課題
導入効果
2020 年(令和 2 年)10 月の政府による 2050 年カーボンニュートラル宣言を受け、北九州市は、同月ゼロカーボンシティ宣言を行った。ゼロカーボンシティを目指す具体的な取り組みとして電力に着目し、これまで行ってきた「地域エネルギー拠点化推進事業」で集積した再生可能エネルギー(以下、再エネ)と、その供給を行う地域エネルギー会社の株式会社北九州パワーを活かし、率先垂範として 2025 年度(令和 7 年度)までに市内の全公共施設(約 2,000 施設)の再エネ 100% 電力化を目指すことを 2021 年(令和 3 年)2 月に発表した。再エネ 100% 電力とは、世界的に言われている「RE100」に対応した電力である。2021 年 9 月 1 日現在、市役所、区役所、小中学校等の 255 施設が再エネ 100% 電力を導入しており、今後も準備が完了した施設から順次導入していく予定である。
一方で、脱炭素社会の実現は、1 自治体だけで行っても効果が薄いため、面的な広がりを持って進めていく必要がある。
近隣の 17 市町とともに構成する「北九州都市圏域」では、これまで、ごみ処理や上水道などさまざまな分野で連携してきた。その土壌を活かして、構成自治体による脱炭素社会実現に向けた率先垂範を目的に 2021 年 1 月に「再エネ 100% 電力導入に関する勉強会」を始めるなど、取り組みを開始した。
また、その中で、直方市、行橋市、小竹町、鞍手町、みやこ町、築上町、芦屋町の 7 市町が本市と同じく 2021 年度から一部の公共施設に再エネ 100% 電力導入を開始した。
その他の構成自治体も導入に向けた検討を行っているところである。
本取り組みを着実に進めていくにあたり、再エネ 100% 電力は目に見えないため、どのように導入状況や効果を可視化し、広くこの取り組みを住民や民間企業に知ってもらうかが課題となった。この課題を解決するために、地図を利用してわかりやすく表現できないかと考え、北九州市が導入する自治体サイトライセンスを活用し ArcGIS Online と ArcGIS Hub による Web サイトを作成することとした。
本取り組みにあたり課題として、以下の 3 点が挙げられる。
① 脱炭素社会の実現に向けて、広く再エネ 100% 電力の普及・促進を図る
② 自治体が率先垂範し再エネ 100% 電力を公共施設に導入する取り組みを住民や民間企業に
わかりやすく伝える
③ 目に見えない再エネ 100% 電力の導入効果を可視化する
本市では 2013 年度(平成 25 年度)から自治体サイトライセンスを導入しており、これまでも住民への情報発信に ArcGIS を積極的に活用してきた。
今回の再エネ 100% 電力が「RE100」に対応するためには、非化石証書(再エネ由来の電気が持つ価値を証書のかたちにして売買可能にしたもの)による発電所の紐づけ(トラッキング)を求められている。また、既存の電力契約を再エネ 100% 電力メニューに切り替えるため、その導入は、施設ごとになる。
北九州都市圏域には、どのような再エネ発電所があり、どの施設で再エネ 100% 電力が導入されているかという位置に紐づく情報を利用した PR を行うことで取り組みの内容や目に見えない電力を可視化できないかと考え、ArcGIS を利用した情報発信を行うこととした。
北九州都市圏域での再エネ 100% 電力化の取組サイト
クリックでサイトが開きます。
前述の課題解決を目指して以下のコンテンツを作成し、2021 年 9 月 1 日より公開している。
① 北九州都市圏域の再エネ 100%電力化の取組ページ(メニューページ)
② 再エネ 100% 電力導入施設マップ
③ 北九州市エコタウンセンター紹介ページ
④ 北九州市内の再エネ発電所紹介ページ
⑤ 北九州市のごみ処理工場紹介ページ
個別に紹介すると、① は北九州都市圏域の再エネ 100% 電力化の取組をまとめたメニューページであり、ArcGIS Hub を利用して作成した。このページには、②~⑤ の他、環境局で運用している SNS へのリンクも掲載しており、電力・エネルギーに関する総合ページの役割を担っている。また、地域情報ポータルサイト G-motty のトップページにリンクを貼って、認知度向上を図っている。
② は北九州都市圏域を構成する自治体で 再エネ 100% 電力を導入した公共施設をマップ化したページである。再エネ 100% 電力化で削減した CO2 量を北九州都市圏域全体と自治体ごとに集計し、効果を可視化している。
③ は本市の環境、リサイクル、エネルギー等に関する展示を行っている北九州市エコタウンセンターを写真ベースで紹介している。
④ は北九州都市圏域の再エネ 100% 電力化を進めていく上で必要な再エネ発電所の情報をそれぞれ写真ベースで紹介している。
⑤ は北九州都市圏域の再エネ 100% 電力化を支えるベースロード電源となる本市のごみ処理工場を写真ベースで紹介したページであり、ごみ処理工場での処理プロセスなどを学ぶことができるものとして作成した。
②~⑤ は、ArcGIS Online のアプリを利用して作成した。
新門司工場紹介ページ
再エネ 100% 電力化の電源になる施設を個別に紹介
再エネ 100% 電力に興味を持つ市内外の民間企業や北九州都市圏域以外の自治体等からの問い合わせが増えた。今後、導入拡大が期待される。
自治体や民間企業の方々との会話の中で、「脱炭素に向けた取り組みをしなければならないが、何から始めたら良いかわからない」という意見や「再エネ 100% 電力導入について、非常に興味があるので、ぜひ詳しく聞かせてほしい」などの要望を受ける機会が増えた。
今後は、再エネに関する取り組みを PR するため、積極的に活用している SNS と連携しながら、以下の 3 点の内容を押し進めて、脱炭素社会の流れを作っていきたい。
① 北九州都市圏域の自治体
既に再エネ 100% 電力導入を開始した自治体では、「再エネ 100% 電力導入施設マップ」の導入施設数、導入により削減した CO2 量を自治体内で知ってもらうことで、さらなる導入施設数の増加に繋げていきたい。まだ導入を開始していない自治体については、同マップで近隣自治体の導入状況を知ってもらい、まずは 1 施設からでも再エネ 100% 電力の導入を開始できるように取り組んでいく。
② 市内の民間企業
自治体の始めた再エネ 100% 電力の導入状況とその効果を「再エネ 100% 導入施設マップ」等で知ってもらい、導入する企業を 1 つでも増やしていきたい。また、導入した企業のメリットに繋がる施策を検討していく予定である。
③ 市外の民間企業
「北九州都市圏域の再エネ 100% 電力化の取組ページ」とその中のコンテンツを見てもらい、北九州市に立地すると再エネ 100% 電力を導入できることを知ってもらえるようにしたい。
再エネ 100% 電力導入施設マップ
公共施設での取り組み状況(導入施設数)と効果(CO2 削減量)を掲載
(数値は 2021 年 10 月 19 日現在)