モバイル GIS でバス停メンテナンスを革新
メトロトランジット社
デジタル技術で変わる交通インフラの未来
課題
- 紙ベースの調査による情報の分散保存
- 主観的な意見が入る報告内容
- 正確な位置情報の把握が困難
導入効果
- データ収集の迅速化
- 情報の正確性向上
- 中央データベースへの即時アップロード
概要
メトロトランジット社(以下、Metro Transit)は、米国ミズーリ州セントルイス地域の公共交通機関を提供している。Metro Transitは、バス停のメンテナンス業務を効率化するために、ArcGIS のモバイル GIS ソリューションを導入して紙ベースで行われていた現地調査の問題を解決し、データ収集の効率と正確性を向上させた。
課題
Metro Transit の親会社である Bi-State Development 社は、地域のさまざまな交通設備を管理している。同社はミズーリ州とイリノイ州との間で結ばれた協定の下、 6 つの郡にわたる広い地域の管理権限を持ち、公共交通機関の運営の他、空港の管理、貨物鉄道の運営、観光施設の管理など、多岐にわたる活動を行っている。Bi-State evelopment 社のミッションは地域全体の経済発展を促進することだが、そのためには正確なデータが不可欠である。

Metro Transit は 10,000 か所以上のバス停を管轄し、まずはそれらの位置情報を正確に把握する必要があった。そして調査にあたっては、国の障害者法(以下、ADA)に準拠しているかどうかや、ベンチ、シェルター、ゴミ箱などの設備の有無を含むバス停情報を効率的に管理する方法が求められていた。正確なバス停の情報は、他の公共交通機関の情報と密接に連携されるため非常に重要だ。しかしこれまで紙ベースで実施されていた調査では、報告内容に担当者の主観的な意見が入ったり、紙に収集された情報はオフィスのキャビネット等の物理的な場所で分散して保存されていたりと、完全な情報を共有する環境が整っていなかった。
課題解決手法
Metro Transit は、ArcGIS Survey123 を使用して、バス停の位置情報や状態を迅速に記録するプロセスを導入した。約 6 か月の期間をかけて設計された現地調査用アプリケーションはモバイル端末上で動作し、調査員はバス停に到着後、ボタン操作で位置情報を記録できる。検査項目に対してはドロップダウンメニューから回答を選択するだけで済み、簡単に現場の写真を撮影して登録ができる仕様となっている。ArcGIS Survey123 を活用した直感的な操作とプロセスの簡便化により、 1 日あたり最大 50 か所の調査が可能となり、2024 年(令和 6 年)5 月までに約 1,000 か所のバス停の評価を行った。これにより、従来の紙面での調査に比べて 6〜8 か月の時間を削減した。

調査したバス停の情報は、2 つのダッシュボードに集約され、状況を包括的に把握することが可能だ。バス停評価&メンテナンス・ダッシュボードは、すべての調査結果を表示し、調査後のメモやコメントの編集機能がつけられている。このダッシュボードで停留所の ID を入力すると、各停留所の詳細情報にアクセスできる。停留所名および設置されている設備が表示され、メンテナンスの必要性も記録することができる。さらに、停留所の位置や設備の変更内容は社内のデータベースにリアルタイムに反映される。

もう一つのダッシュボードでは、バス停の状態、ADA に準拠しているか、設備に不備が無いか等を評価している。このデータは ArcGIS Living Atlas of the World の情報と統合され、メンテナンスが必要とされる地域を特定する。このダッシュボードには視認性を向上させるために、ArcGIS Hub を使用した設備管理サイトを利用している。この Hub サイトには、組織が管理するすべてのバス停の位置情報や構造物(橋、トンネル、擁壁、排水管など)を表示する Web マップが含まれており、既存構造物に対する提案された投資プロジェクトを重ね、その影響を評価するための機能を提供する。これにより、約 2,000 人の従業員がアクセス可能であり、効率的かつ包括的なプロジェクト評価を実施できるようになる。また、一般にアクセス可能なマップには、セントルイス地域の貨物輸送道路に関して、河川ターミナル、空港、倉庫などの場所が記載されている。


効果
ArcGIS Survey123 の導入により、Metro Transit はバス停のメンテナンス活動において大幅な効率化を実現した。データ収集のプロセスが迅速化され、情報の正確性が向上した。また、中央の電子データベースにデータが即座にアップロードされるため、複数の情報レイヤーにアクセスできるようになった。これにより、Metro Transit はバス停の状態をより効果的に管理し、メンテナンス活動の効率を向上させることができた。
今後の展望
Metro Transit は、ArcGIS Pro や ArcGIS QuickCapture を使用して乗客数や路面電車の電柱位置を把握するアプリを開発している。Bi-State Development 社のプログラマー兼アナリストであるヒューズ氏は、引き続き ArcGIS Survey123 が主要ツールとして役立ち、特に同社の安全部門での業務に貢献すると考えている。
安全部門では、危険報告、車両検査、バスやライトレール停留所の脆弱性評価、建設プロジェクトの進捗報告、安全宣言、橋梁検査および損傷評価などの活動をサポートする約 20 の Web およびモバイルアプリケーションが使用されている。安全部門はこれらの技術を組織全体の安全管理システムに組み込んでいる。
このシステムには、テキストと QR コードが含まれており、ユーザーは ArcGIS Survey123 にアクセスして安全上の懸念を入力し、対応を依頼できる。
さらにこの技術は、一般市民の意見を取り入れ、サービスのパフォーマンスやその他の問題に関する旅行者の意見やフィードバックを得るために活用できる。具体例としては、駅の安全対策プロジェクトがある。現在、Metro Transit が運営するライトレールの駅はすべて自由に出入りできる状態だが、安全とセキュリティの理由から全 38 駅にセキュリティゲートが設置される予定である。ArcGIS Survey123 と QR コードを組み合わせることで、市民が使いやすいコミュニケーションプラットフォームが構築されている。
同社は今後も他の交通機関や地域との連携を強化し、バス停のメンテナンス活動のベストプラクティスを共有することで、全体的な交通システムの改善を目指していく。
2026年1月15日
