課題
導入効果
岐阜県は、森林が県土の約 81% を占める全国的にも有数の森林県であり、古くから木材生産などの林業が盛んな県である。岐阜県森林研究所では、森林・林業に関する公設研究施設として、「健全で豊かな森林づくりと森林資源の利用を通じた活力ある地域社会の創造」を目標に、日々研究を行っている。
同研究所では 20 年近く ArcGIS を利用しており、調査・研究成果を基に地図を作成しているが、各所へ情報を提供する際に、個別にデータの加工を行っていたため、職員の作業負担が大きかった。
そこで ArcGIS Online を導入し、「ぎふ森林情報WebMAP」としてデータをオンラインで共有することにより、誰でも森林の情報を即座に確認でき、容易な情報提供・二次利用を実現させた。
同研究所では、岐阜県林政部等が取得した航空写真やレーザー計測データ(以下、LiDAR データ)などから森林の地図データを作成していたが、市町村などから地図データの提供依頼があった際、その都度職員が CD/DVD 等にデータをコピーするなど加工して提供しており、職員の負担が非常に大きかった。
また、林道や作業道の地図作成の際には、収集した情報を紙地図のみで表現していた。しかし、紙地図上では解析ができないことや、実際に GIS ツールに載せた場合にズレが発生することも問題となっていた。
ArcGIS 採用の理由として「使いやすさ」の点が挙がった。また、外部も含めた森林関係機関に多くの ArcGIS ユーザーがいた点も理由の一つであった。「ArcGIS を使っていなかったら、今行っている業務はできていなかった」と古川氏は語る。「技術を維持するためには、専門のスキルを持った職員が使い続ける必要がある。本業ではない中で、ArcGIS の使いやすい UI はとても魅力であった」と付け加えた。
また、さまざまな解析機能が、簡単なボタン操作だけで呼び出せるようになっていることや、ArcGIS Online に付随するアプリ群の種類が豊富で使いやすいと評価した。
最近は現地調査アプリの ArcGIS Survey123(以下、Survey123)を積極的に活用している。このように、ArcGIS 製品の「使いやすさ」が大きく評価され、ArcGIS は採用から長きにわたり活躍している。
これまで作成した紙地図のデータを ArcGIS Pro で統合し、ArcGIS Online の共有機能を活用した「ぎふ森林情報WebMAP」として、オンライン上で一般公開を始めた。これにより誰でも正確な森林の情報を見ることができる環境を整えた。「ぎふ森林情報WebMAP」には以下の2つのマップがある。
① 森林管理支援情報マップ
LiDAR データで得られた各種地形図、過去の航空写真、地質図、中世の山城跡分布図など各種の地図を表示したり、比較したりすることが可能である。
② 3D マップ
CS 立体図や航空写真を 3D 表示し、縦断面・面積などの計測ツールが使用できる。
また、「ぎふ森林情報WebMAP」の公開以外に、Survey123 を山地災害調査や林道・作業道の被災状況調査などの調査業務において活用している。
「ぎふ森林情報WebMAP」の作成・公開により、都度データ加工を行っていた職員の負担は大きく軽減された。 定期的に GIS データを Web へアップロードすることでリアルタイムな情報提供も可能となり、成果物の提出工数も削減された。 各調査業務の情報収集には Survey123 が活用されており、情報集計・解析業務の効率化に一役買っている。調査地の状況が位置情報と共に分かり、その情報がリアルタイムで集約されることを非常に評価している。
職員の研究発表資料
今後は、「ぎふ森林情報WebMAP」に「作業道開設支援マップ」や「森林資源分布マップ」など、さらに踏み込んだ解析結果を公開する予定だ。
また、Survey123 の更なる活用を考えており、同研究所片桐氏を中心にマイマイガなどの森林害虫の発生データを収集する活動も計画している。具体的には、自治体の市報や県報などと連携し QR コードを掲載し、市民の投稿によって効率よく収集した情報を地図で公開することで、自治体や市民への注意喚起に役立てていきたいと考えている。 他にも、林道の施設管理調査用アプリや、シイタケ栽培の原木に使われるコナラなどの資源量の調査用アプリが現在試験運用中であり、今後は本格運用を予定している。
また、ArcGIS Dashboards の一つの画面で地図やグラフなどを分かりやすく表現できる点に着目し、今後は集計した情報をダッシュボード形式で公開することを考えている。
林業作業支援用の地図公開についても、ArcGIS Pro と ArcGIS Network Analyst を利用し、古川氏がオリジナルで作成した路網データの解析結果を公開していきたいと考えている。