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電力・エネルギー大全 (原子力・化石燃料編)

 

現代のライフスタイルに不可欠な電力。複雑な電力の生成と伝達経路の全貌を地図で明らかにします。

 

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解説

本マップは ArcGIS Online の「ストーリー マップ カスケード」というテンプレートを使用して作成しています。

 

4.発電:一次エネルギーの供給量

発電のためのエネルギー源は、主に3つのカテゴリーに分けられます。

しかし、以下のグラフが示すように、全米の発電量は、これらの3つのカテゴリーに均等に配分されません。化石燃料が電力供給源の大部分を占めていることは明らかです。電力生産量の増加に合わせて、3つのカテゴリーは全体的に増加している一方で、各カテゴリーの相対的な割合はかなりシフトしています。特に、再生可能エネルギーは、1950年代、電力生産量の3分の1の割合を占めていたのに対し、2015年では、全体のわずか15%で推移しています。これは、再生可能エネルギーで最も多くの電力を発電できる水力発電が、ダム建設可能な場所には限りがあるため、横ばいの状態となり、化石燃料をベースとした発電所と原子力発電所はダムのような建設における制限はないため稼働台数を増やしていけたことに起因します。

 

 

 
 

 

5.化石燃料:石炭、天然ガス、石油

今日、化石燃料を原料とする火力発電はアメリカの発電供給全体の3分の2以上を占めます。化石燃料、その中でも特に石炭は、歴史的にアメリカのエネルギー産業の中核を担ってきました。

 

 

 
 

 

グラフ凡例

長期に渡り化石燃料が発電の大半を占めている要因はいくつかあります。まず一つは、化石燃料発電所はどの他の発電方法よりも力強いスタートを切ったことです。世界で初めて集中型の発電所(マンハッタンのダウンタウンで1882年に操業開始したエジソン パールストリート発電所)は石炭を使用していました。次に、化石燃料による加熱発電所は、他の種類の発電所に比べて機械的に簡単であるため、建設、運用・維持の面においてはるかに安価なことです。そして最後に、石炭、ガス、石油などの化石燃料自体が米国内に豊富にあることです。

石炭発電所と石炭田

石炭を燃料とした火力発電所は、何世紀にも渡って米国内電力供給量の圧倒的割合を占めてきました。 石炭の重量とボリューム、そして輸送コストが高いことから、火力発電所は石炭採石場の近くにあります。この傾向は、アパラチア山脈地域で顕著に現れます。北東部では、険しい地形によって交通がさらに複雑になります。

天然ガスとシェールフィールド

近年のシェールガス革命はガスの掘削・加工の技術の進歩によって、天然ガスの価格は石炭よりも安価になり、生産・輸送・消費が容易になりました。実際、2016年に天然ガスは米国の歴史上初めて、これまで主要な電力源であった石炭を上回ることが期待されています。

石油発電所

石炭、天然ガス火力発電所は、主に中西部そして東部の海岸に位置する少数の石油火力発電所によって補完されています。

石炭・天然ガス・石油の化石燃料火力発電所をすべて地図に表示しています。これらの発電所が電力市場をほぼ支配しています。

 

低コストで電力を供給することができる化石燃料火力発電所ですが、欠点はあります。それは、その他の発電方法と比べて「より汚い」ということです。化石燃料火力発電所は毎年数億トンの温室効果ガスを発生させるため、地球温暖化を加速し、大気質を低下させます。さらに火力発電を通して発生する化学副生成物は、発電所付近の土壌や地下水に浸透し、耕作地、生態系を汚染する可能性があります。環境および健康に及ぼす重大な危険をはらんでいるのです。

 

米国最大の化石燃料発電所、Robert W. Scherer発電所を例にあげます。ジョージア州アトランタ市とメーコン市の中間に位置するこの発電所は、自給式の発電機4基によって、約3,600メガワットの発電力を誇ります。石炭火力発電所の発電量平均値が460メガワットであることと比較するとそのスケールがわかります。Robert W. Scherer発電所の煙突は2つあり、高さは約1,000フィート、エンパイア・ステート・ビルディングとほぼ同じ高さです。

しかし、電力供給に大きな貢献をしている一方、Robert W. Scherer発電所は、主要な温室効果ガスである二酸化炭素を毎年9,000トン以上生産しています。今日、多くの環境学者が無責任な電力生産の象徴としてこの発電所を挙げています。 化石燃料をベースとした電力生産が生態系に及ぼす悪影響を考慮し、環境保護庁(EPA)は、大規模な発電所がコストのかかる改修を行うのではなく、運転を停止の方向へ向かわせるよう、発電所の排出に関する徹底的な改革と規制を発表しました。環境保護を訴える人々は、これらの大規模発電所が閉鎖になり、より持続可能で環境に配慮した形の電力生産の方向へ進むことを大きなマイルストーンとして歓迎しています。

6.原子力

 

米国で第2位の電気供給源、原子力発電。上の写真のような巨大な構造物は核分裂によって発生した自然熱を利用して水蒸気を沸騰させます。この蒸気がタービンを回し電力を生成します。化石燃料火力発電所とは異なり、電子力発電所は、フル稼働するために膨大な量の燃料を必要とはしません。1キログラムの濃縮ウランは、同量の石炭と比べ、300万倍のエネルギーを生産します。これを考慮し計算すると、1,000メガワットの原子力発電所は毎年約27トンの燃料を必要とし、同じ1,000メガワットの石炭発電所は、約250万トンの燃料を必要とします。

原子力発電所は非常に効率的ですが、発電所が取り扱う放射線物質は非常に有害で、原料の発掘から運搬、最終的な廃棄方法にまで細心の注意を払う必要があります。過去半世紀の間に起きた、スリーマイル(1979年)、チェルノブイリ(1986年)、福島(2011年)での大規模災害は、人々に原子力発電施設の安全性に対し深い懸念を抱きました。

原子力発電反対派たちは、原子力発電所によって汚染された地域は完全に汚染から回復するまでに、何十年何世紀もの時間を必要とすること、原子力発電施設が、地震・洪水・津波などの自然災害に対して脆弱であることを指摘しています。逆に、原子力発電支持者は、これらの悲惨な事故は相対的な発生頻度は低いとし、運用コストが安いこと、原子力の環境への影響が少ないことを強調しています。

原子力発電所とウラン鉱床

 

原子力発電所は米国中部に分布しており、中部および東部の海岸には注目すべきクラスターがあります。ほとんどの発電所が戦略的に豊富な水のある地域に位置します。高熱の原子炉を冷却するために大量の水が必要なためです。そして、通常、地震活動の少ない地域に立地しています。地図で見ても分かるように、ほとんどの原子力発電所は燃料であるウランが抽出されるウラン鉱山から遠く離れた場所に位置しています。この毒性物質を使用する前に何百マイルも移動させなくてはなりません。

米国最大の原子力発電所は、アリゾナ州フェニックス近郊の砂漠にあるパロ・ベルデ原子力発電所です。米国南西部に住む400万人の電力需要を満たす年間3,200万メガワットを生産します。冷戦時代、ソ連はパロ・ベルデ原子力発電所を重要な戦略目的に指定し、発電所の地理的座標を弾道ミサイル誘導システムに標的としてプログラムしました。この事実だけで原子力発電所の機能的、象徴的価値がよく分かります。

 

米国にあるほとんどの原子力発電所は少なくとも20年以上前に建設されたものです。しかし化石燃料発電所に課せられた排出規制のために、米国の原子力発電所はいわゆるルネサンス期を迎えています。2016年6月上旬には、テネシー州のワッツバー2号機がオンラインになりました。およそ20年ぶりに新しい原子炉が稼働開始したことになります。さらに4基の原子炉が建設中で、2020年までには稼働を開始する予定です。

 

 

 

 

 

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掲載種別

掲載日

  • 2016年12月28日