集中する「中心城区」と呼ばれるエリアでも高低差の激しい場所が多く、街中では階段やエスカレーターが数多く見られ、24階もあるマンションではエレベーターがないものの、3つの出口がそれぞれ高さの異なる道路に繋がっているなど、特徴的な街並みが見られます。
そのような“山城”重慶市の地形の様子を多重光源陰影段彩図(凸凹地図Std.)で表現しました。

M06. 上空から襟裳岬を見てみよう!ドローン空撮写真からみえるゼニガタアザラシの姿とは?!~自動カウントと個体数推定から~

酪農学園大学 
岡村 航平 氏、荻野 駿 氏、環境空間情報学研究室一同

私たち酪農学園大学環境空間情報学研究室は、襟裳岬に生息するゼニガタアザラシのドローンを用いた個体数推定について、環境省北海道地方環境事務所にご協力いただき、研究しています。ゼニガタアザラシは大量捕獲や上陸場爆破等により、生息数が減少したことから絶滅危惧種に指定されました。近年では個体数が増加傾向にあり、2015年には準絶滅危惧種に引き下げられたが、漁業被害も顕著になりました。2016年から地域社会との共存を図る管理計画が進められており、持続可能な個体数管理を行うため、ドローンを用いて目視では難しい正確性の高い個体数推定を行う必要があります。また岬からの目視でのカウントも行われていますが岩礁の陰に隠れた個体が発見されづらいため、ドローンを使って撮影された空撮画像を機械学習により自動カウントが可能なソフトウェアを用いて個体数推定をするための研究をしています。

M07. 都市林における樹木の変遷

NPO法人地域自然情報ネットワーク 
梶並 純一郎 氏、下田 彰子 氏

都心に立地する約20haの樹林地である自然教育園では、都市域の環境下における森林の変遷を知ることを目的として、1965年以降毎木調査を継続しています。調査は、園内に生育する樹木のうち、胸高周囲長30cm以上の個体を対象とし、1965年、1983年、1987年、1992年、1997年、2002年、2007年、2010年の8回行われました。
ポスターでは、このデータを元に、年代ごとにどの種類が多かったのか?変化したのは何か?今ある樹木はいつからある個体なのか?といった、樹木の変遷を整理しました。また、今回のデータを皆さんに利用していただけるよう、データ公開サイトを紹介しています。

M08. 訪日外国人旅行客における移動パターンの集約化~訪日外国人の人流からみた日本の地域区分~

株式会社東洋設計 
山田 大立 氏

「人流」は、技術発展によりデータ収集手法が精緻化し、同時に解析手法も高度化したことに加え、社会のニーズも相まって近年のビジネスやメディア等で取り上げられる機会が増えた分野です。
その表現方法としてよく目にするのは、人が集中する場所を強い色で表示するヒートマップや人の移動方向と量を矢印で表示する流線図などです。
今回は出発地と目的地を行列上に整理されたOD表に対して、よく心理学で用い られる分析手法である「因子分析」を適用することで、無数にある移動パターンに対し、つながりが強い12のグループまで集約し地図上に可視化しました。その結果、外国人観光客が日本に求めるものや、地域の観光誘致における課題を再発見することができました。
また、補足として、1kmメッシュごとの訪日外国人旅行客の滞在者数を推計することによって、より人流を捉えやすくしました。

M09. 住んでる人が幸せだと感じているのはどこ?~全国47都道府県の「街の幸福度ランキング」~

大東建託株式会社、麗澤大学 
秋山 千亜紀 氏、宗 健 氏、松尾 曜平 氏、井上 明莉沙 氏

街の魅力を高めようと、コンパクト&ネットワークなまちづくりや立地適正化計画など、様々な施策が検討されています。街の魅力を測るには、人口減少率、高齢化率、施設の充実度といった定量的な評価と、「住んでいる人が幸せだと感じているかどうか」といった定性的な評価の両方が必要ではないでしょうか。
そこで大規模アンケート調査「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」では、全国約65万人の主観的幸福度を47都道府県ごとに集計・偏差値を算出しました。その結果、規模の小さな自治体街が上位にランクインすることもあり、人口規模・都市施設の充実度だけでは測りきれない地域の魅力を発掘しています。幸福度の他に居住満足度、街への誇り、街への愛着なども併せて調査していますので、ご来場の皆様にご縁のある街の魅力の発見に繋がればと思います。

M10. 眠らない路と眠る街―道路交通履歴統計を用いた夜間交通騒音の推定・可視化-

東北大学 
髙橋 侑太 氏、中谷 友樹 氏

日本各地で行われている騒音測定は「交通量が平均的」と思しき1 日を選んで計測した定点調査の記録に基づく。そのため観測地点もまばらにならざるを得ず、また測定日による時間変動の成分も十分に考慮できない。また、交通量の調査の多くも主要な幹線道路に設定した断面調査に頼る必要があるため、生活道路を含めた面域的な交通量とそれによってもたらされる騒音を推定するには不十分な面がある。
ここでは道路交通履歴統計(ESRI ジャパン株式会社)を用いて夜間の交通騒音を推定・可視化した結果を紹介する。道路交通履歴統計は、コネクティッドサービスを利用しているトヨタ車・レクサス車から収集した道路セグメント単位の移動車両数および走行速度の統計データであり、細い道路の交通量も補足することが可能である。推定した騒音を立体的に表現したこの地図では、日本の中心である東京23区の「眠る街」と「眠らない路」が浮き彫りとなって現れている。

M11. 日本列島発掘史―埋蔵文化財調査ビッグデータを用いた可視化―

立命館大学 
武内 樹治 氏

日本では、発掘(埋蔵文化財)調査が毎年8000件程度実施されており、その多くが開発事業に先立って行われる事前調査によるものである。これらの情報は奈良文化財研究所「全国遺跡報告総覧」にて登録されつつある。これまでに蓄積されたこれらの埋蔵文化財調査ビッグデータについて、地理的な分布に調査時期(時間軸)を加えた時空間密度推定を行い、日本で実施されてきた発掘調査の動向を可視化した。開発事業に伴う事前調査が多いため、発掘調査は都市圏に集中していることがわかる。さらに近畿圏をみていくと、当初は都城跡などの史跡やニュータウン開発地の地区という一部に発掘調査が集中していたが、調査体制が整い都市開発が増えていくことによって発掘調査件数も増加し、発掘調査が集中する地域も拡がっていく様子が読み取れる。

M12. 自治体のSDGs達成を支援するための地域課題見える化の取り組み-地方創生SDGsローカル指標のさらなるローカライズ-

国際航業株式会社 
大和田 彬 氏、北澤 聡宏 氏、坂本 大 氏

SDGsの大きな機能の一つに、指標による各ゴールの達成状況の進捗管理がある。「誰一人取り残さない(No one left behind)」社会を実現するためには、地域レベル、生活圏レベルの質をコミュニティ内で評価し、格差を是正する・底上げを図ることが重要となる。これら地域レベル、生活圏レベルのスケールでSDGsの進捗状況を評価・管理するため、地方創生ローカルSDGs指標をさらに詳細化し可視化することを試みる。

M13. シェアサイクル×GISでみえる新たな都市交通の可能性

OpenStreet株式会社 
データサイエンス部

自転車ネットワークは、近年、都市交通においてますます重要な役割を果たしています。私たちOpenStreet株式会社 データサイエンス部は「もっと自由な移動をデータから創る」をチームミッションに掲げ、日々シェアサイクル・シェアモビリティサービスの品質改善や都市の交通課題と向き合っています。
その中で、GISの役割は非常に重要です。サービスが拡大するにつれて膨大に膨れ上がるログデータを解析し、サービス品質向上や都市交通網の改善提案に役立てています。今回は、シェアサイクル×GISでみえる新たな都市交通の可能性として、その取り組みの中から、シェアサイクル車両の走行軌跡やOD×リアルタイム解析の様子をみなさまにお伝えいたします。

M14. 東京都市圏の私鉄運転本数の変化

八千代エンジニヤリング株式会社 
技術管理本部 CIM推進室

この数年間は社会活動に大きな変化がみられた期間と思います。通勤や通学、買い物などに利用する鉄道事業においても例外でなく、運転本数や終電時間の変更を目の当たりしています。この変化の空間的な見える化をマップで試みました。今回、元になるデータの用意には時刻表本を使用し、地図表現は基本的なものとしましたが、空間的な傾向が現れたように見受けられます。ところで、わたしたちCIM推進室のCはConstructionではありますが、この度はConstructionを取り巻く 都市活動の1つに着目しました。

M15. どうなる?!東京のカーボンゼロを目指す道

FINE-MAP株式会社 
マドウシカ サンダルワニ 氏

世界有数の温室効果ガス排出国である日本が、将来的にカーボンゼロを目指すためにはどうしたら良いか、政府や民間、国民一人一人の意識づけを変えていき様々な自然エネルギーを活用していく。現在も“グリーン成長戦略”などに基づいて2013年比では18.4%の温室効果ガス減少を達成している。東京都内にEVステーションを数多く整備。人口減少により温室効果ガスの排出も減少している。

M16. マップから 地域の保全 を考える

NPO法人EnVision環境保全事務所 
工藤 知美 氏

2021年G7サミットにて、“2030年までに陸と海の30%以上を保全する”という国際目標が掲げられました。現在の日本では、保護区のみでは陸・海共に30%に達しておらず、「OECM?※民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」の設定が注目されています。そこで、GISを活用し、生物多様性の価値がある場所を抽出・可視化することが重要となります。作成図は、“北海道内のOECMの可能性を探る”ための一例を示しました。「北海道内の保護区」と、「自然度が高い地域(生物多様性の指標例)」を重ねることで、生物多様性の価値が高いが、保全が行き届いていない可能性がある地域を視覚的に確認することができます。 保護区以外の保全課題がある事例として、釧路市の「キタサンショウウオの生息適地」と「ソーラーパネルの設置位置」が重なっている例を示しました。希少種の生息地を保全するため、生物分布情報や脅威となる情報を把握し可視化することが重要です。

ストーリーマップ部門

S01. 袋川の洪水とその付け替え~青翔開智高等学校の「地理総合」フィールドワーク

奈良大学 
浜田 優希 氏、中澤 歩 氏

令和4年度から地理総合がはじまり、高校の地理担当は従来の地理にはなかった内容を教えている。本作品は鳥取市の私立青翔開智高校の1年生の地理総合の授業を1つの事例として、GISとフィールドワークの2つの内容を組み合わせて実施した地理総合の授業とそこから浮き彫りになった課題を示した。
授業当日は授業時間2コマを利用して、1クラスあたり30分の事前指導と60分のフィールドワークを2クラスで行った。事前指導では、袋川の付け替えの背景説明や本ストーリーマップ内の「マップツアー」を利用し生徒らが調査の行程をイメージできるようにした。高校周辺を調査のフィールドに選ぶことで、生徒らがより身近に考えることができた。フィールドワークでは調査地域を実際に歩き、水害の危険性とその対策について生徒らと考えた。実際に歩くことは生徒らの印象に強く残る反面、教師側の準備の多さも課題として残る。

S02. 「だご汁」で地域区分?! -熊本県の土地と人々の暮らし-

熊本大学 
隈元 祐羽 氏

熊本県の土地(気候・地形)と人びとの暮らしの関係性をまとめた作品です。大学の授業で「一つの県の気候・地形・関連事象について地理的クロッキーを用いてまとめる」という課題が出たことがきっかけでこのストーリーマップを作成しました。作品の作成を通じて、熊本県は地形的に恵まれていて、食文化は特にその影響を受けているというように感じました。普段気にすることのない何気ない風景が、実は私たちの日常と密接な関係がある、この気づきをストーリーマップを通して伝えたいです。 今回、より地形を身近に感じてもらうためにだご汁の具材で地域を区分してみました。拙い区分ではありますが、地域性と土地の関係を感じてもらうきっかけとなれば幸いです。「私はこれを使って地域区分してみたいな」と思いを巡らせながらご覧ください。

S03. Our Awa GIS―我らが徳島県のGIS教育はこれでばっちり!―

徳島大学 
西條 真結乃 氏、塚本 章宏 氏

2022年度からスタートした「地理総合」で、あわあわしている?!徳島の教育現場のために、GIS教材と共有プラットホームをつくりました。本教材は、GISの習熟度に応じて、誰でも使用できることをコンセプトにしています。開発したプラットホームは、①既存のGISサービスへのリンクを共有するポータルサイト、②教科書の単元・学習内容の流れに沿ったデジタル教科書、③地理と歴史の教科間連携コンテンツ、④徳島に関わる地理情報を重ね合わせたオンラインマップ、の4種のGIS教材で構成されています。こりゃ便利やけん、使わにゃそんそん!!!

S04. ひがし北海道の美しい風景を動画と写真で紹介

株式会社MapsTap 
門田 和彦 氏

ひがし北海道の四季を楽しめる、感動の動画と写真をご紹介します。北海道東部に位置するこの地域は、四季折々に美しい自然風景を見せてくれます。雪景色の美しさで魅せる冬、美しい花々が咲き誇る春、清々しい緑に包まれる夏、そして紅葉が鮮やかに染まる秋。そのすべてを、映像作家が繊細に捉え、美しい映像と写真として編集しました。ぜひ、ひがし北海道の四季を彩る、感動の映像と写真をご覧ください。

S05. 写真家・安保久武と戦争:「従軍写真家」がとらえた時代

東京大学 
渡邉 英徳 氏、貴志 俊彦 氏、中島 みゆき 氏

毎日新聞社内に残されていた「戦中写真アーカイブ」には、記者、写真家など多様な人びとの姿が写されています。報道に携わった者の姿を明らかにする試みとして、カメラマン・安保久武氏が残した写真群から足取りを辿り,ストーリーマップで表現しました。
安保久武(あぼ・ひさたけ)
1912年東京・浅草生まれ、千葉県市川市育ち。1935年に東京日日新聞のカメラマンとなる。満州事変勃発直後に大陸へ渡り、北京を拠点に従軍記者として活躍。1942年2月、シンガポール陥落を撮影したカットは、歴史に残る写真となった。幼少期から鳥や動物を愛し、1938年から4年余りの北京支局滞在中は自然や人々の暮らしぶりにもカメラを向けた。1943年帰国すると、正義感から従軍記者証を返却し、軍の召集を受ける。入隊後は報道班員として杭州、漢口などへ従軍し、長沙で終戦を迎えた。帰国後は「東京写真記者協会」設立や「毎日グラフ」創刊に携わり、日本における報道写真分野の確立に尽くす。東京本社写真部長、事業部長、毎日映画社社長などを歴任。晩年は千葉県内で家族や愛犬と過ごした。酒を飲むと北京の初夏の美しさを語り「夜来香」を歌ったという。

S06. 「幽鬼の街」小樽を歩く ―小樽の街の今昔と伊藤整の「坂」表現―

北海学園大学 
武田 佑希子 氏

このストーリーマップは、作家・伊藤整が描いた小説「幽鬼の街」の舞台である小樽をフィールドワークした結果をまとめたものです。 私は、物語で描かれた場所と現実の場所との関係性について興味があり、大学で開講されている地理情報システム(GIS)の授業で自らテーマを設定し、小樽の現地調査を行いました。文学作品とGISの組み合わせが意外に思われるかもしれませんが、「幽鬼の街」は初出時、本文と共に作者による手書きの地図「小樽市街中央部図」が掲載されました。物語の舞台と手書きの地図、そして現実の場所とがリンクしているのです。
フィールドワークではArcGIS Survey123を使用してGISデータを収集しながら、主人公が辿った小樽の街を歩きました。このストーリーマップでは伊藤整が小説で描いた小樽の街と当時の小樽、そして現在の小樽の街を比較することで、「物語と場所」の魅力をお伝えできたらと思います。

S07. 想ひ出は唯 涙のみ
取材者の命の記録:安保久武をめぐる群像

東京大学 
渡邉 英徳 氏、貴志 俊彦 氏、中島 みゆき 氏

毎日新聞社内に残されていた「戦中写真アーカイブ」には、記者、写真家など多様な人びとの姿が写されています。報道に携わった者の姿を明らかにする試みとして、カメラマン・安保久武氏が残した写真群から足取りを辿り,ストーリーマップで表現しました。
安保久武(あぼ・ひさたけ)
1912年東京・浅草生まれ、千葉県市川市育ち。1935年に東京日日新聞のカメラマンとなる。満州事変勃発直後に大陸へ渡り、北京を拠点に従軍記者として活躍。1942年2月、シンガポール陥落を撮影したカットは、歴史に残る写真となった。幼少期から鳥や動物を愛し、1938年から4年余りの北京支局滞在中は自然や人々の暮らしぶりにもカメラを向けた。1943年帰国すると、正義感から従軍記者証を返却し、軍の召集を受ける。入隊後は報道班員として杭州、漢口などへ従軍し、長沙で終戦を迎えた。帰国後は「東京写真記者協会」設立や「毎日グラフ」創刊に携わり、日本における報道写真分野の確立に尽くす。東京本社写真部長、事業部長、毎日映画社社長などを歴任。晩年は千葉県内で家族や愛犬と過ごした。酒を飲むと北京の初夏の美しさを語り「夜来香」を歌ったという。

S08. ツォンカパの足跡 ~地図から読むチベット仏教再興者の伝記~

東京大学 
乾 将崇 氏

この作品は、チベット仏教の再興者とされるツォンカパの弟子ケドゥプジェが書いた師の伝記(『偉大なる聖師ツォンカパの素晴らしき未曾有のご事績、信仰入門』??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????)に記される地名から位置を特定し、ツォンカパの勉学修行の歩みをマッピングするという試みをもとにしています。
全ての地名が位置として正確に特定できたのでない点でまだ不完全な部分もありますが、思想的な展開のみで語られがちな思想家をその身体的な移動に注目して人生を描こうとする試みは新規性があります。この作品の公開がツォンカパの逗留場所についての議論の呼水となり、さらにはこの作品を見る人が思想家の旅・移動というテーマへ関心を広げてくだされば幸いです。
詳しくはここの写真の情報をご覧ください。

S09. 変わりゆく渋谷駅を歩いてみよう

しぶやをつくるゼミ第1期 とっぷらヤーシブ 鶴岡 宝 氏、SHIBU no HACHI(しぶやをつくるゼミ第1期 とっぷらヤーシブ)

「しぶやをつくるゼミ」とは、(一社)渋谷駅前エリアマネジメントとNPO法人シブヤ大学が一緒に取り組み、一般市民の方がグループに分かれ「渋谷のまちでやってみたいこと」を、ざっくばらんに、ときに真剣に、たのしく考え、対話する場として2021年に開講されました。
その中で我々「とっぷらヤーシブチーム」ではゼミ内におけるシティツアーを企画、渋谷に馴染みのない方も毎日使っている方も楽しめる地図をコンセプトにストーリーマップを作成しました。渋谷駅は100年に1度と呼ばれる大規模な再開発が行われており、日々刻々と街の姿が変わっていっています。そこで、過去の渋谷駅の写真を現在の位置に合わせて表示させることで、マップユーザーがその場所を訪れた際に「現在の風景と重ね合わせる」ことで街の変化の速さを体感することができるように作成しました。長年の駅利用者には懐かしく、新規利用者には新たな街の側面の発見に寄与できると考えています。

S10. 123で始まる地域調査 地元”屯田”の魅力を知るために

北海学園大学 
中村 美月 氏

私は大学の春休みに、学芸員課程で取り組んだ調査の結果をまとめる中で、survey123に出会いました。実際に自分でも使ってみようと思い、手始めに20年近く暮らしている”屯田”という町でフィールドワークを実施しました。調査を行ったことにより、それまで「何もない」と思っていた屯田にもさまざまな魅力があることを知りました。フィールドワークで感じた土地、歴史、自然に興味を持ち、調査を進め、その結果をストーリーマップにまとめました。このストーリーマップは、地元の郷土資料館では不足している時系列的な説明や近年の出来事(都市化の進展)について、フィールドワークの結果やネット上に公開されている様々な地図データを使って補いながら、わかりやすくまとめたものです。その成果をぜひご覧ください。

S11. 出征兵士の足どり ─新潟県長岡市から─

三上 尚美 氏

アジア・太平洋戦争中に新潟県長岡市から出征した市民の足どりをインタビュー記録とともに辿るストーリーテリング・デジタルアーカイブです。本作が「地域の戦争の記憶」の継承モデルとなることを企図し、Arc GIS Onlineを用いてノーコードで制作しました。(運営:東京大学大学院 渡邉英徳研究室)
戦争を知らない私たちにとって、自分が暮らす「地域の戦争の記憶」や、空襲など象徴的な戦争体験以外の「戦時下の日常の記憶」と向き合うことが、戦争を自分事として捉えるきっかけになり得ると思います。そこで、全国どの地域にでも存在し得る「出征兵?の記憶」に着目し、出征者本人とその家族から証言を収集していったところ、”戦争に行くってどういうことだったのか”が少しずつ浮かび上がってきました。
この軌跡が表現しているのは、侵略戦争における軍隊の行動マップではなく、「兵士として戦場に行かねばならなかった」一般市民の人生です。

S12. 蝶標本デジタル化プロジェクト  ~歴史の1ページを未来へ繋ぐ~

須坂市技術情報センター 生物班
土屋 祐輔 氏、青木 孝賢 氏、井上 凜太郎 氏、小山 竣大 氏

長野県須坂市にお住まいの戸松清一郎さん。出会ったのは長野県須坂市にある情報技術センターの科学クラブの取り組みでした。戸松さんは好奇心旺盛で自分たちが大好きな生物、特に蝶の分布や多様性について研究を重ねてこられました。まさに生粋のナチュラリスト。長野県を中心に各地を訪れ、実際に訪れることでしかわからないたくさんの採集エピソード。年齢関係なく、話題は尽きず、とても楽しく盛り上がる時間を過ごしました。そのような中で見せていただいた蝶の「標本箱」。採取を始められたのが50年以上も前で、その時代にしか採取できない蝶も標本にされていました。当たり前ですが私達はタイムスリップはすることができません。この標本箱はとても貴重な生物歴史の1ページなのです。標本箱を観察→デジタル化→標本ラベルから緯度経度を作成→地図化にする。1年間かけて取り組んだ僕たちの学びのストーリーをお楽しみください。

S13. 土地利用と生き物の関係からOECMを考える ~私達の小さなデジタルアーカイブ~

須坂市技術情報センター 科学クラブ
長野市立更北中学校ものづくり部 理科班
青木 孝賢 氏、土屋 祐輔 氏、小山 竣大 氏、
清水 一基 氏、林 啓太 氏、松下 佑 氏、
井上 凜太郎 氏

OECMをご存知だろうか。OECMとは国立公園とまではいかないけど、その環境・生態系を後世に残していこうとする場所のことです。わかりにくいですよね?そこで、OECMを、僕たちが住む北信地域で、散策したことを中心に3つのストーリーマップにまとめました。「OECMって聞いたことはあるけど一体何なの?」といった疑問は見終わった後には消えていることでしょう。OECMのことだけでなく、自分たちの住む地域のことを、自分たちなりに小さなスケールをアーカイブする、小さなデジタルアーカイブの提案でもあります。アピールポイントは、縄文時代や弥生時代などそのOECMの場所の過去を展示するならどうする?ということ伝えるためをトカゲ学芸員のストーリー仕立てで動画を組み込んでいることです。話は戻りますが、これからの未来を作る上で大切なことを「土地利用と生き物の関係からOECMを考える」をテーマに、生き物にあまり詳しくない人でもイメージできるようにまとめてますので、楽しんで見てください。

S14. シン ・ バードウォッチャー  ~デジタルを駆使した新しい野鳥観察~

須坂市技術情報センター 
青木 孝賢 氏

ただ観察して写真を撮って終わりではない。そこから発信するデジタルを駆使した新しい野鳥観察を行う人、それがシン・バードウォッチャーです。「発信って具体的には何をするの?」「デジタルを駆使した新しい野鳥観察?」って思った人もいることでしょう。例えば、今は当たり前にいる鳥もこの先絶滅していなくなってしまうということも考えられます。その点から言うと「デジタル上に情報を残し公開することで将来の研究の一つの材料にしてもらう」「今はいないけど昔はここにこんな鳥が住んでいたんだよ」って未来の人に”伝える”事が可能になります。ただし、せっかくデジタルでも長い文章や論文ばかりだと一般の人が見てもよくわかりません。なので、ストーリーマップのようにわかりやすく楽しんで、かつ、オシャレな視点も大切にすることで多くの人に見てもらえ、記憶に残り続けるはずです。楽しんで見てもらえたら嬉しいです。